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女勇者の禁書覚書11

 いつものように見張りの詰め所は中で監視していて人影らしいのがここからでも見える。詰所といっても木造のほったて小屋を二つほど重ねた程度の広さの建物であり、その見張り小屋はさらに小さく人がたってはいるのがやっとと思えるぐらいの大きさであった。


 一応小屋には窓らしいものがあり底を開けっぱなしにしてあるがそこから見ているというわけでもなさそうだった。人がいることは詰所から漏れ出る明かりと時たま動く人影がそれを証明していた。


 私は町の外と中とを分けているジグザグに置いてある柵を超えて外に出たのだった。


 城壁ではなく柵で最初にここに来た時にはそれを見て拍子抜けしてしまった。


 柵は材木を十字にして紐か何かできつく縛って解けないようにしてあり、それを横に並べていっただけの壁であり、入り口はそれをジグザグにひと塊を置いていてまっすぐには通れないようになっていたが馬車でも通れるほどに広かった。柵の外には幅の広く深い空堀があった。


 私は門の外へ出た時からそこは戦場だという意識が嫌でも出てくる。


 柵の中の都市とは違い、そこはめったに猛獣は出ないとはいえ出るのであるからいつ襲われて死ぬかわからない世界だと自分に言い聞かせている。「ここはもう戦場、ここはもう戦場」っと。ここらへんで何人か襲われて亡くなっているのを、近所からの会話で、新聞で、親からも聞かされていた。


 柵門から外に出たとたん、どんどん 緊張も高まっていくが同時に外へのあこがれが止まらない。そう思えば思うほどに緊張していくのは仕方ないことであるが緊張感がない人よりましだと思う。興奮しすぎてというのだろうか、頭で考えられなくなってきていた。


 それにしても柵があまりにも頼もしく見えないが、害獣に本当に効果があるんだろうかと疑問に思ってくる。人に対しては?


 父や友達が城壁、城壁、いうために石などで囲まれた壁を想像していたが全くの見当違いだった。


 こんなものは城壁とは言わない。ただの速攻で作った柵だ。


 私もこの柵を見るたびに、これで本当にいいのかと思ってしまう。


 柵門をでると柵に沿って歩き始めていつものコースだと面白くないと思い、反転して一度きた道を戻り、門までいき門に直角に歩き始めた。つまり外に出て行ったのであった。


 その道は舗装されていない、だいたい真っすぐになってはいるが多少うねっていたり、上がり下りがある。


 今、私が見ている景色は周り一帯は刈り取られた穀倉地帯で門からは遠くに山がうっすらと見えた。


 実は前々から行ってみたいと思っていたところがあり、そこは森林地帯であり、そこで何かできそうではないかと散歩し始めてからずっと思っていたところであり、そこは門から見える場所にあるため安全だろうと考えてここをトレーニング場にしようときめたのだった。

 

 森林地帯といっても見逃す限りの森林ではなくどっちかというと意図的に森林として残してあるような感じの場所で周りを見るとちらほらと林というのか森林というのか木々が密集しているような場所が見えていた。


 私は道なりに進んでいき、ものの十分くらいで目指していた森林地帯についたのだった。


そこは森林公園だった。中はうっそうとして少し霧がかかっていて、何か出てきそうな気配を漂わせていた。


 森林公園入口に立つと材木でできていて全体を白く塗られてほった文字の上から茶色で第一森林公園と塗られた四角い看板が立ててあった。その看板を見たとき私は腰の短剣を目で確かめて、さらに左手で二重に確かめて確認した。


 小さいころに、ここに何度か連れられてきた記憶をかすかに持っていた。


 あの時はもっと不気味に見えていたが家族で来ていたため、父も母も妹もいた。


 ここにつく前に馬車が一度すれ違ったがこんな早く馬車を見るなんて、と少しほっとした気分になったのだった。


 何の馬車か気になって中の様子を見ようとしたが周りが暗かったのとなかなのでよりいっそう暗く何があるのかわからなかった。通勤か旅人か行商人かもし人を運んでいるのなら、この時間に運用しているのかと驚いたが正確な時間を確認したかったが、あいにく時計は持っていなかった。


 通り過ぎてゆく馬車の中をなにがあるのか足を一歩踏み出して、覗き込むように見てみたが、やはり暗くて何を積んで売るかまではわからなかった。まさか奴隷とかではないだろう・・。


馬車音を出しながら距離はどんどん遠ざかっていき、形は小さくなり私は公園入口に視線を移した。


 ここは公園だからといって油断はできない。


 確か・・ここではなかったかもしれないが森林公園でクマがよく目撃されていて、それで騒ぎになり、討伐隊が組まれてクマを狩ったらしい。森林公園はあちらこちらにあり、貯水の役目をしていた。


その時の熊は新聞に載っていた情報によると5,6人がそのクマに殺されて、熊のえさになったらしく、いなくなったとされる場所から数百メートルの場所に食い散らかされた遺体が点在していたらしい。いまだに遺体の見つかっていないものがあり、民間の狩猟部によるとどこかに完全に埋められたことだろうとの見解が載っていた。狩猟部討伐隊は大の男三人ほどの編成で行ったとされていて、熊はその時に二体仕留められている。その戦いは過激なものだったらしく新聞にも詳しく書かれていた。


 山林を深く入った細い山道で一度目の戦いがあり、体長2メートルほどの黒い体毛をはやしたクマが突然、音もなくベルの音を鳴らしている男めがけて、脇の草むらから四つん這の状態で襲い掛かり

前足で男の足を狙い、そのまま転ばせて、クマは男を羽交い絞めにしようとあるいはかみつく場所を探しているような動作で何とか獲物をしとめようとしているところに刀で背中から切りつけられて、後ろにたじろぎ、一歩、また一歩と後退し始めた。熊は、討伐隊の一人は刀、もう一人は剣を持った二人とにらみ合い、しばらくののちに木々の生い茂る山林へと向かって走り始めた。


 この時の被害は足の靭帯損傷程度で済んだ。しかしその後けが人が出たとのことで引き返していて、山林の入り口あたりで再びクマに襲われた。最初は負った傷が浅く、同じクマが先回りしてきていたのだと思ったが、よく見てみると大きさが一回り小さく、襲い方は先ほどのものと同じで音もなく、気配もなくいきなり山道の脇道の藪から襲い掛かってきたのだった。下山するときはベルを鳴らしていなく、片足を引きずったものではない人に頭を殴りつけるように襲い掛かったのだった。


その殴られたものは何か人形のように軽く地面にたたきつけられて、身動きしなくなり、その動かない人をさらに押さえつけてかぶりつこうとしていた。そこへ、その時には剣を抜いていた男がすきを見つけたとばかりに剣で熊の後ろ脚に切りかり、切りつけたあと後ろに数歩ほど飛びのいた。足を引きづる男のほうも短剣の武器を片手に持っていて、臨戦態勢をとっていた。剣は後ろ脚を浅く切り裂き血しぶきが出てきたが熊はその程度ではひるまずに切りかかってきたほうへ向かってきた。熊が向かってきている男のほうは応戦体制をすでにとってあり、距離をとって事の様子を見ている。熊はそんなことお構いなしに突進してその男に襲い掛かった。熊は四つん這の状態から速度をかなり落として、前足の片足だけを相手の足を狙い横に振るうように攻撃してくる。


そのクマに狙われた男はいたって普通の体格をしており、どちらかというと細身だった。熊の動きに合わせて少し後ずさりながら、熊の前足を剣をふるって素早く薙ぎ払った。その猛獣はその攻撃にひるみ数歩後退する。熊は払いのけられた足が痛むらしく時折、足を挙げている。しばらくの間にらみ合う。熊は威嚇して相手を少しでもひるませようとこちらににらみを利かせている。熊が負った傷は決して浅くないことは出てきている血の量からも判断できた。 


深いとはいえ治らない傷ではないと、その時はそのように判断したが腱に損傷を与えたかもしれなかった。熊はさっきの山林の奥の道で出会った大きい熊と同様数歩後ずさりしてはとまり、それを繰りかえしながら、ある程度距離をとったらくるり向きを反転させて、切られた足を引くずりながら藪へと消えていった。熊に頭をやられたものは即死、もう一人は靭帯の損傷と断裂を引き起こしていて重症だった。弓をみんな持ってきていたがとても射掛ける時間なんてなかったと証言していた。


そののち、日を改めて人数を5人にまで増やして山林を探していたら熊の遺体が派遣された。背中にかけてバッサリとかなり深い傷があり、それが決め手となってこの熊は最初に出会った熊と判断された。新聞記事によるとその熊の遺体のまわりには下半身が土に埋められ、上半身外に出たままの人の死体が数体あり、すべてこの熊によるものだと推測された。


 さらにその数日後にクマの遺体が発見されて、その熊は第一発見の遺体より一回り小さく、それは山林のふもとで襲ってきたクマに違いなかったと結論づけた。

ほかにもクマに襲われた証言やら被害の状況。芋や農作物を食い荒らされたことなどが書いてあった。


 熊だけではなくイノブタや大きい蛇が出たということがあるそうで、ここの公園もそれらが出ないとは限らない。それらも戦闘経験がないものにとっては相当危険であることは私としても心得ているつもりだ。だがそれは父からそのように教わっただけであり、経験ではない。それゆえ猛獣以外は軽く見ていた。


 父も母も都市外へ出かけるときは大抵は短剣ぐらいは持ち歩いていると聞いたことがあった。


 非常用のベルも持ち歩いていたと聞いている。


 都市の外の農作業しているひとも門の外へ出るときはそうなのかと疑問を抱くが、全員が全員とは限らないだろうという結論になった。気になるところではあった。


 外には限らず、都市内とはいっても危険がないとは限らないが、今まで害獣が出たということをみたこともないし、聞いたこともなかった。


 なので私は公園の入り口の看板を見た時、思わず顔を短剣に目をやり左手でそれを確かめてしまったのだった。


 何かあったならこれで生き抜くという心構えをしていた。ここはもう、歩かないかではなく、生死の境だある


 公園に入るだけでも敵城に入るような胸の高鳴りを覚え、その高鳴る鼓動を抑えるために大きく深呼吸を何度かして中に入る。胸の鼓動がバクバクしてくるのがわかる。物音もなぜか聞こえなくなってきているようだった。


 もう外は明るくなってきているため森林の中でも道がはっきり見えて、所々に日差しが差し込んでいてとてもきれいだった。あまりこのような光景を見慣れない私には幻想的に見えていた。


 雑木林にいるために森林特有のにおいと湿ったひんやりした空気のにおいもあり、一層緊張が増し同時に安らぎが混ぜ合わさったような感情が湧き上がってきた。


 中に入り後悔したことは大した広さではなさそうだったのでこの森全体を把握するために一度ぐるりと周辺を回っておくべきだったと思ったことだった。


 しばらく奥に進んでいくとがさがさと音がしたと思って音のするほうへ目をやるとかなり伸びていた枯れた下草からぴよんと急に鹿が飛び跳ねてきて、大きい・・。その動物への第一感想だ。その動物は小道をふさぐように出てきて、それからゆっくりと道を横切り始めたのだった。


 私はがさがさと音がした時点で思わず腰にある短剣を確かめずにはいられなかったので、そのとき手は短剣を探していた。しかし慣れていないせいかすぐに探検を探し当てることはできずにしばらくの間、手は腰の横にある短剣をまさぐっていたのだった。


 短剣を探し当てると抜く手前で身構えてそのままの状態でいた。かなり驚いて心臓がバクバクし始めていた。探検といっても刃渡りは30センチくらいはあり、がっしりしていて、かなり雑な使い方をしても刃こぼれすらしないような感じのしっかりとした作りだった。


 そんなことを知らずに鹿がゆっくり歩き始めたのを確認するとホッとして手を短剣からはなしたのだった。しかしまた思い出したかのようにすぐに構えの姿勢をとった。


 鹿は胸の少し下ぐらいの体高があり、頭は私の顔と同じかやや低いぐらいの高さがあり子鹿だとは判断できずに大人の鹿かと思ったりもした。を初めて見る動物のため、かなりの威圧感があった。


 少し頭を巡らして考えてみてもわからなかったが角はなかったため、あれは雌鹿ではないかと考えてはいるが私の身長の胸あたりまで体高があり、雌鹿なのか角狩りにあった子供なのか正確にはわからなかった。


 しかし目の前を悠然と歩く鹿をよく見てみると、偶然出くわしたとは思えず、鹿のほうは明らかに何かしらを狙ってやってきたという感じだった。


 それは私にはどうもいたずらであるようにしか見えなかった。鹿にはあまり詳しくはないが鹿の目をよく見るとなんだか親し気な、いたずらっけのある目をしていた。


 その目を見た私は、こいつは人に慣れているなと直感が働いたのだった。


 腰を少し低めに構えたままの状態で鹿がそのまま通り抜けるのを待ってから先に進んだ。


「イエーイ」


 私はそう言いながらなぜかジャンプして遠慮しがちに叫んで顔は笑っていて喜んでもいた。


 まるで子供のようにちょっとした刺激でもかなり刺激的に思えて、とても楽しくなってきたのだった。

 

 安堵感もある。さあ、いっちょこい、そう心で盛り上がりながら足は踏ん張りの姿勢で片腕を曲げて力を入れて、やるぞの姿勢をしていた。


 明らかに調子に乗り始めていた。


 だがそれをいさめるものが頭の中にあり、調子に乗り始めるのを抑えていた。


 次は何があるんだろう、だけども恐怖心もあり手は腰の短剣を確認していた。


 止金具、革でできた、つかを固定するものでそれを外して中のさやから短剣をすらりと抜く。


 まるで今、作られたばかりのような刃の部分まで真新しいぼかしの入った銀色の短剣だった。


その短剣は鈍く光っている。


「きれい」


 思わず、その鈍く光る銀色の輝きに見惚れてしまった。


 私は剣や刀といったものを見たことがない。正確には刀身をじっくりと見たことがない。


 ゆえに物珍しさもあったかもしれない。


 短剣といってもセミロングの刀身は手のひらからひじくらいまでの長さの短剣であるため、格闘戦において、それなりに役に立つはず。あまりに小さいと心もとないために大きめの短剣を選んだのだった。自宅には長剣や片刃の刀もあり、それでも良いが、特に訓練しているわけではないので私に合いそうな手頃な短剣を選んだ。


片手で持っているその短剣を軽く振ってみる。いかにもな作りで刀身も厚みがあり、思っていたより軽く、柄の部分も革でできていて、太くて握りやすく、滑りにくいように斜めの刻みが入っていた。


 先に進んでいくと分かれ道があり、平道で木々がうっそうとはしてはいるが下草がほとんどなく誰かが手入れしているのではないかとおもうぐらいに周りの景色の見通しはよく、ところどころに日差しが差し込んでいる。


 二手に分かれた道まで行くと木造の矢印の看板の茶色の塗装が少し端が剥げた、堀文字を白でペイントした看板が立っていた。


 一つは展望台行き、もう一つは池と書いてあり、この看板を見たら少し間、どちらに行こうかと迷っていた。


 先に展望台にいきあとから池によってみるべきか、先に池によってから展望台によってみるべきか迷っていたが後者にして先に池に行くことにした。


 その道は少しずつ下りになっていて小道にたくさんの落ち葉が落ちているらしく滑るかと思って少しずつ小股で歩いて行こうとして、たまっている落ち葉に足をのせて体重を移動させると、その踏み心地はふわっとしていてあしがずぶずぶとのめりこんでいき、怖くなり足を一瞬引っ込めようかと思ったが底なしではないと考え直して再びおそるおそる体重をかけていくと足首くらいまで陥没してのめりこむのをやめたのだった。


 正直に言ってかなり怖かった。底なしの沼かと思うほどだった。かなり柔らかいスポンジのようだった


 最初のほうはかなり慎重に進んでいったがそうでもないと思いなおすと歩きは早くなったのだった。


 落ち葉がたまっていて滑るかと思ったがそうでもなくて、むき出しの湿った土の道よりは滑らないのではないかと思ったが、ただふかふかして歩きにくいことと走るのはもっとしにくいことが分かった。


 少し緩い下り坂であって、それでいて地面が湿っていても滑る心配がなさそうで、決めた目的地まで行けそうだった。


 ゆるい長い下りがなくなり平道に入ると曲がりくねる道がいくつかあり、そこを行くと池が真正面に見えてきて、水はかなり透明ではないかと思ったほど周りの景色に溶け込んでいた。


「きれいだー」


 ここでも感嘆の声をあげてしまった。


 普通、このようなところでは水は緑色に濁っているものばかり思っていた。 


 さらに道なりに進んでいくとほぼまっすぐだが池が眼前に現れた。


「うわ、やっぱりきれいだ」


 眼前に現れた池を見て透明度が高いことを確信した。


 池はそう六畳間が十個くらいは軽く入るだろうかという大きさで池の周りは30センチぐらいの石が池の縁にも岸壁にも沿って敷き詰められていて、岸壁は直角に石が入っていて、きれいに並んで積んであるため、ひとが作った池だと思わせるものがあった。池の周りだけはあまり落ち葉がなく、湿った冷たい土がむき出しになっていた。池の深さはかなり深いと思ったが、そこら辺から棒を持ってきてつついて測ってみるとだいたい膝ぐらいまでしかないことが分かってほっとしたがこの場所はそうであるだけであり、また実際に入ってみるとずぶずぶと奥に入っていってしまうかもしれないと考えて、安易には入らないことにした。今は何より寒い時期なので入りたいとも思わなかった。


 池の水は最初に見たとおりにとても澄んでいていかにも飲めそうな感じで、私は池のふちにまで行ってしゃがみ込み両手で水をすくってにおいを嗅いでみたのだった。水は森林の水という感じの澄んだ匂いだった。


 そして少し水を口に含んで味を確かめてみる。


 口に冷たい澄んだ水の味がしてなんだかまろやかな感じがした。おいしいと感じたのだった。


 少なくてもいつも飲んでいる水とは違うと感じさせるものがあった。周りをよく見渡すと池の周りは少し広く道が作られていて人が散歩できるようにしてあるようだった。おそらくここは池というより泉の湧き出るところなのかもしれない。そうならこの透明度も納得がいける。なら問題なく飲むことができる。でも、肝心の湧き水である証拠の元が見渡してもない。


 周りに何個か木造で茶色でぬられたベンチが不規則に配置されており人が手入れをしていることは明らかだった。ベンチも周りの景色に溶け込んでいるようだった。


 普通の池はもっと緑色をしていてとても人が入ったり飲んだりできるような感じではないことが多いがここは違った。


 周りはとても静かであり、鳥の鳴き声もたまに聞こえてくるぐらいでいたってしーんと静まり返っていて耳が痛くなって来るのだった。


 私はそこの池の周りの近くのベンチの一つに腰を落ち着かせると大きく息をして一度深呼吸をした。


 深呼吸をした後は目を閉じて耳をすませてみた。


 シーンと静まり返った池の周りに時折、鳥の声が響き渡る。


 しばらくこうしていたい。ずっとこうしていたいとの欲求がだんだんこみあげてくる。


 しかしいつまでもこうしているわけにはいかないと良心がささやく、私はそれに耳を傾けているがなかなか動きたくない。もう一つの気持ちは焦る一方ででもあと五分、あと五分で出ていこうと言い聞かせながらその静けさと眺めを堪能したのだった。


 また来ることはいつでもできる。


 ここは良い場所だと思うがベンチから立ち上がり先ほどおりて来ていた緩い坂を登り始める。


 目指しているのは展望台。そこから高く見える景色はいったいどんな景色だろう?


 昔の、親に連れられてきたかすかな記憶を思いだしながらふかふかした地面を上がっていくのだった。


 二手に分かれた道につくと最初に見た時と同じように方向を示す看板があり、そこから上に登っていく道を選択して木材で補強した土階段をを上がっていく。


 階段は結構急で幅は普通というべきかもしれないが、歩くのに一段一段がきつく感じられて、歩く一歩に自然と力が入っていく。そうすると靴が土を踏みしめているというのに土を踏みしめる音が少し地面に響いて驚いたのだった。ふつうは土の上を歩いていても音はしない。


 階段の土は湿ってはいたが滑ることはなく、落ち葉もほとんど落ちていなかった。


 誰かがここは先に掃除をしたのかもしれなかった。


 実際に掃除をしている人を見たことがないので何とも言えないが、池の方を見る限りはそう考えるのが妥当だった。


 



 


 


 

 


    


 









 


  



 


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