第6話
ポツン、と一人で私は座っている。他のテーブルとの距離感は曖昧で、数歩で隣まで移動できるような気もするし、望遠鏡で見ているほどに遠いような気もする。
何か、人間と人間の心の距離をそのまま具象化したみたいだ。
談笑しあう人、一人でゆっくりとしている人、誰かを探しているような人、天使に付き添われている子どももいる。年齢も性別もばらばらな人達が、他のテーブルをほとんど意識せずに過ごしている。
また一人きりだ。
そんなことを、私は思った。
今まで、ずっと一人きりだったのに、彼がいなくなって、お爺さんとも別れて、また一人でいることを思い出した。
いつから、私は一人だったんだろう。
あの事故から?
もっと前?
どうして、一人になりたかったんだろう。
誰もいないから?
誰もいないから、一人になりたかったの?
何だかわからない。
わかりたくなかった。
一人のときはいつもそうだ。
怖い。
一人じゃないときに一人になりたくて、一人になると一人がたまらなく怖くなる。
誰かといると、誰かをなくしてしまうことを考えてしまう。
オレンジジュースに浮かんだ氷が、バランスを崩してカランと音を立てた。
氷は一人じゃなかった。