1.エルフの掟、剣士との出会い。
ここから第1章。
キングスライムとの一件から、数日が経過した。
ボクとアルテミスは正式にパーティーを組むことになり、今日も今日とてギルドで待ち合わせをしている。ボンヤリと談話室の椅子に腰かけ、窓の外を眺めた。
「それにしても、ビックリしたな。アルテミスがまさか、女の子だったなんて」
そうしていると、思い返したのは先日の出来事について。
スライムとの一戦の後のことだった。
◆
手を差し伸べると、アルテミスは少し呆けていた。
身に着けていたローブもはだけていて、綺麗な顔や肌が露わになっている。ボクは意図せずそれを観察してしまい、あることに気付いた。
アルテミスの服は薄い生地らしく、スライムの体液で透けていること。
そして――。
「なっ……!?」
胸部に僅かながら、膨らみがあることに。
よくよく見れば身体つきも、どこか線が細く柔らかに思えた。ボクはそこまで考えてから、とっさに目を背ける。
すると彼女――アルテミスは、こう言った。
「あぁ、気にしなくても大丈夫です」
「気にしなくても大丈夫、って!?」
あまりに淡々とした口ぶりに、ボクは悲鳴を上げる。
しかしそんなこちらの様子など知らない風に、アルテミスは身を寄せてきた。そしてその小さな手をボクの手に重ねて、片膝をつくのだ。
驚いていると、彼女はこう口にする。
「私はこれから、貴方に忠義を誓います。命を助けられた者として、エルフの掟に従いましょう」――と。
あまりに恭しい所作。
今度は、ボクが呆けるしかなかった。
◆
エルフの掟、というのが何かは分からなかったけれども。
あの日以降アルテミスは、ボクのことを主だと呼び、付き従うように振舞っていた。悪目立ちするからやめてほしい、とは思うのだけど……。
「まぁ、そのうちやめるかな」
急を要することでもないので、しばらくは放置で良いだろう。
そう考えて、ボクは一つ伸びをした。
その時だ。
「おはようございます、クラウド様」
「あ、おはよう。アルテミス」
ちょうど、仲間の少女が現れたのは。
「呼び捨てで良いって、言ったのに……」
「いいえ。これはエルフの掟に従っているので、お気になさらず」
「そ、そうなんだ」
苦笑いしつつ答えると、アルテミスは小さく頷いた。
「では、今日はいかがいたしましょう」
そして、今日の予定について訊いてくる。
ボクは気持ちを切り替えて考えた。
「そうだなぁ。普通にクエストを受けても良いと、思うんだけど……」
魔法使い二人、というのも心許なく思える今日この頃。
ボクはメンバー募集を提言しようとした。
その時である。
「いいから、クラウドという青年を出せ!」
「へ……?」
なにやら、ボクの名前を呼ぶ声が聞こえたのは。
何事かと思って見てみると、ギルドの受付に一人の男性剣士がいた。
そして、腕を組んでこう声を張り上げる。
「世にも珍しい雷剣の使い手と聞いたぞ、ぜひ手合わせ願いたい!」――と。
無骨な印象を受けるその人は、血気盛んに目を輝かせた。
その様子を見て、ボクたちは首を傾げる。
それが、氷剣の使い手――アレックスさんとの出会いだった。
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