第五話 近づく暗躍
リリアの屋敷に居候することになった翌日の朝、ここは、屋敷の三階にある客室である。
ここにルーフェルトが使うようにと言われて寝ていた。
ベットでルーフェルトが目を覚ますと、ベットの上にリリアが腰掛けていた。
「はっ、吃驚した」
「ふっふっ、おはよう。ルーフェルト」
「おはよう。リリア。吃驚したよ」
「もう朝よ、今日は、ミスリアの街を案内しますね。それと、あなたの学生服も作らないといけないから作りに行きましょう」
「了解」
「朝食の用意ができているから、下まで降りてきて」と言ってリリアは、部屋を出た。
着替えをして下の居間に入ると、リリア、母リリー、妹リリスがテーブルに座っていた。
「おはよう御座います」とルーフェルトが言うと
三人が「おはよう」と挨拶した。
「ルーフェルト、まずは学園に行きましょう。学園のショップで制服を作りましょう」
「でも、リリア。僕、お金とかないよ」
「金銭的なことは、気にしないで。一緒に住むことになったのだから、家族みたいなものよ」と母リリーが言った。
「ありがとうございます」
「学園で用事を済ませたら、街を案内しますね」とリリアは楽しそうに話していた。
この二人の様子を見ていたリリスは、「ねぇ、お母様。お姉様、嬉しそうだね。あんな、お姉様の顔、始めて見た」
「そうねぇ。私もリリアの笑顔を見るのは久しぶりよ。リリス、少し、耳をかして」とリリーは、リリスの耳に顔を近づけた。
「実はね。リリアとルーフェルトをくっつけたいの。婚約させたいの。だから、協力してくれる」
「わかった。お母様」
「でも、お父様は乗り気ではないから、お父様が連れてくる婚約者候補は排除しましょうね」
「わかった。お母様、任せて」と二人は、協力体制をひいた。
朝食も終わり、リリアとルーフェルトは部屋に戻って出かける用意をしていた。
ルーフェルトは、準備も終わり窓から外を見ていたとき、コンコンとドアを叩く音がした。
「ルーフェルト、準備はできたかしら」とリリアが声をかけてきた。
「あぁ、できているよ」と返事をした。
「ガチャ」とドアが開いて、リリアが入ってきた。
「さぁ、行きましょう」とリリアは話し、二人で屋敷を出た。
「ルーフェルト、学園までは歩いて行っているのよ。十分程度で学園に着くの」とリリアが話していると少し離れて隠れながらリリスがつけてきた。
ルーフェルトは、リリスがきたなと気が付いたが「少し、ほっておこう」と思った。
リリアは、今日は何処へ行こうかと話していると前の方から、「リリアぁ」と呼ぶ声が聞こえた。
呼んでいるのは、親友のアリアだった。アリアは、走ってリリアのところにきた。
「おはよう。リリア」
「おはよう、アリア。あれ、今日はどうしたの」
「ちょっと、学園に用があってね」
「そうなの」
アリアは、ルーフェルトのことを見て「ふぅん」とうなずいた。
「なによ」
「リリアが男の子と一緒にいるなんてね。この子は」とアリアは聞くとリリアは「この人は、ルーフェルト」と紹介した。
「ねぇ、リリア、ルーフェルトとはどういう関係」とアリアが聞くとリリアは、今までの経緯を話した。
「なるほど、ルーフェルト、私の親友を助けてくれてありがとう」とアリアは、お礼を言った。
「いいえ。当たり前のことをしただけだよ」
「リリア、なんかいい子ねぇ」
「そうでしょう」
「だけど、冷酷の女神がねぇ」
「なによ」とリリアは、顔を赤らめて返事をした。
「まぁ、邪魔しちゃいけないから先に行くね。じゃぁね。リリア、ルーフェルト」と言って走って行った。
「もう、そんなじゃないってば」とリリアは大声で言った。
「どういうこと」とルーフェルトが話すとリリアは「なんでもないわ」と赤い顔で話した。
学園に着くと、「ここが私が通っている魔法剣士学園よ」とリリアは話した。
学園の入口に入ると真っ直ぐな通路に両脇には、芝生と木が植えてあり、綺麗に整備されている。
通路の先には、大きい校舎があり、校舎の横には広々とした校庭があった。
「凄く、綺麗なところだね」とルーフェルトが言うと「そうね。学園は綺麗だと思う」とリリアは答えた。
校舎に入ると「ルーフェルト、まずショップに行きます。あなたの制服を作らないと」とリリアは話した。
「了解」とルーフェルトは答えた。
「今は、学園は春休みだから生徒は少ないの。部活とか補習とかある人が学園に来ているだけだから」
「そんなんだ」
「こっちよ。ルーフェルト」とショップに入った。
「あの、この子の制服を作りたいのですが、お願いできますか」と定員に話した。
定員は、「はい。承ります。寸法を測りますので、こちらへ」と話した。
寸法の測りも終わると、定員は「制服は三日後には出来ます」と話した。
リリアは「お願いします」と声をかけて、二人はショップを出た。
リリアは、早く街へ出掛けたくて、「学園の中は今度、案内するね」と言って学園を後にした。
しばらく、歩くと大きい広場に出た。
「ここは、バークレン中央広場よ、この街の中心にある広場なの。気持ちいいでしょう」とリリアは説明した。
ここは、一面、芝生が植えてあり、所々に花壇と木があり、とても綺麗に整備されている広場であった。
「あっ、リリスがいる」とリリアが気が付いた。
この広場は、隠れるところがないため、リリスが付けてきたのがバレてしまった。
「家からずっと、付けてきたよ」とルーフェルトが話すと「教えてよ。もう」とリリアは言った。
「まぁまぁ。リリスぅ」とルーフェルトが叫んで、リリスを呼び出した。
リリスは、ゆっくり近寄ってきた。
「お姉様、バレていたの」
「当然です。さぁ、繁華街の方に行きましょう」
「一緒に行ってもいいの」
「仕方がないわね」と繁華街のほうへ三人は歩き出した。
繁華街に着くと街は、賑わっていた。
だが、繁華街に入るとルーフェルトは、異様な気を感じた。
「なんだ、異様な魔族がいる。この前、リリアを襲ったやつらと同じ感じがする奴らだ」とルーフェルトは感じた。
「だが、今は襲ってきそうもないな。また、リリアを狙っているのか…、しばらく泳がそう。それで、あとで調査してみるかな」と思っていた。
「ねぇ、お姉様、お腹空いた。どっか入ろうよ」
「仕方がないわね。もうすぐ、お昼だから入ろうか」
「確か、この近くに美味しいパスタ屋さんがあるの。あ、ここだ」と言って、三人は店に入った。
店の中に入ると、エール族らしい男がすれ違った。
ルーフェルトと目が合うと「あぁ、ルーフェルト様ぁ」と大声で叫びそうになった。
ルーフェルトは、すかさず男の口を塞ぎ「黙って」と言った。
「どうしたのルーフェルト」
「なんでもない。リリア」
「知り合い」
「あぁ、そう。昔、一緒に修行した仲だ。ちょっと、話しをするから先に入ってて」
「わかったわ、早く来てね」
「わかった」と言って、ルーフェルトは、店の外にあるベンチに男と一緒に座った。
「ラフェル、なんで、お前がここにいる」
「はい。最近、エール族の人が魔族化されていると情報が入り、調査せよとカーラ様から命令がくだりました。それで、ここにいます」
「カーラの命令」
「はい、出どころは、この街のようなので調査していました」
「なるほど、そうか、先日、僕も魔族化された人間に襲われた」
「そうでしたか」
「とにかく、あとで合流しよう。それと、僕がこの街にいることは、内緒だぞ」
「えぇ、でも、ルーフェルト様、風の聖剣士達があなた様を探していましたよ。カーラ様がオルフェ様達に探すように命令していましたから」
「そうか、でも、黙っていてくれ」
「わかりました。ルーフェルト様。カーラ様には命令されていないから黙っていますよ」
「じゃ、夕方、ここで、また、会おう」
「はい」と言って、ラフェルはスッと消えた。
ルーフェルトは店に入って、リリアのいるテーブルに行き座った。
「お―そ―い。お腹空いたんだから」とリリスが怒った顔で言った。
「ごめん、ごめん。つい懐かしくて話し込んでしまった」
「ランチで良いかしら」とリリアは、定員を呼んで頼んだ。
「ねぇ、ルーフェルト、さっきの人だけど、紋章がついていた剣を持っていたのを見たの。もしかして、聖剣士なの」
「いや、聖剣士候補生だよ」
「え―、本当、でも聖剣士候補生なんて凄いね」
「彼は、確かに強いと思うけど、少し抜けているところがあるから、未だに聖剣士候補生なんだよ」
「そうなの」
「お姉様、聖剣士ってなに」
「聖剣士はね、最強の魔法剣士達なの。魔法剣士学園に通う生徒達の憧れね」
「へ―そうなんだ。聖剣士さんは何人いるの」とリリスが聞く
「わからないけど、ルーフェルトは知っている」
「聖剣士は、魔法、剣術に優れた魔法剣士の十二名が選ばれるんだ。この十二名が最強で十二剣将と呼ばれているよ」
「聖剣士は、風、火、水、地、光のそれぞれ聖剣士がいるんだよ」
「へ―、じゃ、六十人いると言うことなの」
「いや、十二剣将を統率している聖剣士長がいるんだ。風の聖剣士長は、リリアも知っている剣聖カーラだよ」
「へ―、そうなの」
「たとえば、火の聖剣士長は」とリリアが聞いた。
「知っているかもしれないけど、武神ライラだよ。二人は、風、火の魔法種を使う最強の精霊魔法士だよ」
「武神ライラは、知っています。伝説になっていますから。でも、流石ルーフェルトね。詳しいわ」
「そうか」
「あ、まさか、あなたも聖剣士なの」
「僕は、違うよ」
「なんだ、残念。ルーフェルトは強いのにね」と話していると頼んだランチが来て話しは中断した。
三人は、楽しく話をしながら食事をして店を出た。
繁華街を歩いていると、人が集っている店があった。
「リリア、あの店は」とルーフェルトが聞いた。
「あの店は、宝物とか、発掘したものとかを売買する店ね。買う人と売る人が直接交渉して売買もできるの。店は、手数料を取るけどね」
「なるほど、これ、売れるかな」と赤い石を出した。
「これ、宝石の原石じゃない」
「こんな石、僕がいたところにいっぱい落ちていたよ」
「本当にお兄ちゃん、売ってみようよ」とリリスが言って店に行った。
ルーフェルトが「これ、売れるかな」と言うと店の定員が見て吃驚した。
「これは、ルビーの原石ではないか。しかも、大きい。これは、当店で買い取らせていただいても宜しいですか」と定員が言った。
「いいですよ」とルーフェルトは言って、かなり、高額で売れてしまった。
「このお金、リリーさんに」と言って半分をリリアに渡した。
ルーフェルトは、「ラッキー」と思い小遣いができて喜んでいた。
「これは、いいや。たまに故郷に帰って、この宝石を取りに行こう」とルーフェルトは思った。
そろそろ、帰ろうかと話になり、三人は屋敷に帰った。
そして、ルーフェルトは一旦帰ってから、夕方になったころに魔法を使い空に飛んだ。先程の店に行くためだ。
店に着くと、そこには、ラフェルが待っていた。
「ラフェル、なにかわかった」と聞くと、「あ、ルーフェルト様、あまり、わかっていません。ただ、人が魔族化するには、薬を使っているようです。その薬を誰がばらまいているのかわからないのです」
「そうか、じゃ、調査を続けてくれ。僕も協力するよ。この前、襲われたからね」
「ありがとうございます。ルーフェルト様が協力してくれるのなら心強いです」
「僕は、フリーデン家にいるから何かあったら来てくれ。フリーデン家は有名みたいだから誰がに聞けば場所はわかると思う」
「はい、わかりました。何かわかりましたら訪問させて頂きます」と話し別れたのだった。
ルーフェルトは思った。
「これは、ほっとけない」と