4.剛腕、鉄壁の魔法剣士。
戦闘パート、その1です。
――翌日。
ボクとアルテミスは、戦いの場に赴いた。
アレックスさんは先に到着しており、手ごろな岩に腰掛けて空を見上げている。そしてこちらの到着に気付くと、豪快に笑ってからこう言うのだった。
「待っていたぞ、クラウド! 今日は全力で頼む!!」
歩み寄り、友好的に手を取ってくる。
無骨なその相手の手に、思わず息を呑んでしまう。
しかし、ここまできたら引き下がるわけにはいかなかった。元々は望んでいなかった対決とはいえ、負けていい理由にはならないのだから。
「はい、よろしくお願いします!」
「うむ!」
ボクの返事に満足したらしい。
アレックスさんは、大きく頷くと少しばかり距離を取った。
「では、さっそく始めようではないか!」
そして、おもむろに腰元の剣を引き抜く。
それはボクの持っている剣よりもいくらか大きく、しかし身体の大きな彼にとってはちょうど良い、そのように思われた。
構える姿からは威圧感がにじみ出ており、見るからに強敵。
剣術が専門ではないボクにとっては、それだけで十二分に脅威だった。
「準備は、いいか?」
「はい……!」
彼の言葉に、こちらも剣を引き抜く。
アルテミスは少し離れた位置から、ボクたちを見守っている。
彼女は今回の対決の見届け人。短く息をつくと、大きく声を張り上げた。
「では、両者位置について――」
澄んだ空気に、それが響き渡る。
「――始め!!」
そうして、ボクとアレックスさんの対決は始まった。
◆
「く、重い……!」
だが、やはり力の上では差があった。
技術の面では思いの外、差を感じられない。
しかし問題は、筋力といった体力面。あちらが前衛特化であるのに対して、ボクは元より後衛の自衛手段としての剣術だ。
そうなると、ここぞの場面での一撃に差が出る。
――ガツン、と剣がぶつかり合う。
相手の攻撃の軌道を予測して、どうにかいなすが――紙一重だ。
いつその切っ先が、ボクの身体を切り裂くか分からない。
まさに、危機一髪の連続だった。
「ふむ、なかなかやるな……!」
「ありがとう、ございます!」
だが、それはこちらに限った話ではない。
アレックスさんの攻撃は、重い。だが同時に、隙が多いのだ。
数ミリメイルの剣を躱せば、次はこちらの攻撃になる。彼にはない素早さを頼りにして、ボクは一気に肉薄し、懐に飛び込んだ。
そして、思い切り剣を振るう。
しかし――。
「甘いぞ、クラウド!!」
「……!」
彼の纏う防具は、頑丈の域を超えているように思われた。
おそらくは、自身の属性魔法によるもの。彼の魔法属性は氷――すなわち、高密度の氷を生み出すことで鉄の鎧を上回っているのだ。
魔法で生み出したそれらは、一部例外を除いて存在し続ける。
つまり、彼の守りは鉄ではないが――まさしく鉄壁だった。
「力の限り叩いても、微かに削るのが精いっぱい。しかも、こうしている間にも氷の鎧は修復されていく……」
「ほほう、理解が早いな」
「一応、そういったことにも精通していますから」
後方に飛び退り、体勢を整えながら分析する。
アレックスさんは満足げに笑い、それを受けてボクも自然と微笑んだ。
「しかし、いつまでもこのまま、というのはダメだな」
「そう、ですね」
だが、すぐに彼はそう言う。
ボクも頷いて、改めて剣を構え直した。
「では、ここで終わらせよう……!」
その直後だ。
アレックスさんは、意識を集中させてから一気に距離を詰めてくる。
ボクは即座に回避しようと思い、足に力を込めた。だけど、すぐに気づく。
「やっぱり、こうなるよね……!」
足が――氷によって拘束されていた。
きっとこれが、魔法剣士としてアレックスさんの戦法なのだろう。相手の身動きを封じて、その強力な一撃を確実に叩き込む。
ボクは奥歯を噛みしめ、衝撃に備えた。
そして――。
「終わりだ、クラウド……!!」
アレックスさん渾身の一撃が、大地に激しく叩き割った。
土煙が舞い上がる。
この一撃は間違いない。
喰らった者を確実に、再起不能にさせるものだった。




