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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第209話 踏み倒そうとすんな

「『未来眼』を持つ『ロイヤルガード』か……」


 オレはレイモンドから一通り話を聞いてぽつりとそんな言葉が漏れる。

 『未来眼』は確かに魔眼の中では上位に位置する力を持つ。

 未来を視る。それはどんな者でも一方的に圧する事が可能なほどの強力な能力であるが、ソレが通じるのは特定の領域までだ。


 世界でも最上位に位置する者には、未来が見えていようか関係ない。例としてヤマトで考えて見れば一目瞭然である。

 相手を捌く技量が無ければ余計な情報として動きがコンマ遅れる。そのコンマの差が勝敗を分ける領域において『未来眼』は逆に足枷でしかない。


 まぁ、それはそうとして、クロエの奴……その戦いで更に強くなったな。

 元々格下相手だったんだろうが……『未来眼』と敵の奥の手を初見で食らって、負傷が手の平の火傷だけとは……


「その後、僕はシルバームさんと共に『太陽の大地』へ。クロエさんは『ナイトパレス』で情報を集めることに」

「なるほどな。一定の地位がある方が普通に立ち回るよりも効率は良い」


 クロエは『ロイヤルガード』として国の中枢に入り込んだ。

 オレとの交戦でも敵としては疑い無い立ち回りをしてたし、『フェース・メン・ナイト』の様子を見る限りは部下からも慕われてる。

 オレ達とクロエが繋がっている事は悟られていないだろう。これから、土台をひっくり返すには悪くない状況だ。


「ローハンさん、前提として聞きたいんですけど」

「なんだ?」

「『太陽の民』と『ナイトパレス』は戦争状態にあります。僕たちも参戦するんですか?」


 クロエとレイモンドは状況把握を第一に行動してきた。その過程で築いた絆と、この国の状況を加味してどこまで関わるのか決めあぐねている様だ。


「こっちの事情も話しておく。クロエと連絡を取るときにアイツにも伝えといてくれ」


 オレは『ナイトメアロッド』を手に入れる為に、【夜王】ブラット・ナイトを倒す必要がある事も語った。






 馬車は『太陽の大地』をトコトコ進み、時折通り過ぎるトーテムポールが睨みを効かせている様だった。


 絶えず降り注ぐ陽射しによって乾燥した地帯を進み、小高い丘を越えると少しずつ草木が増え、いつの間にか視線の先を埋め尽くす程の密林に入っていた。

 草木の掻き分けられた道は殆んど獣道だが馬車は辛うじて進める。周囲の木や蔦から物珍しそうに小動物がこちらを見たりする視線が多い。

 キーキー、ギャオオオ! と、獣とも鳥ともわからん鳴き声が絶えず聞こえ、猿みたいな小動物がデカい食虫植物に丸のみにされた。

 この密林はダンジョンとして機能しているな。天然の防御壁って所か。太陽の光をふんだんに浴びていた成長した植物どもは進む道以外を全て占領してやがるぜ。

 更に進むと、ドドド、と水の落ちる音と水の匂い。そして、若干の涼しさを感じてきたところで――密林を抜ける。


「うぉ!? スッゲー!」

『凄く……神秘的です』


 拓けた先の光景にカイルは馬車の天幕上から頭を出し、リースはその上に乗って声を上げる。


 それは巨大な穴。円形にくぼんだ様に岩を削られて作られた穴は目測でも直径二十キロはある。

 点在するトーテムポールは例の【極光壁】だろう。

 ドドド、と二方向から滝が流れ落ち、内部を二分する様に中心に川が通っていた。滝の水が落ちる際に発生する水飛沫が大きな虹を作っている。


「やっと……着いたわね」

「やっぱり……里は落ち着く」

「…………」

「…………」


 プリヤとチトラはここの日光をふんだんに浴びていた。レイモンドとディーヤは何やらコソコソし始める。


「ディーヤ、レイモンド、何やってんだ?」

「ちょっとね……頭巾を被ってないと面倒な事になるんだ……」


 レイモンドは自慢の耳を隠すように頭巾を被っていた。カイルは頭に?を浮かべる。


「ディーヤはクシを埋葬すル。墓守り一族は崖上に住んでるからナ」


 ディーヤはクシの遺体を布でくるむとオレは一旦馬車を停めた。


「そっか……ディーヤ、何て言えば良いかわかんねぇけど……何かあったら声をかけてくれよな!」

「カイル……ありがとウ。後、オッサンモ」

「おい、お前には食料の借りがあるんだからな。忘れんな」

「チッ」

「踏み倒そうとすんな、クソガキ」

「チビッ子」


 馬車から降りようとするディーヤへプリヤが告げる。


「クシを埋葬したら後で巫女様のトコに行きなさいよ。アンタが『ナイトパレス』へ勝手に向かった事で『戦士長』が戦死したんだからね」

「……わかってル」


 そう言うと、ディーヤは布でくるんだクシの遺体を背に縛りつけて一足先に馬車を降りて行った。


「オレらも行くか。プリヤ、どうやって下に降りるんだ? ロッククライミングとか言うなよ」

「その前にさ、おじさん」


 馬車を走らせる前にプリヤとチトラは真剣な様子でオレを見る。


「『戦士長』があんたとだけ話し合った内容に関して、アタシ達にもきちんと説明して」

「重要。内容次第では、貴方達はここから追放しなくてはならなくなる」

「そうだな。お前達には先に伝えておくか。【夜王】を殺る為の作戦をな」


 おそらく、それがオレたちの求める『ナイトメアロッド』にも繋がるだろう。

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