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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第354話 【スペクターキャノン】

『君には共有しておこう』


 ボルックは現在の状況におけるタイムリミットをセスタへ伝える。すると、彼女の視界の端に時間が表示された。


 『フォトン』射出――“状況保全時間25分32秒”


「! 『フォトン』を撃つの!? 首都よ!? 何万人って暮らしてるのに!」

『『マザー』は『■✕※▽』を甘く見ていない。これ以上広がる前に合理的に排除しようとしているのだろう』

「……この通話は?」

『『夜の球体』に入った時点で外部との連絡は遮断されている』


 それなら……とセスタはボルックに問う。


「『マザー』の判断を貴方はどう思ってる?」

『理に叶っている。『アステス』の存在定義を考えれば合理的な判断だろう。だが個人的には早計だと判断している』

「なんでそう思うの?」

『ヒトは0と1では導き出せない変数を持っている。数多の感情が混ざり合う事で、再現不可能なシナプスを生み、時に予測を越える奇跡を再現する』


 セスタはボルックが“奇跡”と言う言葉を使う事に驚いた。ソレを口にするのは人以外にあり得ないからだ。


「――貴方、ホントは誰かが遠隔(リモート)で操作してるんじゃないの?」

『ワタシも0と1で構築された存在だ。だが身を置いていた環境が『マザー』とは大きく異なる影響か、“合理”では越えられない場面で“奇跡”を起こす者達を観測してきた」


 世界は思ってる程単純ではない。故にボルックは“奇跡”と言う言葉を使うのだ。


「……貴方が少し羨ましいわ」

「そう言う君も『アステス』の生まれにしてはらしく(・・・)ないな』

「私の場合は『マザー』の制御が外れた時間が長かったから、システムが旧verのままなのよ。おかげで感情らしいモノが再現出来てるの。こうなるまで200年近くかかってるけどね」

『いや、ソレは君の個性だろう。唯一無二の失ってはならないモノだ。』

「あ……ありがと……」


 ボルックはセスタに背を向けると、『ヴェロニカ』を展開し空間の索敵を強める。


「ネストーレ様の位置は解る?」


 ビーコンの様に一定の光を放つ『ヴェロニカ』を見ながらセスタが問う。


『生体反応を捕捉した。『夜』の更に奥――『深淵夜』に捕らわれ、最も望む“願い”を見せられている』

「1ヶ月ほど前に『シーモール』で『剣』が解放されたわ。それで力を強めたのね」

『ネストーレ殿を素体に『ナイトメア』のコントロールを得ている』

「陛下は気づかないのかしら?」

『こちらの制御はファルクライに任せていたのだろう。【夜王】は決戦において相対する者達は片手間に捌ける相手ではないと解っていたハズだ。故にこちらの制御はファルクライに任せ、“命の肩代わり”のみ機能している』

「『太陽の民』は要となる【極光波】が居ないんだけどね。クロエはそんなに強いの?」

『クロエだけではない』


 ボルックは、キュイン、と正面――ネストーレが囚われている『深淵夜』に目標を定める。


『【スペクターキャノン】モードへ移行』






 『ヴェロニカ』のパーツが細かく分裂すると、ボルックの両肩に二門、両腕に装着する小型の二門の計四門の砲塔へと換装される。


『変換エネルギーライン、全門接続』


 残った『ヴェロニカ』のパーツがボルックを場に固定するように取り付くと、一部のパーツは背面に円形に浮遊する。


『ロギアギア、適応完了。セーフティ、全ロック解除』


 内側から沸き上がる様な駆動音が少しずつ大きくなっていく。


『チャンバー内部、エネルギー圧力適応制御。背面――『陽気』変換リング回転開始』


 円形に浮かぶ背面のパーツがゆっくりと回転を始め、魔力が『陽気』へと変わり、光を放ちながら砲塔へと溜まっていく。


『ターゲット――『■✕※▽』』

「モニターを共有にして。出力負荷と『陽気』放出による照準のブレを補正するわ」

『頼む』


 セスタはボルックの視界(モニター)を共有し、同じ方向を見る。


「最新型の映像は綺麗ね」

『君も『アステス』に戻りメンテナンスを受けると良い』

「それは止めとくわ」


 漂い出る『陽気』がジリジリと周囲の温度を上げ始める。


「――ん?」

「なんだ?」

「なんか暑い……」

「『陽気』?」


 土埃を上げて喧嘩をしていた『フォース・メン・ナイト』は『スペクターキャノン』にチャージされる膨大な『陽気』を感じ取り思わず手を止めた。


「貴方達、余波に備えなさい」

「「「「余波?」」」」


 ボルックは、ボッ! と背部のブースターを起動する。


『【スペクターキャノン】発射――――』






 閃光が一瞬『夜』を照らした次には、爆発のような余波により、『フォース・メン・ナイト』は吹き飛ばされた。


「どわ!?」

「うお!?」

「なんだ!?」

「わぁぁぁ!!?」

「っ……!」


 周囲の魔力を『陽気』へと変換し圧縮したエネルギーとして放つ【スペクターキャノン】は正面の何も見えない空間へと照射する。

 すると着弾地点は照射に抵抗する様に『陽気』を弾いていた。


『出力80%』

「砲塔内熱量67%よ!」


 『夜の球体』が揺らぐ。

 大地から離れたこの『夜の球体』は【極光波】でさえも『陽気』を集める事が出来ず、理論上『太陽の民』に破る事は不可能だった。


「くっ……」


 ボルックはブースターにて照射による後ろへの反動を抑えているが、左右に逃げる衝撃はセスタに襲いかかる。


 【スペクターキャノン】……出張型なのに出力は固定砲台と全く変わらないわね……


 閃光と『陽気』で照準がブレ無い様にセスタは着弾地点の様子をモニターで共有し補正する。


『出力92%』

「砲塔内熱量79%よ!」


 ボルックが照射エネルギーを増やし出力を上げると着弾地点の『夜』が少しずつ剥がれ――


「『深淵夜』を観測! ネストーレ様がいる!」


 セスタでもネストーレの生体反応を捉えられる程に『夜』を散らしたその時……


「お……おおおオオオッアアアアああああ!!!」


 その様な金切り声と共に巨大な顔が正面に現れた。

 “巨顔”は口を大きく開き、【スペクターキャノン】の照射ごと、こちらを飲み込む様に迫ってくる。


「ひぃ!?」

「なんだ!?」

「あのデカイ!」

「顔は!?」

「■✕※▽っ!」

『出力100%』


 照射帯が一段階太くなると、迫る“巨顔”の勢いを抑え込んだ。しかし、


「キャボハハハ!!!」


 それさえも飲み込もうと押し返すように迫り始める。


「【スペクターキャノン】一基じゃ……」

『出力――』

「ワキャハハハハハ!!!!」

『200%』


 照射の帯が視野全体を覆う程の出力が一瞬だけ放たれ、“巨顔”は風穴を開けられるように撃ち抜かれると――


「キィィィイアアアアァァァァ……」


 霧散する様に空間から消滅した。

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