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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第314話 お飾り筋肉になってるわよ!

「うわ……えげつねぇ……」


 カルニカに手当てを受けているガヌーシュは一歩も動かずにダンテスを瞬殺した千華にそんな言葉しか出なかった。


「やれやれ。この上着は後で特殊洗浄が必要ね」


 ダンテスの返り血を全て受けた上着を千華は丸めると小脇に抱えて、治療をするカルニカに歩み寄る。


「二人の具合は?」

「臓器に損傷はありませんが、この傷は無視出来ません。ガヌーシュ君、最前線には出ないで」

「っす……」


 ガヌーシュは己の未熟故に、戦線に行けない事を強く後悔した。


「ガヌーシュ、楽観的に考えなさい。貴方達が居なかったら被害はこんなモノじゃなかったわ。私の店まで壊されてたかも」


 まったく……と千華はダンテスだった肉塊に改めて睨む。


「……千華様って強かったんですね」

「戦う所は初めて見ました」


 過去にクロエが襲撃した時は服の材料の調達に『太陽の里』を離れていた事もあって、彼女が戦う様を見たのは今回が初めてだった。


「別に強くないわ。私の地元じゃ、これくらいは普通よ」

「これが標準って……千華様の地元ってどんだけヤバいんですか」

「まぁ、今回は種族としての優位もあったわ。『里』は私にとってホームグランドみたいなモノだし」


 千華は治療のために脱がされたガヌーシュの服を改めて見る。


「ふむ。ダンテスによるこの切り口は熱の集束によるものね。『御光の剣』とは別……『陽気』でなく『魔力』を直接熱エネルギーに変えて密度を集める事で焼き斬る……か。対応するには折布を重ねて……」


 ブツブツとこんな時でも仕事モードに入る千華に二人は苦笑を浮かべる。


「ああ、それと全員、治療を終えたら『太陽の宮殿』へ向かいなさい。ソニラが危ないわ」


 水流竜巻によって、張り巡らせた“糸”は全て巻き取られており、『太陽の宮殿』近辺だけ千華の索敵が外れていた。


「解りました」

「千華様は?」

「私は『里』全体の防備に当たるわ。後ろを気にしてたら貴方達も前を向いて戦えないでしょ? 敵は残り6……いや、4ね」






「『極光の外套(ファラング)』!!」


 上空から叫ばれるディーヤの声と同時に『陽気』が拡散され、コーリスとソーディアスはソレに対して防御を行う。


「チィ!」

『触れるだけで乾燥するか』


 膨大な『陽気』は防御してても肌を焼く。“土人形”の身体も乾燥し、下手に動けば崩れる可能性があった。


「チトラ!」


 プリヤはコーリスの意識が防御に反れた事で解放されたチトラへ駆け寄り、彼女に肩を貸す。


「今の内に離れるわよ!」

「うん……」

「ヴィクラム! あんたは自力で起きなさい! お飾り筋肉になってるわよ!」

「ぬぉぉぉ!! それは聞き捨てならんぞ!」


 プリヤの言葉にクワッ! と意識を覚醒させると起き上がる。

 ディーヤは走り出す三人の元に着地した。


「ディーヤ……」

「この『陽気』……戻ったか! 俺達の『三陽士』が!」

「ディーヤ! あいつらは任せたわよ! ヴィクラム、離脱に手を貸しなさい! あたしらが次に捕まったら洒落にならないわ!」


 ディーヤは特に仲間に対する想いは純粋だ。自分達が足を引っ張るワケには行かない。


「皆……これハ――」

「ここは任せるわ【極光剣】。あたし達は治療に一旦さがる」

「解っタ」


 ヴィクラムにチトラを抱えてもらいプリヤは自力で場を離れる。


「……追撃無しか」


 その間、コーリスとソーディアスの注目は地面に着地したディーヤにだけ向けられていた。そして、その理由をプリヤ達は肌で感じ取る。


「まるでアシュカ先生の雰囲気だな!」

「……『ブリューナク』を会得したかな?」

「さぁね。少なくとも、今のディーヤならアイツらは敵じゃない」


 かつての先代【極光剣】を連想させる程にディーヤの雰囲気は244時間前とは別人だった。


 その時、水流竜巻が途絶え“黒い蝶の羽”が『太陽の宮殿』から現れる。


「! 巫女様……!」

「なんじゃあれは!?」

「ディーヤ、そいつらにモタついてる時間はないわよ……」






「…………」


 コーリスは奥へ降りたディーヤを見て無言だった。“土人形(ソーディアス)”がディーヤへ向き直る。


『コーリス、アレは他の『太陽の民』とは気配が違う。いや……桁が違うと見るべきか』

「…………」

『そちらが行かないなら我が斬るが?』

「…………」

『ふむ。新たな身体の性能を知るには丁度よい』


 何も言わないコーリスに背を向ける。

 “土人形(ソーディアス)”はディーヤに歩み寄りながら、地面を寄せ、乾燥して機能しなくなった一部を入れ換えて密度を戻す。


『ふむ……』


 しかし、ディーヤの視線は歩んでくるソーディアスではなく、破壊された建物と惨殺された『太陽の民』の死体を見る。そして、拳を強く握っていた。


「……お前達がやったのカ?」

『無論。我々はメアリー様の願いを果たす為に存在する。あの方が壊せと言えば壊し、殺せと言えば殺す』


 殺す。その言葉にディーヤは敵意をソーディアスへ向ける。ソレはビリビリと空気を震えさせる程の気迫となって伝わった。


『解りやすい感情だな』


 “土人形(ソーディアス)”は駆ける。本体は背に回し、身体部分でディーヤの攻撃を受け、その後隙を狙う。

 いくら身体を破壊しようとも無意味! 滅びぬ身体は何人も障害にならない!!


「――――」


 ディーヤは接近してくる“土人形(ソーディアス)”へ手刀を作るとヒュッ、と斜めに振った。

 閃光が“土人形(ソーディアス)”の身体に走るが即座に再生する。


『無意味――』


 その瞬間、“土人形(ソーディアス)”の形が機能を失った様に崩れた。


 が……ば……ばかな……石を混ぜ……更に強度を上げた……土の身体を――


 ディーヤの放った一閃は“土人形”の身体を貫通し、その背後に回していたソーディアス本体(・・)を斬り裂いたのだ。

 そして、


「人形遊びをしてる暇は無イ」


 ディーヤは歩み、二つに分かれたソーディアスを踏みしめて粉々に破壊。完全に沈黙させた。


「次はお前ダ」


 戦意の衰えないディーヤの瞳はコーリスへ向けられる。


「くっくっくっくっ……やっとだ……やっとだぜ……? やっとお前を殺せるぜぇぇぇ!! ディディよぉぉぉ!!」

千華

挿絵(By みてみん)

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