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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 第四幕 何を思い何を願う?

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第110話 共感覚

 朝飯と片付けを終えて、クランメンバーは各々で自由に活動を開始。


 マスターは帰ってきたスメラギの話を聞くと、『龍連』の元へ薬を持ってトコトコ歩いて行った。


 クロエはレイモンドの魔力コントロールの精度を上げる鍛練を手伝う事に。月の魔力を使うと言うことは、頭上から降ってくる滝の水を受け止める様なモノ。取り込む分を制御しなければ自分自身を破壊してしまう。

 クロエはオレよりも魔力制御が上手いので適任だろう。


 スメラギは、オレの作ったカレーを平らげるとテントに敷いた畳の上の布団に“身代わり”を置いて、その下に開けた穴で眠っている。どうやらマスターに言われて『龍連』と『エンジェル教団』の様子を探ってたらしく、相当に神経を使った様だ。それでも、有事の際は即起きてくる。


 ボルックとサリアは遺跡都市の中心市場へ。仕事でクランメンバーが適任のモノが無いかを探しに行った。

 『星の探索者』の活動資金はマスターが全部賄っている。古今東西で働いていた時に数十年契約の前払いで賃金を受け取っていたらしく、今でも使いきれないくらいあるんだとか。マジでビビったよ。昔、『アルテミス』の貸金庫に行った時、一番デカイ金庫を占領してんだから。

 最初はクランメンバーの生活費もマスターが肩代わりすると言っていたが、流石にソレは……と私物の購入などは自分達で仕事をして稼ぐことにしている。

 その方が冒険のキッカケも掴めるかもしれないし、金銭感覚もしっかりすると言うクロエの案だ。

 ちなみにクロウも修理業をやって稼いでた。なんなら、オレらの中で一番稼いでたまである。

 サリアとボルックはそんなメンバーに適した依頼を探しに行ったのだ。比較的にクリーンなモノを選定してくるだろう。


 オレとカイルは『バトルロワイヤル』の運営に元へ行き、クロエに賭けた配当金の還元へ。この金貨の重みは、いつになっても良いぜ!


「カイル、何か買ってやろうか? お前も『バトルロワイヤル』頑張ったしな」

「え! ホント!? あ……いや、俺負けちゃったし……」


 一位になったら好きなモノを貰える。自分で言い出した事を違えないのは素直な愛弟子の良いところだ。


「次! 次に何か一番になるから! その時までとっててくれ!」

「はは。了解」


 今回稼いだ金貨はその時までとっておくか。


「そんじゃ、お前の魔法についてようやく解ったから説明するぞ」

「マジ!?」

「お前の魔法は『共感覚(ユニゾン)』だ」

「ゆにぞん?」


 カイルは頭を捻る。まぁ、日常生活で『共感覚』なんて使わんからな。


「『共感覚(ユニゾン)』は自分で指定した奴の魔法を自分も使えるようになる。無論、身体強化系も含まれるぞ」


 最初は『加速』かと思ったが遺跡を出て以降、カイルが『加速』を使った気配はない。

 一度は使ってて、本人もイメージが出来て応用をしたと言うのに、その後は全く発動しないのは些か違和感があった。

 アレは『圧縮』を持っていた中層の番人『機人』をカイルは無意識に『共感覚』の対象にしていたのだろう。それで『加速』が使え、そのままボルックの身体になって一緒についてきたので対象が固定され続けていたのだ。


「なにそれ! メチャメチャ強いじゃん!」 

「最上位の固有魔法の一つだ。誰でも持ってるモンじゃない。他にコレを持ってるのは【聖人】セルギと【牙王】ファングが代表的だな」


 両名ともそれなりの大物である。【牙王】はもとより、【聖人】も若くしてそれなりに腕の立つ存在だ。


「セルギとファングって人は知らないけど……ってことは! おっさんの“オールレットラン”ってのも使えるの!?」

「【オールデットワン】な。まぁ、理論上は可能だ」


 すると、カイルは滅茶苦茶眼をキラキラし始め、教えて、教えて、と羨望の眼差しが向けられてくる。しかし、そう単純な話ではない。


「言っておくが『共感覚』は発動する魔法に対する知識が無いと本来の力を発揮する事は出来ない」

「えー! 目の前の奴からサッと使えるようにならないのかよー」


 と、カイルは捲し立てるが、この愛弟子は相手の『魔法』を相手が使ってる所を“感覚”で発動していた。

 “過程”も“理論”もスッ飛ばして、“結果”だけをその身に宿す才能はクロエと同列のモノだ。

 しかし、カイルの性質はクロエと正反対。性格上、搦め手を使った複雑な戦いを苦手とするカイルは初見殺しにめっぽう弱いのだ。だから、“理”も少しは頭に詰め込んで貰わないとな。


「強くなる事に近道はないんだぞ。お前も今、剣を自在には振り回す為に死ぬほど稽古しただろ?」

「だって! 剣は振った分だけ切れる物が増えるから楽しい!」

「『共感覚』もソレと同じだ。何も今すぐ全部使えるようになる必要はねぇ。まずはクランメンバーの魔法を『共感覚』で発動する所から始めるぞ」

「うぅ……勉強やだなぁ」


 オレは項垂れるカイルの頭を撫でる。もっと良い修得方法が無いかオレも“相談”してみるか。






「ってことで何か方法はありませんか?」

「それ、僕に聞く?」


 オレは『星の探索者』のキャンプに戻ると、当番であるサリアとカイルが昼食の準備を始めた。

 サリアの指示でカイルは不器用ながらも細かい作業を頑張ってて微笑ましい。

 待っている間、オレは【原始の木】へアクセス。するとユキミ先輩が木の前で座禅に瞑想してたので少し相談に乗ってもらった。


「僕は弟子は居なかったから参考にはならないよ。まだ、ゼウスに聞いた方が良い」

「マスターも理論派なのでカイルに教えるには相性が良くないんですよ」

「『共感覚(ユニゾン)』か懐かしいね。ファングを思い出すよ。彼に教えを(こう)のはどうだい?」

「あ……いや……ちょっと【牙王】とは顔を会わせづらくてですね……」


 次に顔を合わせた瞬間、抹殺されるだろう。


「ふむ。それじゃ僕に出来る助言は一つだけかな」


 お、戦いにおける大先輩の言葉をありがたく聞くとしよう。


「とにかく追い込むんだ。中途半端は駄目。殺す気で追い詰めて、追い詰めて、追い詰める。肉体と精神の両方で全てにおいて無力だと感じた時、人は本当の“自分”が顔を出――」


 オレは失礼だと思ったが、そこでアクセスを切った。

 ふー……いやいや、無理だっての。

 そういえば『桜の技』の鍛練って相当に過酷なモノだったっけか。ユキミ先輩はソレに生涯を賭けた御方だった。そりゃ、鍛練の方法も命を削るモンだよなぁ。相談する相手を間違えたか……


「あ、おっさん! 味付けが二種類あるんだけど、どっちがいい?」


 こーんな可愛い愛弟子を追い込むなんてオレには出来ないね!

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