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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 第四幕 何を思い何を願う?

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第134話 ではな

「終わり? 終わ……り? 何故、そんな事が言えるのですか!? ゼウス!」


 御膳仕合を止めたマスターを睨みつつ叫ぶとアマテラスは立ち上がる。感情を乗せて放たれた言葉は周囲の木々を軽く熱した。


「人は意味を持って戦うのよ、アマテラス。だからこそ、そこに“物語”が生まれる」

「生まれていました! 見たことの無い物語が! 今、目の前で紡がれていたのですよ?! 貴女が止めなければ!」


 オレVSヤマト。

 針の穴を通すような駆け引きは、あのヤマトと戦えている様に見えただろう。実際はかなりギリギリで、こっちは常に“死”が片方に存在している選択肢を何とか選ばずに状況を進めていたのだ。

 正直、こんな戦いは二度と出来ない。

 同じ手が通じる程、ヤマトは甘くないし、引き出しを見せた以上はソレに類似する戦略にも対応してくる。

 つまり、この戦いは再現する事は叶わないのだ。オレもヤマトとは二度と戦いたくねぇし。


「永久に残るハズだった物語が……目の前から零れ落ちて……」


 チリ……とマスターに対して本気の怒りをアマテラスは向ける。


「アマテラス」


 すると、パチンッ、と鞘に刀を納めたヤマトの声にアマテラスは反応した。


「ローハン・ハインラッドから戦意が失われた。これ以上は無意味だ」

「ローハン様! 貴方様も――」

「場の流れってのがあるだろ? それに、オレもこの御膳仕合はもう意味がないと思ってる」


 さっきの魔力は……多分ガリアの爺さんの――


「……こんな……こんなことが――」


 わなわな……と震えるアマテラスは納得出来ない様子だった。そのまま【始まりの火】となり、本気で遺跡都市を更地にしようとした所で――


「落ち着け」


 ヤマトが、ドスッと刀の柄尻でアマテラスの腹部を強打。その意識を失わせると力無く倒れる様を抱えた。


「ヤマト。ケアはマジで頼むぜ。お姫様みたいに、死ぬほど甘やかしてやってくれ」


 じゃないと次に眼を覚ました瞬間、全部吹き飛ぶ。

 オレは、ようやく肩の力が抜けて座り込む。痛てて……せっかく怪我は治ったってのに……


「ローハン・ハインラッド」

「なんだ? お前から斬られた傷が痛ぇーんだ。手短に頼む」

「あのまま続けていたら、私は貴殿に負けていたか?」


 負けていた。ヤマトの口からそんな言葉が出る程にはあっちも、オレの動きは予想外だったらしい。


「さぁな……こればっかりは続けてみないとわからん」


 とは言うものの、こちらは引き出しを開けるだけ開けて、ようやく勝負になったレベルだ。

 『万物両断』を止めた事による動揺。

 『反射』の欠点。

 それらを加味し、針の穴を通すような駆け引きを得てようやく『音破』を通せたのだ。

 対するヤマトは『反射』と刀を振っただけ。まだ『天光流』を何も見せていない。それに――


「人は窮地に追いやられれば火事場の馬鹿力が発動する。お前のソレだけは相手にしたくねぇ」


 その為、ヤマトへの対応は“拘束”に留めたのだ。下手に命を狙いに行くとまだ見ぬ潜在能力を引き出しかねん。

 強い奴には殺意ではなく戦略で勝つに限る。


「そうか。ではな」


 オレの返答に満足したのか、ヤマトはアマテラスを抱えて去って行った。

 その様子を見届けたオレは、そのまま仰向けに倒れる。


「ロー、お疲れ様」

「マスター……ホントにさ。次からこう言う事する時は一声かけてくれよ……」

「ふふ。別に声をかけなくても来てくれたじゃない」


 オレがヤマト相手に勝負になると評価してくれるのは嬉しいけどさ……


「……それよりも。さっきの魔力は」


 反応の場所は大雑把であるが『エンジェル教団』の大聖堂からだろう。


「『ガリアの封印』ね」


 それは【地皇帝】ガリア・ラウンドの魔法。『封印魔法』では最上位に位置し、世界各地に点在する創世初期に起こった“五つの古代災害”を今現在も封じている。(内、一つは『古代砂界軍』であるが、マスターが封印を解いて、その後吹き飛ばしたらしい)


「……マスターが教えた?」

(わたくし)は『創世の神秘』の編み出す魔法を使えない事は知ってるでしょう? 地真が自分でガリアから教わったの」


 そう言えば、龍天の爺さんはガリアの爺さんと知り合いだったっけ。面識はあるか。


「けど、『ガリアの封印』は――」

「地真が自分で決めた事よ。(わたくし)がどうこう言う事は出来ないわ」


 ……まったくよ。迎えに来るのは“家族”じゃないとダメだろうが。






 ゼウスとアマテラスが接敵し、ヤマトとローハンが『御膳仕合』を行っている頃――


――大聖堂前――


 風は微風。しかし、スサノオの纏う『雷』はその出力を増していく。


「お前達は“積乱雲”を見たことがあるだろ?」


 タオの『炎剣イフリート』の炎が這い、スイレンの魔法がスサノオを貫く。


「世界の仕組みが生み出した、人の手にはどうしようもない空の現象。俺はソレだと思えばいい」


 炎には雷を走らせて爆発させ相殺。スイレンには正面に姿を形成し『崩拳』を放つ。

 スイレンは可能な限り魔力を防御に回すが、拳は止めても放たれた雷が身体を貫いた。


「か……は……」


 ソレは仕留める一撃ではない。こちらの意識を飛ばす程度に“手加減”したモノ――


「嘗めて……いるのか!」


 逆に意識が覚醒。己の限界を越えて『停止空間』を再び発動。スサノオの周囲に時計を模した魔法陣が出現する。


「良い気合いだ! だが、ソレはもう見た!」


 次の瞬間にはスサノオは正面に居ない。スイレンの背後に蹴りを放つ姿で形を成し、そのまま彼女を蹴り飛ばす。


「ぐっ……」


 タオがスイレンを受け止めるが、スサノオは既に二人の目の前に立っていた。コン、コン、と軽打にて二人の脳を揺らし意識を奪う。


「殺意与奪は場で一番強い奴が握る。よかったな、一番強いのが俺で」


 スサノオは二人に踵を返すと大聖堂へ歩みを進めた。地真をキングと挟み撃ちにして、この戦いを終わらせる――


「残念ですが、ソレは間違いですよ」


 その時、『炎剣イフリート』がスサノオの身体を両断した。スサノオの移動方法を見てタオも同じ様に間合いを潰す出現を行ったのだ。


「熱じゃ風は消せないぜ?」


 スサノオはタオへ殴り返し、距離を開ける。


 ゴゥ……とタオは自身の片手を炎に変異させ、ヒュオ……とスサノオは風を手の平に回す。


「『大紅蓮焦土』」

「『神風』」


 炎と風がぶつかり、熱風が弾けて天へ昇る。

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