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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第249話 序列を決める

 2日後。

 『ナイトパレス』首都は今まで以上の厳戒態勢が敷かれていた。

 何故なら、数日前から各領地より、その主達が滞在し、万が一にも『太陽の民』の襲撃など許すワケにはいかないからだ。

 首都には『ロイヤルガード』も宅を構えるとは言え、前回の演説時に襲撃された事を考えるに確実とは言えない。

 それでも、【夜王】の招集となれば言伝てでは無礼に値すると精鋭を連れて首都に滞在していた。






 王城の王の間では、円形のテーブルが置かれ、そこには五つの席が用意されている。

 内四つは既に着席者で埋まっていた。


「いやはや。前々から『戦争』の兆しはありましたが……首都に敵が侵入されたと言うのに陛下は足下を見ておられない様だ」

「しかも現れたのは『三陽士』だとか。『戦争』よりも先に内側を綺麗にした方が良いですな」

「内部が疎かでは、領地より兵を離すのは危険極まりない」

「そもそも陛下にはロイヤルガードも居られますし、我々が兵を出さずとも勝てるのでは?」


 ハハハ。と領主達は笑う。

 彼らはいかに自分達の兵を抑え、どうやって、ローリスク、ハイリターンを得るかだけを考えていた。


「…………」


 クロエはそんな彼らの会話を王の間の外で聞いていた。

 領兵とは王の兵ではない。王は領主に要請する事で領主は兵を出すのだ。その代わり、それに伴う敷金を首都が賄う事になっている。

 しかし、良くも悪くも兵を消耗するのは各領地であり、出し渋るのは必然な動き。それに数を揃えたとしてもその“質”には期待出来なかった。


「お待ちしておりました、陛下」


 クロエは、通路の奥から現れたブラッドと此度の会談の記録係に身体を向けると会釈する。


「既に領主様、方々は席についておられます」

「そのようだな」


 衛士が扉を開け、ブラッドは王の間に入る。その後ろにクロエも続いた。






「陛下」


 領主達はブラッドの姿に立ち上がると一礼。ブラッドは手をかざして着席を促すと上座へ座る。クロエは付き添う様にその背後に立った。


「各領地の領主達。よくぞ招集に応じてくれた」

「何を仰います陛下。我らは貴方様の忠実なる徒」

「此度は『戦争』に伴う“徴兵”の件でございましょう?」

「そうだ。現状、兵の集まりが悪い。こちらの準備に時を掛ければかけるだけ『太陽の民』が新たな戦力を生み出しかねない。各員はソレを理解しているか?」


 ブラッドは新たな『三陽士』の出現を危惧する。


「陛下、お言葉ながら。些か過剰に考えすぎでは無いでしょうか?」

「『三陽士』の中でも最も力を持つ【極光波】を陛下は討伐なされた。となれば、敵の底は知れたも同然でしょう?」

「陛下、兵も領民です。必定の戦いとはいえ『太陽の民』との『戦争』となれば被害も安くは済まないのです」

「我ら領主には民を護る義務があります故。首都からの敷金だけでは、中々……」


 クロエは領主達の言葉を聞きながら心の中で呆れていた。

 敵の最高戦力を倒したから、残りに過剰になる必要はない。彼らはそう言いたいのだろうが、ソレは大きな間違いだ。


 『太陽の民』は一人一人が生まれながらに戦士であり、その誰もが目の前の敵に対して命乞いなどと言う、無様な様は決して見せない。

 更に最高戦力が倒されたからこそ、油断の欠片もなく今も力を研鑽し、戦力の底上げに努めていると容易に想像できる。

 しかし、ソレは『太陽の戦士』と正面から戦えばこそ感じ取れる“意思”であり、後ろで不利益の回避を考える領主達に理解させる事は困難を極めた。


「ここはもう少しお時間を頂ければ兵の選定に十分な時間を取れましょうぞ」


 ここで彼らに強制する形で出兵を求めても良いが、それでは兵の質は保証できない。


 どうやら開戦日は延びそうね。


 事態は内輪揉めで足を引っ張る事になりそだとクロエが考えていると。


「侵攻は10日後。これは決定事項だ」


 ブラッドは領主達の主張を切り捨てる様に告げた。


「陛下、恐れながら先程も申した通り――」

「序列を決める」


 静かにブラッドの言葉が場に響き、全員が沈黙する。


「『太陽の民』は一人残らず戦う事を選ぶだろう。必然と最大と戦いとなり、鏖殺戦となる。故に次の戦いで【夜王】を含める『ナイトパレス』での地位を決める」


 理解の追い付かない領主達に構わずブラッドは続ける。


「『太陽の民』一人を功績を1とし、『太陽の戦士』は10、『三陽士』は100、そして『太陽の巫女』は200だ。己の兵にはソレを数えさせておけ。『戦争』終了時に最も功績を得た者が『ナイトパレス』で上位となる地位に着く」

「お、恐れながら……それは……今の地位をすべて捨てると言う事ですか?」


 領主の一人が信じられないと言う様子で聞いてくる。


「無論【夜王】の地位も含まれる。我が戦力はこの身と『ロイヤルガード』のみ。残り200の枠は貴殿らに限らず早い者勝ちだ」


 ブラッドの言葉に領主達は考えをまとめる様に沈黙する。


「この件は一日後に早馬で他の領地にも報せを飛ばす。此度の会談にて先に伝えたのは『ナイトパレス』に貢献してくれている貴殿ら四人に対する配慮と受け取ってくれて構わない」

「へ、陛下……恐れながら用事を思い出しましたので失礼します!」

「わ、私も!」

「不躾ながら……私も!」

「会談中に席を立つ事をお許しください!」

「構わぬ。良き兵達を期待している」


 領主達は慌てて王の間を後にする。兵を編成し、準備を整えて『ナイトパレス』へ送るには10日はギリギリなのだ。今は一秒でも惜しい。


「…………」


 たった一度で全てを解決した。10日後には『ナイトパレス』における精鋭を集めた200の軍が『太陽の大地』へ侵攻を始めるだろう。


「クロエ、お前にも期待しているぞ」

「お任せください」


 ローハン、こっちも悪い意味で予定通りに進みそうよ。

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