表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/45

7:からだ てんけんたい

「んっ、あっ、ああああああん! いた、いたたたいたいいいですよおおお、もうちょっと優しくしてくださいっったったぁああぁぁ!」

「ほれほれ、ここかー? ここがええんかー?」

「うひゃっ! うひゃぁぁん!」

 今夜もお風呂上がりにストレッチだ。ミオソタを押さえつけてかわいい喘ぎ声を堪能する。ミオソタの様子が心配だったけど、私が買い物から帰ったときにはもう元通りで安心した。


「外まで声、漏れてるわよ。私達しかいないからいいけど、変なことしてるんじゃないかって思われちゃうわよ」

 ミーナもお風呂から戻ってきた。いやいやそれは私のせいじゃないですもん。変な声を出しているのはミオソタです!


「はいはい、んじゃ、二人とも脱いで。今日はお互いの体のチェックをします」

 ミオソタがキョトンとしている中、私とミーナは服を脱いだ。寝間着にしているワンピースだけだったので、完全に裸だ。

「冒険者にとって身体はとても大切よ。普段からそのケアを怠ってはなりません。小さな虫刺されのせいで戦闘に集中できなくなったり、病気の原因になったりすることもあるの。と、いうわけで、お互い見えないところも時々チェックしあうのよ」

 そういってミーナも服を脱ぎ、私に薬の入った瓶を渡した。

「背中がね、痒いの。塗ってちょうだい」

 こっちに来てから想定以上に暑い日が多い。とくにここ数日は雨季に入ったせいで蒸し暑い。案の定、背中に赤いぶつぶつができていた。

「あー、汗疹(あせも)できてるよ」

 見ているだけで痒くなりそうなぶつぶつに薬を塗る。

「下着の素材も考え直したほうが良さそうね」

 ミーナが自分で胸の下に薬を塗りながら呟く。私もちょっと気になるので、早めにいい布を探したほうが良さそうだ。

 冒険者はときに野外で長い時間を過ごす。気がつけば服の中に虫が入っていたり、毒のある植物の葉っぱでかぶれていたり、肌トラブルは日常茶飯事なのだ。


「んじゃ、ミオちゃんは私の背中見て。変なとこがあったら教えてねって、脱いで脱いで!」

 躊躇うミオソタを急かし、服を脱がせる。女同士、何を今更恥ずかしがることがあろうか。

「ミーナ、ちょっと太った?」

「うー、こっちに来てから料理が美味しくてね」

 ミーナの背中に薬を塗った後、おなかからおしりにかけてチェックする。ミーナのおっぱいは大きいから、前方も割と自分で見えてないのでそこまで見るのだ。

「それにしても、ミオの肌ってきれいね。それにこの肌触り、癖になるわ」

 ミーナがミオソタの背中を撫でながら言う。

「でしょ? やっぱり鬼人(ガラビト)だからなのかな?」

「どうかしら、他にサンプルがないとわからないわね」

 私もミオソタのおなかを撫でる。しかしすぐに押し離された。ちぇっ。


「ミーナ先輩、これってどこまでチェックすればいいんですか?」

 ミオソタが私のおしりを睨みながら言う。

「別に隅から隅までってわけじゃないよ。基本的には知らないうちに虫に刺されてたりするのが見つかればいいから。虫刺されは病気の原因になるものが多いからね」


「よかった、もっとデリケートなとこまで見せ合うのかと思いましたよ」

 あからさまにミオソタがほっとした表情になる。

「そこまではさすがにいいかな。でもミリアには見せてるのに私には見せてくれないのはお姉さん寂しいわ」

 ミーナがわざとらしく肩をすくめる。

「ミリア先輩が勝手に見ただけです、私から見せたわけじゃないですよ!」

 すかさずミオソタは反論する。

「いやほんと綺麗だったよ。とくに人間と変わった感じはなかったよ」

 助け出したあと全身隈なく洗ったときのことを思い出す。勝手に見ちゃったのは悪かったけど、私は傷を心配したからだよ。そっちの趣味はない。ちなみにミーナにも多分ない。

「見せませんよ」

 ミオソタが念を押す。

「うん、そうね」

 ミーナがにっこり頷く。

「そうです」

 ミオソタも頷く。

「うん、そうね」

 と、ミーナ。


「なんですか」

「えー、この流れなら普通、『じゃ、恥ずかしいけど先輩っ、見てください』ってなるでしょ!」

「なりませんよ! なるわけないじゃないですか!」

 ミオソタはむっとした表情でミーナを睨む。そんなミオソタをミーナが笑う。最初は随分おとなしい子だと思っていたけれど、ちゃんとミーナにも言いたいことを言えるようなので安心した。ミーナ、あんまりからかいすぎないでよ。嫌われちゃうぞ。


「さて、冗談はさておいて、ちょっと真面目な話をするわよ」

 ミーナがすっと真剣な顔になる。

「ミオ、おしっこをコップに入れてきて」

「へ?」

 ミオソタが固まった。


「飲めるかどうかを調べるのよ」

「え?」

「冒険中に水が足りなくなることもあるの。おしっこを飲んででも生き延びなきゃいけないこともあるわ。あ、勿論そのままでは飲まないわよ。浄化の魔法を使うから。ただ、それでも安全な飲み水にできるかはわからないから今のうちに調べておきたいの」

 ミーナが真面目な顔で言う。

「調べるってどういうことですか?」

 ミオソタもミーナが大事な話をしていると感じたのか真顔になる。

鬼人(ガラビト)は見た感じ人間にそっくりだわ。だけど一応鬼のちからを持っているらしいじゃない。もしかしたらおしっこに、魔法で浄化しきれないものが含まれているかもしれないの。実際、そういう魔獣もいるしね。だから、もしおしっこを飲まなきゃいけない状態になったとき、飲んだ人に害があるかもしれないじゃない。だから事前に調べておきたいの」

 ミーナがミオソタの目を見て真剣な表情で見つめる。

「そ、そういうことならかまいませんけど」

 理解してくれたようだけど、ミオソタがやや複雑そうな表情で頷いた。


「あ、そうだ、ちょうど裸なんだし、立ってできるようになったかミオちゃん、ここでやってみせてよ」

「やりません!」

 即行で怒られた。ちょっと場を馴染ませようと思ったのに。でもちゃんと練習はしているのは知っている。ひとりでいるとき、こっそりあそこをいじっているのを何度か目撃したもんね。ばれてないと思ってるのかな、ふっふっふ。


 とりあえずおしっこの件は明日ということにし、他にも冒険者として大切なことを私とミーナで説明した。

 まずは清潔さ。匂いは野生生物に見つかりやすくなるし、普通に対人関係でもいいことはない。下着は毎日変えること。身体も毎日拭いてきれいにすること。この点はこちらにはお風呂が必ずといっていいほどあるのが嬉しい。大陸にいる頃より身体を清潔に保つことができている。

 次に普段の言葉遣い。依頼者への心証はとても大切だ。私達女性はただでさえ舐められやすい。依頼者や依頼の中で出会う人達との関係はなるべく良好にしておきたい。気に入られれば指名依頼が来ることもあるのだ。この点はミオソタは大丈夫だろう。お貴族様のところで働いていただけのことはある。

 そして、気になったことは遠慮せずに報告すること。報告、連絡、相談は大切だ。ひとりでなんでもできるわけじゃない。チームでどうにかやっていかなきゃいけないのだ。

 私達が一流冒険者になれたのは、普段からの小さな積み重ねの結果なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ