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プロローグ 王宮魔導師、クビとなる。








 この世界の魔法には、各々に属性がある。

 ボクが使うのは、古来より受け継がれてきた【雲属性】魔法。それを極め、ついには王宮に仕える魔導師になれた。

 これからは、この力を王国発展のために使っていくのだ。



 そう、思っていた。





「――クラウド・ニーベリウス。お前は、今日付けでクビだ!」

「え、そんな……!?」



 この時、までは。


 ボクは王宮魔導師としての上官――ダニエルに呼び出され、そう宣告を受けた。着任してから間もなく一年、という頃合いのことだった。

 あまりの出来事に、絶句する。



「そんな、どうして……!?」



 だからボクは、とっさに言葉が出てこない。

 そんなこちらに向かって、ダニエルは冷笑を浮かべながらこう言った。



「時代遅れなんだよ、お前の使っている雲属性魔法は」――と。



 時代遅れ、だから不要だと。


 たしかに雲属性魔法を使う者は、ボク以外にいない。

 それを受け継いだ唯一の家系として爵位を与えられているが、昔から後ろ指をさされてきた。役立たずの、穀潰しの魔法家系だ、と。

 それでも、学園を卒業してここに着任できた。


 やっと認められた。

 そう、思っていたのに……。



「曲がりなりにも爵位があるから、贔屓で仕事にありつけただろうがな。そこから先、お前に道をやるわけにはいかないんだよ」

「そ、そんな……!」

「そういうわけだ。不要な存在は、すぐに消えてくれ」



 容赦のない、攻撃的な言葉。

 ボクはうな垂れるしかなかった。



 クラウド・ニーベリウス。

 爵位は男爵――しかしその日、居場所を失ったのだった。







「どうすれば、良いんだろう……」



 街を歩きながら、ボクは途方に暮れていた。

 王宮魔導師をクビになって、職を失ってしまった。

 いや、それだけではない。王宮魔導師でなくなるということは、爵位の存続すら危うい、ということにもなるのだ。

 男爵は下級の爵位であるため、入れ替わりが激しい。



 きっと、遠くない未来。

 細く長く続いたニーベリウス家は、取り潰しになるだろう。



「そうなると、生活ができなくなるんだよなぁ……」



 没落、というほど高みにいたわけでもないけど。

 今後の生活を考えると、どうにかして日銭を稼がなければならなかった。



「でも、王宮をクビになった――なんて」



 不名誉な烙印が、再就職の邪魔になる。

 将来が約束された場所を追い出されたのだ。ボク自身が使い物にならない、という証明以外の何物でもなかった。



「だとすると、王都を離れるしかないのかな……」



 ぐったりと、うな垂れる。

 ここまできたら辺境の村で、細々と自給自足するしかないのかもしれない。

 肩書きに左右されない場所ならきっと、再出発するに問題はないように思われた。そう、誰もボクの過去を気にしないような、そんな場所なら――。



「ん、それなら……」



 そこまで考えて、ふと思い当たる場所があった。

 それは――。



「冒険者、ギルド……!」



 自由を生業とする人々の集う場所。

 そこでなら、もしかするかもしれなかった。



「貴族の誇りなんて、元からないし……」



 ボクはそう口にしてから。

 ほぼ迷うことなく、ギルドへと向かうのだった。







 ――そんなわけで、早速ダンジョンである。


 名前だけでギルドカードを発行して。

 ボクはひとまず、王都の外れにあるダンジョンに潜った。



「さて、それじゃ――」



 そして、現れた魔物。

 学園時代に知識だけ得ていたそれ――レッドドラゴンに向かって、雲属性魔法を応用した攻撃を放った。

 炎属性であるドラゴンの弱点は、ズバリ水属性。



「集え、すべての命の源よ!」



 大気中の水分を集結させることによって、相手は一気に弱体化した……!



「よし、これなら……!」



 そこまでいけば、あとはトドメを刺すだけ。

 ボクは学園以来握っていなかった剣を引き抜いて、思い切りドラゴンを斬り付けた。断末魔を上げ、魔物は魔素へと還っていく。

 地味な戦いだけど、自分にできることでドラゴンを倒せるのは分かった。



 あとは、この魔素の結晶がどれだけの金になるかだけ。



「ひとまず、生活はできそうかな……?」



 とりあえず、あと四体のドラゴンを倒して。

 ボクはダンジョンを後にした。でも、気付かなかった。






「へぇ、面白い魔法使う奴がいるじゃないか」






 地味な戦いを繰り広げたボク。

 そんなボクに、興味を持った人物がいたことに……。



 


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