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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 第一幕 願いを叶える珠

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第18話 氷湖の巨城

「ホんあー、コゴって遺跡っちゅう建物の内部なんけー?」

「そんなんだよー。タルタスみたいに喋るヤツは初めて見たぜ!」

「ソんかー。最近、ヒューマズの凍った死体を良ぐ見るでよー。不思議やったんやが、そういう事がー」


 オレ達は白い猿巨人――タルタスから防寒具を受け取った。(結構良い代物で、動かずとも寒さを感じないレベルの物だった)

 その後、一通りの自己紹介を終えて、彼の引っ張るソリに乗せて貰って、林の中を程よいスピードで進んで行く。


 ソリに乗る荷はもっぱら、魚や魔物ばかり。それなりに知能の高い個体であるらしく狩りをする様子がわかる。肩に乗ったカイルと楽しそうに話している所から性格も友好的な様だ。


「防寒具、ほんとに助かったぜ」

「インやー。ゴミばかりだでよー。何度かヒューマズに渡そうとしたんやがー、皆逃げんのよー」


 そん後、皆凍死してるでー、とタルタスは語る。


 極寒の環境で、5メートルの図体で真っ白な毛むくじゃらが話しかけて来たら、普通は逃げるか攻撃する。オレらもカイルが居なかったら戦闘してたかもしれんし。


「タルタスは俺達が怖くなかったのか? あんまり見ないんだろ?」

「イツやったかー。ぢっこいヒューマズが来たら事あったでよー。おんしら、ぞのヒューマズど同じマーク持ってるだー」

「え? その人の名前わかるか?」

「ダシかー、ゼブスどが言っとったでー」


 ゼブス……ゼウスか? クランマスターは一回遺跡に入ったのか。


「ゼブス……誰だ? 俺は知らねーな」

『カイル、マスターの事だ』

「訛りで別の名前に聞こえるね」

「ズマねー。聞き取りづらかったら言ってけろー」


 何ともタルタスが川で魚を採っていた所にクランマスターが現れて色々と世話をして、世話にもなったらしい。その際に『星の探索者』の紋章を渡して、


“これと同じ紋章を見たら、それを持つ子達を助けてあげて”


 と、言い残して中層に下らずに上に戻ったとのこと。


「じゃあ、タルタス」

「ンあー?」

「何か、不自然な階段とか、建物って近くに無いか?」

建物(だでもの)ってーと。オラん家くらいだでー」


 すると、林を抜けて凍った湖に出た。その中心に表層が凍った城が建っている。


「うぉぉ!? 何だあれ!?」

「アレがオラん家だー」


 興奮するカイルにタルタスは自慢気に告げる。

 広大な氷湖の真ん中に山のように視界を埋め尽くす巨大な城。周囲に村や城下町の跡などは存在しない為に、国の跡地と言うわけでもなさそうだ。完全に何の意図で建てられたのか不明なアーティファクトである。


「なんか……ゾクってしますね。あの城」


 レイモンドは、寒さとは別の寒気を感じたらしい。ありゃ軽いダンジョンだな。


『ローハン』

「あそこにあるかもな」


 “中層”へ続く階段が。






 タルタスの体格をもってしても、余裕で通れる門はオレらから見ると、まるで小人になった様だった。


「すげー」

「オラが産まれた時からあるでよー」


 カイルはタルタスの肩に座って通り抜ける門を下から眺めていた。

 そのまま城内に入ると、入り口や扉、道、施設の一つ一つが巨大な代物である。

 階段ではなく坂道になっている通路を進み、半開きの大きな門の前でソリは止まった。


「ワリー。ソリを片付けてくっでよー。先に中に入っててくんろー」

「あら、アナタ」


 すると、半開きの門の向こうから女声が聞こえた。タルタスの訛りに慣れ始めて事もあって綺麗な声に聞こえる。


「オオ! サリー! ダメでねが! まだ寝とらんとー!」


 サリーと呼ばれた猿人の女はタルタス程では無いにしろやはり巨大だった。身長的には4メートル程。服の上から厚手のローブを着ており、こちらへ歩いてくる。


「新しいお友達?」

「ンあー、ゼブスの知り合いだー。オメーら紹介すっどー、嫁のサリーだぁー」

「タルタスの妻、サリーです」


 丁寧にお辞儀をする様子から品性を感じる。タルタスの様子からイエティは原始的な生物かと思っていたが、知的な文化を持つ種族らしい。タルタスが変わってるだけか。


「俺はカイル! よろしくな!」

『ボルックだ。生物ではない』

「レイモンドです。見上げてばかりで首が痛くなって来た……」

「ローハンだ。ただのおっさん」

「ご丁寧にどうも」


 サリーは、にこ、と笑う。すると、こほっと少しだけ咳き込んだ。


「ンナー! ホレ見ろー。乾いた空気はマズかーってゼブルも言っとったろー!」


 ソリの片付けもそっちのけにタルタスは、どしどしどし! とサリーに駆け寄って行く。

 オレらは走るタルタスの勢いに吹き飛ばされて、近くに積もった雪に埋もれて尻や足を突き出した。


「アナタがスープの火をかけっぱなしで行くから」

「材料を増やしたでー。後で旨いズーブを持ってってやるでー」

「それなら、私がお客様の案内を勤めるわ」

「マダ風邪が治ってねーでなー。無理したらダメだどー?」

「ええ。アナタはスープをお願いね」

「んあー」


 二人がそんな会話をしている最中、オレは雪の中から抜け出すと、隣でカイルはレイモンドを引っ張り出していた。

 オレもボルックの腕を掴んで引っ張り出す。


「後でズーブ持ってっでやるがらなー。オメーら、サリーと会話しててくんろー」

「おう!」


 頭にちょこっと雪を乗せたカイルの返事を聞いて、タルタスは笑うとソリを片付けに、ずんずんと歩いて行った。


「それでは、皆さん。暖かい部屋に案内しますね」


 オレらが雪で冷えた様子にサリーが気を使って暖かい部屋に案内してくれる様だ。


『レイモンド。悪いが先にマーカーの設置を頼む』

「良いですけど……広すぎて、全面はカバー出来ないと思います」

『死角が出るのはしょうがない。そこは直接データを集める。大まかなマップが無ければ迷って凍死するだろう』


 城の内部はマイナス10度はある。密閉されているからか、外よりも数段温度が低い様だ。

 体格が大きくて、環境に適応したタルタスやサリーは平然としているが、オレたちにとっては迷ったら死が確定する状況である事には変わり無い。


「今回はハズレだな。がっつり環境が敵のパターンか」


 それでも、自分達の物資を消費せずに食料と寝床が確保出来るなら“中層”への階段は問題なく見つけられそうだ。

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