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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第289話 【極光剣】の『恩寵』は俺が引き継ぐ

 千華とカルニカは壁画の通路を抜けて、暗闇の更に奥へ。暗所である事もあり、千華は歩いてきた道に“糸”を張り『巣』を造りながら前に進む。


 今のところは、後方から何かくる気配はなく、行く先にも生物の気配や魔力も感じない。


「千華さん。私も『戦士』ですから御守りします」

「ええ。期待してるわ」


 カルニカは今となっては翼院で『グリフォン』の世話をする側面が強いが、結婚しチトラを産むまでは『ビリジアル密林』に単独で魔物を狩り行ってた実力者でもある。

 すると、奥に再び石枠が見えた。松明を照らした千華が先に入る。


「ここは……」


 出た先は高台だった。

 眼下には更に広く地下都市が広がっていおり、要所要所に大きな『太陽石』が置かれて都市全体を把握できる明るさが確保されている。そして、その構造はまるで――


「『里』にそっくりですね」

「ここをモデルにしたのね」


 ライン大河こそ通ってないが『宮殿』の位置や昔から存在する建物などの配置は『太陽の里』に類似していた。

 まるで『里』に夜が訪れたかのような光景は煌びやかで、美しいとさえ感じる。


「私達『太陽の民』も……夜に生きる事が出来ればこの光景の中で生活することがあったのかもしれません」

「私からすればコレは普通よ。ここまで綺麗な光景は中々、お目にかかれないけど」


 さて……と千華は改めて都市を見下ろす。


「ここから二人を探し出すのは少し骨が折れるわね」

「いえ、それ程難しくは無いと思います」


 カルニカは『戦面(クシャトリア)』を被ると『太陽石』に陽気を込め、強く光らせる。


「――ふっ!」


 そして、大きく投擲すると、しばらく飛んだ上空で『太陽石』は炸裂した。


「へぇ、花火みたいね」

「その様な植物があるのですか?」

「ふふ。違うわよ。戦争が終わったら見せてあげるわ」


 すると、都市の中央広場に位置する場所から同じ様に投げられた『太陽石』がこちらよりも低い空中で炸裂した。

 千華は中央広場に視線を集中すると――


「……居たわ。シルバームよ」

「ディーヤは?」

「…………カルニカ、一応戦闘態勢を整えておいて」


 そう言う千華は横の階段から都市へ降り、その後をカルニカが続く。






 二週間前――


「ここが『太陽の神殿』だ」

「……」


 時間短縮の為に『グリフォン』で送って貰ったシルバームとディーヤは、簡単な荷物だけを持って『太陽の神殿』へ着陸。

 『ビリジア密林』の中に隠れる様に存在する『太陽の神殿』は物言わぬ神秘性を感じさせた。


「ディーヤ、頑張って」

「アりがとウ、チト。必ず戻ルと、巫女様に伝えてくレ」


 チトラはこくりと頷くと『グリフォン』と共に『太陽の里』へ帰って行った。

 ソレを見送ったシルバームは荷物を置き、ディーヤへ向き直る。


「それじゃ、ディーヤ。まずはお前の実力を見せてくれ」

「何をすれバ?」

「周囲の『ビリジアル密林』で適当な魔物を狩ってこい。何を狩れとは言わん」

「分かりましタ」


 ディーヤは、シルバームの要望は己の実力を間接的に測るモノだと把握。『戦面(クシャトリア)』をつけて、出陣10分後――


「仕留めましタ」

「うぉ!?」


 シルバームでさえ容易く丸飲みに出来る大きさの『ウッドボア』を仕留めて、頭を頭上に掲げながら引きずって戻ると、シルバームは驚きにそんな声が出る。


「外傷が見当たらんが、どうやって倒した?」

「『極光の外套(ファラング)』で頭を焼きましタ。ちょっと飲まれましたガ」

「はっはっは」


 シルバームは思わず笑う。

 小柄故の戦い方を理解しているな。【極光剣】として戦線に立つ以上、今使えるモノをフルに活用する。シヴァのヤツは良い指導をしてやがる。






 その後、シルバームはディーヤにそれなりの課題を課せて魔物と戦わせるも、全て難なくこなした。

 その指示をこなしつつ、48時間が経過――


「…………」

「今の内に食っとけよ」


 火を起こし、最初に仕留めた『ウッドボア』をシルバームは食べる。ディーヤは現状に少しだけ焦りが生まれていた。


「シルバーム様」

「どうした?」

「『虹色の光(ブリューナク)』はいつ教えてくれるのですカ?」


 シルバームの指示は特別何かに目覚める様な感覚は無い。このまま悪戯に時間を浪費するのは……と言う懸念が浮かび上がっていた。

 ディーヤの言葉にシルバームは、焼いたボア肉をもぐもぐする。


「良いから食っとけ。その内、嫌でも食えなくなる(・・・・・・・・・)

「………」


 今はシルバーム様を信じるしかなイ。

 ディーヤもボア肉を食べて空腹を満たす。


「まぁ、お前も疑問はもっともだ」


 食事を終えて、眠る前にシルバームがディーヤの懸念を口にする。


「だが……『虹色の光(ブリューナク)』は今までの『極光術』とはワケが違う。単に教えりゃ手に入るってモノじゃない」

「……分かっていますガ……」

「必ずお前に『虹色の光(ブリューナク)』を覚えさせる。だから、今は俺を信じろ」


 そう告げるシルバームの目はシヴァが指導してくれた時と同じモノだった。


「……疑ってすみませン」

「気にすんな。俺は規則やしきたりに縛られるのが嫌いなんだ。責任のある立場なんて真っ平ゴメンでな。楽して生きたいんだよ俺は」

「今はシルバーム様も頑張っていまス」

「後で沢山サボる為に、今頑張ってんだ。お前も今の立場を難しく考えすぎるなよ?」

「ハイ」


 次に起きた時も課題があるからな、とシルバームに言われディーヤは『戦面(クシャトリア)』を隣に置いて横になると眼を閉じた。


 『虹色の光(ブリューナク)』……ソレを修得し必ず……【夜王】を討ツ……






「ディ……ディーヤ……ディーヤ、起きろ」

「ン……ンン……」


 シルバームに呼ばれてディーヤは目を覚ます。しかし、まだ眼を閉じているのかと思った。何故なら――


「ドコ……ですカ……? ここハ――」


 そこは、暗闇に覆われた広場。周囲にある『太陽石』が仄かに辺りを照らす以外に光は無い。

 シルバームの視線に顔を上げると、彼は『戦面(クシャトリア)』を着けていた。


「ディーヤ、『虹色の光(ブリューナク)』の修得条件を教えてやろう」


 その並みならぬ雰囲気は普段のシルバームとは似ても似つかない程に洗練されたモノだった。まるで……『戦士長(シヴァ)』に見下ろされているかの様な――


「『虹色の光(ブリューナク)』を持ってるヤツを殺す。ただ、それだけだ」

「エ……」


 シルバームはまだ起き上がらないディーヤを蹴り飛ばす様に足を振り上げた。

 ディーヤはソレを『極光の鉄甲(ガントレット)』を形成し受けるも、耐える事は出来ずに軽々と吹き飛ばされて近くの建物の壁にぶつかる。


「グッハ……」

「『陽気』は十分にある。存在しないのは“太陽”と“お前を助けるヤツ”だけだ」


 シルバームの右腕に『虹色の光(ブリューナク)』が宿る。


「安心しろ。お前が死んでも【極光剣】の『恩寵』は俺が引き継ぐ」

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