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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第374話 フレデリカと同じ様に

 ディーヤの放った一撃は、『ナイトメア』によって覆われた『太陽』を解放する様に少しずつ『夜』を崩し、『太陽の大地』を本来の姿へと戻していく。


 ソレは『太陽の里』でも確認され、『太陽の民』が見る、最初で最後の夜明けだった。


「――勝った……」


 少しずつ『里』を照らし始める『太陽』に感動している中、誰かがふと言った。

 そして、感情が噴火する様に皆が声を上げる。


「勝ったぞぉ!!」

「『太陽』が帰ってきた!」

「やった! やったぁ!」

「『戦士』達が……『戦士』達がやってくれた!!

「おおおお!!!」


 皆、抱き合い、『太陽』を見上げつつ自分達の勝利に『里』中で声が上がった。

 その声と降り注ぐ日差しにソニラは『虹色の柱』に触れていた手を離す。


「勝ったわね」


 今だけソニラの護衛を勤めていた千華は『太陽の宮殿』を照らし始める日差しを見ながらローハン達の勝利に笑う。


「ええ。私達の想いが『夜』を上回ったのです」


 ソニラは戦線で戦う『戦士』達全員を想う。重傷ながら、この瞬間だけは自身の足で立ち、夜明けを見届けて行く。






「――『夜』が……」

「『夜軍』は……【夜王】様は……負けたのか?」


 “夜明け”は『ナイトパレス』にも訪れる。

 遠くから少しずつ明るくなっていく様子に、首都では混乱が起こっていた。


「早く建物の中に避難しろ!」

「『太陽』の光に当たるな! 焼け死ぬぞ!」

「急いで! 避難を!!」


 完全に『夜』が明ける前に市民達は『太陽』から逃れる様に建物の中に入り、カーテンを閉める。


 戦争は負けた。

 【夜王】様はどうなった?

 『夜軍』は?

 これから自分達はどうやって生きていけば……


 『太陽の民』とは比例して『ナイトパレス』の首都は絶望に包まれる。

 完全に『太陽』に晒された首都に一人の『吸血族』がセスタに支えられながら中央広場に現れた。


「……ネストーレ君?」

「ネストーレ様!?」

「誰か急ぎ、ネストーレ様を保護しろ!」

「あれはメイドのセスタか? 何をしている!? 『太陽』の下にネストーレ様を連れ出すなど!」


 向けられる視線が慌ただしくなる中、ネストーレはセスタの支えから離れると、大きく声を上げた。


「戦争は僕たちの敗けだ!!」


 その声に市民達のざわめきはピタリと止まる。


「けど、僕は今『太陽』の下に居る! 見て解る通り……身体は燃え上がっていない!」


 『太陽』から逃げるのに必死で、ネストーレの状態に市民達は気づかなかった。


「戦いには敗北したけど、陛下は僕たちに未来を残してくれた! もう……『太陽』に怯えなくて良いんだ!」


 目の前で『太陽』を克服している様を見せているにも関わらず、市民達は一歩を踏み出せずにいる。すると、


「ネストーレ先生!」


 日陰に母親と共に避難していた女の子が、ネストーレに駆け寄った。

 ひゃー、と眩しそうに日向へ出てくる。


「すごく明るいね!」

「……そうだよ。世界はね、とても明るいんだ」


 女の子は、おかーさーん! と振り返り手を振る。その様子に市民達は建物から恐る恐る出てくると、『太陽』に対して何ともない事を認識していく。


「……父さん……」


 父がどうなったのか……

 この空を見れば、結末は自ずと理解できる。でも――


「僕たちが前に進む事を父さんも望むよね? フレデリカと同じ様に」


 ネストーレは隔てなく自分達を照らす『太陽』にフレデリカを重ねながら、進むべき未来へと歩を進める。






 『太陽』がいち早く解放された最前線では、戦いの手は自然と止まっていた。


「馬鹿な……」

「【夜王】様が……」

「陛下……」


 自分達の敗北。その事実に放心するように照らされる日射しに立ち尽くす。


「まだだ……」


 ルイスは自らが『陽気』に燃え上がらない事実を受け止めると、再び武器を強く握る。


 ……まだ、あの方の想いは完全に消えては――


「『夜軍』! 武器を捨てろ!!」


 その時、段台の最上段から見下ろすように叫ぶのはゼフィラだった。片腕を失い、胸を貫かれたにも関わらず、衰えない圧を向けてくる。


「我々『戦士』は無抵抗の者に手はかけない! 武器を起き、我々に対する敵意を捨てた者から、故郷の……家族の元へ帰れ!!」


 【極光壁(ゼフィラ)】の圧と、戦線の後方で腕を組ながら佇む【極光波(シヴァ)】の不動。

 何よりも降り注ぐ『太陽』の光に『夜軍』は【夜王】の敗北を悟り、兵達は次々に武器を捨てていく。


“ルイス、この戦いがどの様な形で終わったとしても、ナイト領兵は可能な限り生きて帰還せよ。これは王命ではなく同じ故郷を持つ者として……“家族”としての頼みだ”


「……ブラッド様」


 ルイスはこの結末によるブラッドの意志を組む様に武器を捨てた。






「相変わらずじゃのぅ」


 ゼフィラの【極光壁】としての教示にシヴァも嘆息を吐く。

 目の前の『夜軍』から武器と戦意が失われた様子を確認すると『戦面(クシャトリア)』を外した。


「まぁ、もうちとだけ、こっち側には行かせられんがのぅ」


 シヴァは『ナイトメア』を回収しているハズのディーヤ達を後ろ目で見る。

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