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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第181話 ぶち会いたかったけぇのぅ

 アーサー(ローハン)の対応をクロエに任せたブラットは王城に入ると王の間を目指して廊下を歩いていた。

 『ロイヤルガード』の二人――ネストーレとミッドも(ブラット)を護るように付き従う。


「陛下。不敬者への増援はよろしいので?」

「クロエならば問題は無い。先に『ナイトメア』を保護する」


 『ナイトメア』を奪われる事が一番のリスクだ。万が一の事を考えて私以外に触れられない王座へ戻す。


「おう、遅かったのぅ」

「!」


 王の間を開けると、その王座の前に立つ一人の男が三人の気配に振り向いた。

 フードマントを着て、その姿は夜の闇に紛れて明確ではない。横窓から差し込む月明かりに照らされる半身から、城の者ではない事だけは確かだった。


「誰だ! テメェ!」


 ミッドが男へ掴みかかる。その瞬間、ボッ! とミッドの腕が発火した。


「がっ!? も、燃え……コイツ――」


 ゴッ! と男の裏拳にミッドはきりもみして飛んで行くと近くの柱にぶつかって気を失った。

 男はそれを路傍の石でも蹴ったかのように意に返さずブラットとネストーレへ歩みを進めてくる。


「陛下! お下がりを――」


 ネストーレがブラットの前に出る。するとブラットは、


「ネス、お前はミッドを連れてここより離脱しろ」

「しかし……」

「二度は言わん」


 (ブラット)の言葉にネストーレは男を気にしつつ意識を失ったミッドへ近寄る。腕の火を消し、肩を回して抱えると場を後にした。






「…………どうやら決断をしたようですね」


 『太陽の巫女』は天より止むことの無い太陽の光から『恩寵』が動く様を感じていた。


「ソニラ様。ディーヤですか?」

「いいえ。シヴァです」






「『太陽の民』か。我が夜の中でこれほどの“陽気”を保つとは。さぞ指折りの実力者なのだろうな」


 ブラットは歩みを進めてくる男と向かい合う。


「だが、【極光剣】は私が殺した。奴ほどでないのならば私には勝てん」

「ワシは『太陽の戦士』の――」


 その瞬間、秘宝『ナイトメア』が漆黒に染まると、どっぷん……と周囲の闇が更に濃く満ちる。


「“強き”を口にした所で所詮は『太陽の民』。太陽の届かぬ『ナイトパレス』では赤子にも劣る存在だ」


 月明かりさえも許さぬ闇が歩む男を飲み込む。そして、その存在全てを空間ごと闇に取り込まれた。


「で?」

「!?」


 しかし、男は平然と闇の中から出てくると、ブラットへの歩を止めない。

 ブラットは手を翳すと『魔剣ヴェノム』がどこからかその手へ収まる様に飛来――


「アホが」


 男が次に一歩踏み出すと発生した“陽気”が濃い闇とブラットの身体を吹き飛ばしつつ、周囲を発火させる。


「くっ!」


 太陽の光を得られない環境下での異常な“陽気”は類を見ないモノだった。

 ブラットは燃え始めたコートを脱ぎ捨て、改めて『魔剣ヴェノム』を手に引き寄せて握る。

 燃える事で発生する周囲の灯りが目の前に立つ男を照らす。


「ワシは『太陽の戦士』戦士長シヴァじゃ」


 フード奥にある褐色の肌と戦化粧が火の揺らめく中、細眼の男を映し出す。


「ぶち会いたかったけぇのぅ。戦ろうや、【夜王】さん」


 シヴァはそう告げると細眼を薄く開き、不敵に笑った。






「ん? なんだ、コーリス。お前、今日はもう帰ってパーティーに行くんだろ?」

「あ、いや……さっき、脱走してた『太陽の民』を外の衛士が捕まえたみたいでな! メアリー様の指示を待つ間、収容しておこうと」

「……」


 研究員の男――コーリスは特殊な合金で拘束したディーヤを後ろに連れて『独房棟』を進んでいた。

 そして、収容区の門前の衛士に告げる。


「ふーん。その『太陽』のガキ、顔色が良くないか?」

「え? あ、あはは。そ、そうだな! どこかで匿われてたのかもしれん! その調査もメアリー様に進言しなければ!」

「物好きなヤツも居るモンだな。まぁ、長持ちして貰わないと困るしな。実験動物が居なくなると俺たちも食いっぱぐれるしよ」

「そ、そうだよなぁ!」


 コーリスは背に刺さるディーヤの殺気に冷や汗を掻きつつ、もう通るぞ! と扉を開けてもらった。


「…………」

「……あ、あの……」

「黙っテ案内しロ」


 コーリスは先導して目的の牢を目指す。

 ディーヤの拘束はまるで意味を成さない。その気になれば引きちぎり、衛士やコーリスを捻り潰す事など容易かった。

 『太陽の民』を動物扱いする奴らに怒りは湧いたが、(クシ)を助ける事を優先し歯を食い縛ったのである。


「……」


 呻き声、鳴き声、唸り声、泣き声。

 その空間は通るだけで横の牢からあらゆる声が混ざり合う、狂った空間と化していた。

 一日居るだけで狂ってしまう程の混沌。こんな所に弟は居るのか、とディーヤの握る拳は自然と強くなる。


「こ、ここだ」


 コーリスは一つの格子の前にやってくると錠をかける魔石に己の魔法陣を承認させてロックを外す。中は暗くて『吸血族』でもぼんやり見える程度だが、


「! クシ!」


 ディーヤは奥で廃れたベッドに横たわる弟を見て駆け寄った。金属の拘束を引きちぎり、その顔を抱き寄せる。


「……ディディ?」


 すると、覚えのある暖かさにクシはゆっくり目を開けた。


「……夢……だって……ボク……よく夢でディディを見るから……これも……夢……」


 クシは弱っていた。それどころか、身体には血を抜いた跡もあり、身体は凍るように冷たい。


「夢じゃなイ!」

「最後に……ディディと会える夢……幸せだなぁ……」

「何を言ってるんダ! 帰るぞ、クシ! 太陽の下に帰ればきっト――」


 ディーヤの言葉を聞く前にクシは目を閉じた。死んではいない。しかし、命の気配はとても弱く、一刻も早く太陽の下に出なければクシの命は明日まで持たないだろう。

 その時、ガシャンッ、と格子の扉が閉まる。


「! 貴様!」


 ディーヤは格子に掴みかかる様にコーリスを睨み付ける。


「少しは考えなよ、嬢ちゃん。大人しく案内して、はいサヨナラってなると思ったかい? ナイナイ。それどころか、健康な『太陽の民』を捕まえたって報償金が出るんだぜ? イヤッホゥ!」

「……」

「無駄無駄。こうなるとその睨みも可愛い可愛い。ちなみにこの格子は破壊できないぞ? 魔力が散る様に特殊な合金で出来てる。あ、知ってる? お前らの“陽気”って魔力に近いの。つまり、この格子は破壊できないの。理解したかね?」


 そう言って、コーリスは格子から離れるとルンルンで報告へ向かう。

 やっぱり、『太陽の民』は知性が足りない。こうなるなんて普通にわかるっしょ。まぁ今回は俺の知性の勝利って事で♪


「ん?」


 その時、フラッシュの様に、キラッ、と空間が一瞬光った気がしてコーリスは後ろを振り返ると、


「――ホァ!?」


 同時に怒りに任せて飛びかかってきたディーヤが目の前にあった。格子は切断されて、あっさり破壊されている。

 今度は避けられない。その拳が顔面にめり込む。


「クたばってロ!!」


 そのまま、近くの壁に叩きつけられ意識を失った。その騒ぎを聞いた、入り口の衛士が事態に気がつく。


「脱獄だぁ!!」

「取り押さえろ!」


 拘束用の長物を構えてディーヤに迫る。

 しかし、衛士は動きを停止した。何故なら――


「――な、なんだ!?」


 ディーヤの溜める様に構える腕には太陽の光と言っても過言ではない“陽気”が纏われていたからである。


「『御光の剣』!!」


 そう告げるディーヤの振り抜いた手刀によって、“衛士”“柱”“壁”が斜めに切断され、閃光が『独房棟』を通り抜ける――

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