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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第302話 悪めぇ……

「『ビリジアル密林』を抜けた面子は我々で最後か」

「結構削られたよなぁ」


 『統括愚連戦隊』が『ビリジアル密林』にちょっかいをかけている隙に『実験部隊』は土坂を挟んで反対側から突破していた。

 メアリーを先頭に彼女が連れてきた20の実験体が『ビリジアル密林』の突破を試みたが、内12体は肉食植物のエサとなった。

 今現在、自分達は孤立している形ではあるものの『夜』と言う圧倒的優位な状況下では大して絶望はしていない。

 寧ろ、追い詰められているのは『太陽の民』の方だろう。


「ぐあっ……」

「中々に難しいな」


 『太陽の民』が『太陽の民(・・・・)』に斬り捨てられていた。彼は手に握る剣が融合するように身体を侵食しており、その効果は片腕から脳へと伸びている。


「下手に抵抗するなよ。加減誤ると潰しちまうぜ?」


 その傍らには鉄仮面を着けた男の周囲には『太陽の民』が拘束する様に浮かされ、呻き声を上げていた。


「『太陽の民』は全員戦士って話だが……とんだ肩スカしだな」


 男は鉄仮面の奥で笑う。その時、


“我が名は――”


 建物を幾つも挟んでいても聞こえてくるダンテスの声を聞き取った。


「相変わらずダンテスの奴はうるせぇな」

「良い感じに囮をやってくれてる。我々はメアリー様に敵が近づかない様に露払いをするだけだ」


 その二人に対して『太陽の民』は近づけなかった。

 剣を持つ『太陽の民』に関しては、先程まで共に戦っていた一人であり、“剣”に身体の支配を乗っ取られているのだ。

 鉄仮面の男は道具や魔法は何も使わず、何人もの非戦闘員を宙に浮かせており、攻撃しようとすると彼らを盾にしてくる。


「ジロジロ見られるのも面倒だな。ソーディアス、あいつら斬ってきてくれ。どうせ、お前の身体には手を出せないだろ?」

「コーリス、お前が人質を苦しめて奴らに自死しろと言った方が早いと思うか?」

「『太陽の民(コイツら)』がそんな事で死を選ぶタマかよ。オレはあのガキを死ぬほど苦しめて殺したいんだ。メアリー様には悪いけどな、ソレを優先させてもらう」

「ふむ。我々『実験部隊』も『ビリジアル密林』突破でかなり数を減らした。敵の頭数を減らしておくのが順当か」


 ソーディアスは自身が支配している『太陽の民』を歩ませる。


「何をやってる、ナライン! 正気に戻れ!」

「我はメアリー様に作られた“無機生命体”だ。万が一にも宿主に乗っ取られるなんて事は起こらない」


 宿主の意識を呼び覚まそうと呼び掛ける『太陽の民』へ、ソーディアスは駆けると剣を振るう。

 単調な攻撃。隙は多く反撃も容易いが、仲間である事に手は出せなかった。


 ならば――


 剣を壊せば。次に思い付く攻略はソーディアス本体を破壊すると言う事。数人が囲む形でソーディアスへ襲いかかる。


「ふむ。確かに『太陽の民』は意志が強いな。我の支配に抵抗し動きを鈍らせるか」

「武器を破壊しろ!」


 それで仲間を解放できる。しかし、次の瞬間、ソーディアスは自らで身体の心臓を貫いた。


「なっ!?」


 自害。その行動に攻撃を仕掛けた『太陽の民』は思わず止まる。


「やっと、抵抗が消えたな」

「! なん――」


 宿主であるナラインが死に、意識か消えた事でソーディアスは完全に彼の身体を掌握。リミッターさえも解除した『太陽の民』の身体能力で囲んだ者達を切り捨てて行く。


「ぐあ!?」

「がぁ!?」

「ごふっ!?」

「ぎゃっ!?」

「やはり『太陽の民』の身体は別格だな」


 最後の一人を貫くと、自らを振って血を払う。

 それでも、僅かに息のある者が倒れながらもナラインの足を掴んだ。その者の背を切っ先が貫く。


「我も本来なら“死体”に憑依する事は避けたい。長持ち(・・・)しないのでね」

「く……くそ……」


 【魔剣ソーディアス】。それは、メアリーが作り出した意識を持つ剣であり、宿主を支配する事で己の存在価値を教授する。


「剣は斬る為にある。価値を示させてもらうよ」


 胸から血を流す死体となったナラインを操るソーディアスは彼の声で残りの『太陽の民』へそう告げた。






「…………」


 ダンテスに吹き飛ばされたガヌーシュは仰向けに倒れていた。


「あー、クソ野郎……」


 服は僅かに焦げた程度。放たれたのが『陽気』だった事でダメージ事態はさほど大きくない。

 むくり、と起き上がると開通した建物と、その先に見える『太陽の宮殿』を認識する。


「……」


 そして、すたすたと空いた風穴を戻ると、


「やぁ! とう! せい!」

「なんだコイツ!?」

「ふざけた格好の癖に!」

「なんか……『極光術』が効いてねぇぞ!?」


 酔いから覚めた『戦士』の三人がダンテスと戦っていた。

 三体一。ダンテスは普通に殴られてはいるものの、効果が無い様子で反撃して逆に圧していた。


「フラッシュ・オブ・シャイン!」


 カッ! と『陽気』の爆発が起こり、一帯が吹き飛ぶ。『戦士』達へは吹き飛ばし以外にダメージは無いが、建物が破壊されて行く。


「くそ……なんだコイツ……」

「何発も『極光の手甲(ガントレット)』をぶち込んだのによ……」

「誰か『御光の剣』打てねぇのか……?」


 ずれた『戦面(クシャトリア)』を被り直す戦士達の前をガヌーシュが通る。


「お前らは残りの二人を叩き起こしてヴェーダ様の指示に従って別のトコに行け」

「おいおい、解ってるのか? アイツ変だぞ」

「囲んでボコる方が勝ち目あるぜ」

「この面子で誰も『御光の剣』持ってねぇのか?」

「俺たちが固まる方が不味い。他にも――」


 その時、夜空に『太陽石』が弾ける。他の場所にも異常が発生した報せだった。


「このクソは俺が殺る。お前らは他の助けに行け」


 三人は少し考えたが、ガヌーシュの闘気に背を向ける。


「そんじゃ任せた。俺は残りの二人を起こしてくる」

「うぉ!? こっち穴空いてるじゃん!」

「近道出来そうだな。俺は『翼院』方面に行くわ」


 そう言って三人は場を去り、ガヌーシュとダンテスだけが場に残された。


「どうやら……他も正義が成されたようだな! 悪は滅びる! これが世界の秩序!」

「あー、悪とか世界とかどーでもいい。俺がここに残った理由を教えてやろうか?」

「聞こう!」


 その瞬間、ダンテスは脱力による瞬発力から放たれたガヌーシュの『極光の手甲(ガントレット)』を腹部に食らい、身体をくの字に折り曲げて、


「ぐごはっはぁ!?」


 吐血し残骸を巻き込むと半壊した建物に吹き飛ばされ、上から振ってくる瓦礫の中に沈む。


「酔いが覚めて、テメーに死ぬほどムカついたからだ」

「くっ……悪めぇ……」


 ガラガラとダンテスは起き上がり、『戦面(クシャトリア)』を着けるガヌーシュを睨み付けた。

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