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フェネラの髪 マデラインの瞳 1

父フレデリクに連れられてモンサーム伯爵領にある妖精の森、その森の奥の泉にはじめて行ったのは、アリステアが5歳の時だった。


それから6年経った今日、アリステアは正式に妖精の啓示を受けた。


父ら歴代の妖精公爵当主達はそれぞれに啓示を受けた際には、未来の伴侶の姿や特徴的なものを示す映像を視たりしたと聞いていた。


だから自分の受ける啓示にも、何らかの映像が見えるものばかりと思っていたアリステアは、その予想や期待が裏切られて愕然とした。


啓示を受ける作法に則り、御柳の花冠を受け取った双魚を目で追い、何を見せられるのだろうと逸る思いで水面を凝視していた。


だが、いくら待っても双魚が水底に沈んで行ったきり水面はしんと静まり返ったままだ。


『フェネラの髪 マデラインの瞳』


囁くような声がしばらくして聞こえたような気がしたが、それ以上うんともすんとも泉は語らず、視覚的に特別なものは見せられることはなかった。


(ええ? まさか······本当にこれだけ?)


アリステアはあまりのことに呆然として、泉から立ち去ることができずにいた。待てど暮らせど泉は静謐な姿を崩すことはなかった。


父譲りの金髪碧眼の、落胆を顕にしている自分の姿だけが虚しく水面に映っているだけだ。


「 なんか、僕の時ばかり雑じゃない?」

アリステアは不服そうに呟いた。


『フェネラの髪、マデラインの瞳って、本当にそのままだから、アリスにはそれ以上の説明はいらないでしょ。だからわざわざ視せるまでもないよね?』


銀の羽を持つ小さな妖精の回答にアリステアは深い嘆息を漏らした。


その後アリステアが成長した後にも、伴侶についての啓示は、何一つ新しい情報は与えられることもなく、そればかりをただ繰り返すだけだった。

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