蜘蛛と蜘蛛、そして我々 Ⅵ
うぉふうぉふ?(待ってた?)
うぉふうぉふ(今回は遂に例のヒト登場)
うぉふ(あと)
[今回は結構なグロテスクで残虐な描写があるよ]
[ただ、動物が痛いことされるのが嫌いな方はそこだけ飛ばしても良いかと]
うぉふうぉふ(次回はちょっとだけページで遊ぶ)
うぉふ(お楽しみに)
つおいつおい蜘蛛さん、真生多脚蜘蛛。僕等は皆して絶望してました。いや突然炎に耐性って何?あと滅茶苦茶硬いんやけど?
ということで。
「虚角深淵対消滅線、照射!」
「ギチチチチチチ」
じゅぱぁん!と解き放った虚角深淵対消滅線。消えろ消えろそして帰ってくんな生き返んな治すな馬鹿!しかしアシテラグモは可愛くじゃんぷして避ける。ああもう何か知らんけど動きに愛嬌が加わった!グレードアップかダウンかは知らんがお前……いや、お前……!
さてさて。どうすっかなー。
近寄ってきたわふをもちもちと弄る。ああもふもふが泥だらけに……。そしててるるがぽつりと呟いた。その横顔は真剣である。
「とりあえずファンブルさ、ボクが脚を留めるからカブトビームよろちこ」
「え?……アッ,エエハイショーチシマッタ」
「うぃ」
そしててるるは飛び出して行った。その死を恐れずに駆ける姿は正しくニンジャであった!いや全然そんなことはないけど。
たたたっ、と軽快に駆けていくてるる。その走りに思わず脚を止めて見入るアシテラグモ。しかしてるるはそれに不敵な笑みで返した!アイエエエ……。
「イヤーッ!」
跳ねるてるるはアシテラグモの脚に向かい、そこに錬金=カラテを叩き込む。融合し固められた脚にアシテラグモは反撃の多脚=カラテを放つが、てるるは横目でチラリと見ただけで回避をしない!間もなく殺到した脚はてるるを貫いた!ウカツ!
「イヤーッ!」
がしかし!無事である!おお、ブッダ!この解説の仕方楽しいな。何十年か前の紙媒体の娯楽製品だっけか、それのナレーション。タノシイ!エジャナイザ!うん、戻そう。
殴られたてるるは脚に更に錬金術を施し、盾と成していた。すげえすげえ。1種の塹壕のように隆起した蛋白質から姿を現したてるるは、襲ってきた脚も纏めて1つとし、近くの木と繋ぐ。あら。
そして更に襲ってくる脚を纏め、地面に繋ぎ留めた。蹴りを入れて地面との接着面を増やし、てるるは叫ぶ。
「ファンブォウ!」
良かろう!纏めて凪ぎ払う!
「Wasshoi!」
「グワーッ!サヨナラ!」
虚角深淵対消滅線はアシテラグモを貫き、その身体の大部分を穿った。このカブトビームの素晴らしい点は、消し去るから回復に時間がかかるというトコだろう。普通の斬擊だとか火炎放射だとかは細胞が残ってるからその負傷分の蛋白質を負傷部分から補充できる。でもカブトビームは消し去るからその分の蛋白質は蒸発。つおい。
でもまあそれは現実の話だね。
「ギチチチチチ!―――――――キチチチチチ!」
白かった体色は溶かされて紫の毒々しいモノに変わる。あーっと、毒かー?事前にてるるが目にしていた通りに眼球を1対消費し、アップグレードしたであろうアシテラグモが吼える。蜘蛛が吠えるんじゃねぇ!
「おー、おこなのかな?」
「おかえり」
アオハルからてるるが這い出てくる。無事爆散したらしい。手で望遠鏡を作ってほぇーと感心している。お疲れちゃーん。
で、新たなアシテラグモの紫形態なんだけど……。ちょーっと怖いねー。何がって?
「金属光沢が出てるのよこんチクショォがざっけんじゃないわよ!この馬鹿!蜘蛛!ワシャワシャ!」
「ファンブルちょっと落ち着け」
カサカサと更に軽快なステップで迫ってくるアシテラグモ。正直動きはGに近い。でもアシテラグモっつーんだからアシダカグモがベースなんだろうな……Gより早いとかいう絶望。単純に敵に回ったら強い奴だなアシダカ軍曹。
てるるがぺちっとキングワーム爆弾を投げる。ほれほれおいちつぉーなお団子だよぉー?
「キチチ」
「喰った!」
「キチチー?」
「な、何ィーーッ!?効いてないだと!何処かのクソカブトとは違う!?」
「おい馬鹿外見的にラスボス気味だったけどアシテラグモにしたらクソ雑魚の赤銅触手冥皇蟲さんの話はやめろ!」
てるるが食べた間違えた、投げたキングワーム爆弾はアシテラグモに美味しく頂かれた。やめろよそういうの、普通なら体内からじわじわと炙り殺されるのが生き物じゃろ!
でも分かったわ、アシテラグモさんは外見からしてもサイボーグなんだな。理解したわ、なら体内焼かれても無事なんだわ。
……つまりは全身が機械に置換されていると?
「負けイベじゃろこれ」
「弱音を吐くんじゃあない!我々の誇り高き生き様、あの蜘蛛さんに見せ付けてやろうじゃあないか!」
「膝震えてんぞてるる」
「武者震い!」
「顔色悪いぞ」
「トイレ!」
「馬鹿言え」
冗談に本音を織り込んでてるると戯れる。勿論敵前だし絶賛脚パンチ中である。ちなみに怪我しないのかと言えば、触手で受け流したりキングワーム爆弾で吹き飛ばしたりしているので実質無傷。ほら肉さえあれば無限再生するから触手。ええい鬱陶しいわ!ぶっ飛べ蜘蛛カス!
ぬー、どうしたもんかねぇ。僕等の攻撃を幾ら受けても全く気にせずに攻撃を続けてくるアシテラグモ。もうこれは撤退しかないのかしらねぇ?
と、そこでわふ達従魔組が集結。殿を僕とわふ、まだ実戦経験の少ない虫娘3人を挟んでてるるが先頭、という構図で一時退却することにした。いやーだって無理だもん。もうちょい頑張りたいけど、決定打があと2つ……ないじゃろ。
アシテラグモが甲高く鳴き、僕等へと近付いてくる。あーっと、後ろのかわい子ちゃん達は逃がしてあげなさい蜘蛛さん。先頭のかわい子ちゃんはお食べください。おいちいよ!
「行くぞわふ!食い止めようぜ!」
「うぉふ!」
一先ずアオハルをてるるに収納してもらって、それから皆で逃げてく。プランはそういった所だね。よし。
「そんじゃあお先!」
「おう!」
てるるが駆けていく。うん、これで大丈夫だね。あとは殿としての役割をしっかりと―――――――
もしかしたら、一瞬だけ気が緩んだのかもしれない。その隙を見逃す敵ではなかった。
「キチチ」
ひと束に束ねられた脚で、目の前にいたアシテラグモが殴り付けてくる。必死でガードしても多分ダメージを負っちゃう、そう思って転がった。
でも、真生多脚蜘蛛の脚の量ですぐにそこも突きが襲う。やめてやめて!
そして、その時だった。
「ぅぶぉふぁ……ひゅっ」
獣の悲鳴が聞こえた。
視界を飛ぶのは見覚えのあるもふもふした毛皮。泥で汚れており、見事な毛並みは見るも耐えない様子だ。そして今、それは紅く染められていた。
「わっ、わふ!?」
「ぅぉ……」
この『ふぁわわ』に入った時からずっと一緒だったわふ。その身体に、大きく孔があった。
口から紅くなった泡を吹き出し、焦点も合わずに喘ぐわふ。ゆっくりと腹を擦れば、幽かな声で返してくる。しかし、弱々しい。
「ぅ……」
「大丈夫か?痛い?大丈夫、一緒にいるから」
「……ぁ、ぅ」
アシテラグモは興味深そうにわふを見ている。頭をぽんぽんと軽く撫で、ぎゅっと抱き締めると、辛い筈なのに嬉しそうに、しかし苦しそうに応えてくれる。
正直、涙が出そうだ。
どすっ
肉が舞う。可愛く立っていた尻尾が深紅に染まる。肉片が顔に当たる。遺された上半身で、獣は息を吐き肉を吐く。白目を剥いて命が消えれば、軽くなった身体はだらりと垂れた。
きちちち、きちちち。
硝子を引っ掻くような騒音をちらす目の前のきょたいは、僕のまえの毛皮のかはん身を引きちぎってなげた。
あえ?
あ。
「あああ、ああ……あ、あ……?あ――――」
『規定値を超えた喪失感を認識』
『疑似虚骸、発動します』
【!Caution! 閲覧権限が達していません】
頭が痛い。
目の前が真っ暗になってからの記憶がない。どーなってんだ?つーか、え?ええ、何?
ゆっくりと起きてぐるりと辺りを見渡すが、さっきまでいたトコとは全く違う。というか何処だよ。記憶削除か何かで全く以て理解が追いつかにゃんにゃん。
すると、脳内に直接声がする。
『およ、起きた?』
そこはファミなんとかくださいじゃなくて?まあ知らない人も多いっちゃ多いけど、21世紀前半で結構流行ったんだよねそのフレーズ。まあそりゃ今はどーだってええんや。いや今めっちゃ現実逃避してるけどこの脳内に直接ってアナタかなりアカンですよ?人外確定やん。
「どっどどどどどどどつぃらすまて?」
『焦りすぎ』
妙に軽い謎の声が窘めてくる。アッハイ。いやだって起きたらこうなってんじゃけぇ、焦るのも無理無いと思わへんかえ?さっきから脳内で色々と変換が怪しい。たそけてたそけて脳が死んだる。
1人でテンパってると、謎の声が急かす。
『なあなあ、そんな1人でつらたんじゃないの?おいでよ邪神の森』
「いや軽すぎかて。それと邪神の森って何よ」
『んー?知りたい?会って話そう、何も遠い訳じゃないし。あ、でもボク動けないからそっちから来てほしいな?』
軽すぎて水に浮くんじゃねぇのってぐらいの口調で急かしてくる謎の声、改め邪神の声。いやこれSAN値大丈夫?直接じゃあないにしろ、邪神と会話してるんだが?
あと、この邪神……ボクって。
『お?何々?ふむふむボクをてるるクンと間違えてるのかなー?』
「おい気軽に心を読むな」
『きゃーこわーい消されちゃうー』
「消さない消さない……ってかどこまで知ってるの?」
よっこら小学生!と立ち上がってぺたぺた歩き始めたが、この邪神心を読めるらしい。何なんハイスペック。そして僕等の『ふぁわわ』の中での行動も知ってるようだ。
『ボクが知ってるのはねー……そう、全て!』
「アッハイ」
『嘘だけど』
「一瞬信じかけたわ損害賠償しろや損害賠償」
『世界の半分をやろう』
「いらん」
『えー。あ、もうちょいで左ね』
なかなかにノリの良い邪神である。ノリの良い人は好きよ。いや人じゃねぇな?
周りには何も無い訳ではないのだが、あるものと言えば星空と月のような地面にあるクレーターぐらいだ。いやー荒野っつーか砂漠っつーか。どっかで聞いたけど、砂の砂漠は岩の砂漠より多いんだとか?100年ぐらい前は違ったみたいだけど。オアシスも砂漠に呑まれたりしたみたいだからねー、自然は怖いねー。
他愛も無い所ではなく無さすぎるの部類に入る話をしていると、大きな柱が見えてきた。その上方では分岐があって……あー、十字架。いやもしかしなくても邪神封じられてんじゃん。
十字架の前に立つと、そこには鎖がぐるっぐるに巻き付けてあった。封印分かりやすいな?そして漆黒の十字架は青白く光ったりぶれたり透けたり崩れたりしており、その度に鎖が脈動していた。おい解放されんぞ!ちゃんと封印しとけ!
『はいはーい。後でね』
へ?何て?え、もしかすると自分でこの封印を自分にしてたり……?えっ、あっ、察した。
『えっとまずはこの楔を取って』
ばきんっ!
『鎖は断つ!』
じゃらららららら!
『そんでこの柱をこうして』
ごごごごご!
『そんでこう!』
さらさらさら……
「復活!」
「いや気軽に復活すんなよ」
何とも荘厳で厳重(?)で謎の塊だった封印の十字架がぼろぼろと崩れてしまった。おい!大丈夫なんか!?大丈夫じゃないよな!?勿論邪神さんは無事だろうから心配なのは世界の方だよ!
「だぃじょびだじょーぶぃ」
「相変わらず軽い軽い」
衝撃の連続でなんか麻痺しつつある感覚がする。まあそれは良いんだ。問題はこの邪神の外見だよ。
「およよ、それはボクがやるよ?」
「えぇ……?」
なんか自分の描写自分でやるって言い始めたんだが?何この邪神、ゲームマスターか?
……ゲームマスター?あー……なんか引っ掛かった。あれ?
ツンツンと腹を突く邪神。慌ててそちらを見るとほっぺたを膨らませてぶーたれ気味であった。アッハイゴメンナサイ。
「良いっすかぁー?」
「どうぞ」
「へい!じゃあいくよー?
『深紅い髪に編んだ幾本ものおさげが映えるその邪神の双眼は、革製の目隠しで隠れ口元のみが覗いている。黒と灰で統一された衣服はその妖艶な魅力をより強くしており、正しく可愛いと美しいの両立である。背を覆う天女の羽衣は独りでに纏われ、荘厳たる邪神の証となっている。その服とジャストマッチする漆黒の翼は格好いいこと限りがない。その可憐なカワイイの権化を見た矮小な人間は、本能的にボクを畏れるだろう。そして敬えカワイイ!って言えちやほやして』
どうじゃ!」
「どうじゃもこうも無いよな?」
「酷いぞ酷いぞ!」
邪神というよりかはじゃしんである。何かなんちゃって邪神って感じがな?分かってくれるかなぁ?
くるりんと回って邪神は言い放つ。
「いやぁいやぁ名乗り忘れてたね!自己紹介もしよーか!……我が名はRerzoviam、虚を司る邪神である。さあ!崇めろ讃えろ讚美しろ!」
「わーおすごぉいさんちへっちゃったぁ」
「成る程宣戦布告だね?」
「SAN値ピンチなんでやめてください」
邪神、Rerzoviam……ふぇー、わっかんねぇな?れ、れ、レトリア?わんもあわんもあ?全く、言いにくい!もっと簡単な名前にしろ!
「あー、はいはーい。邪神の名前って難しいよね?はいせーの、Rerzoviamちゃん!」
「レルゾヴォアン!」
「もうちょいもうちょい」
「レイテ沖海戦!」
「ベクトルが急におかしいね?」
「気付いた?」
邪神と戯れる。何だか取っ付きやすい邪神で話しやすいというか気安いというか。邪神と楽しくおしゃべりっていう世紀末染みた謎の光景がここにはある。1歩間違えば僕すら鼻息で屠られるのだろう。おーこわ。
なんとかRerzoviamの発音を可能にすると、彼女……あれ邪神って性別あるのかしら。まあ便宜上彼女で宜しくてよ?ワタクシこのお方を外見で判断してしまいますわ。お許しになって?彼女は言う。
「いやー暇で暇で。暇すぎてお話の相手にキミを呼んだ次第でごじゃりますでしてよのわ」
「混ぜんなそして混ざんな」
「そうそう!そういう反応が欲しいのよさ!大体ボクもお仕事はあるっちゃあるんだけどね、随分と前に下の子達に丸投げしてね。それにそれに、いっつもいっつも口調が固い固い……!だからボクはこんな風にして遊んでみたりもしなかったりってこともなかったりして!?」
「情報多すぎて何が何だか」
「ボク、さびちい、キミ、呼んだ」
「あっという間に理解可能」
くわっ!という擬音がぴったりフィットするだろう剣幕で捲し立てるRerzoviam。頭がだいぶ弾けとんでいらっしゃるし、普通の人間の頭にネジがあるのなら、ネジが釘に置換されて無理に押し込まれたせいでぐちゃぐちゃになってる感じのRerzoviam……ちゃん?さん?あれどうなんだろ。
「Rerzoviamたんとかどう!?」
「心を覗くな目隠しちゃん」
「んー何だかなあ!34点!」
「採点キツいとかじゃなくてキリが悪い点数なのがめっちゃ気になる」
「さんぶんのいちですぅてきとぉですぅ」
「あっそ」
「ひでぇひでぇ!」
普通にRerzoviamに呼称が確定し、互いに色々と話を始めた。いやー、邪神の仕事事情って中々聞けんと思うんよ。ハッハッハ、例えこの邪神がプログラムだろうと属性てんこ盛り邪神のRerzoviamとの話は面白いわね。目隠れおさげ赤髪黒翼羽衣アホ毛邪神ってキャラ濃すぎんよ!
「そう、だからそこでボクがドカンと1発食らわせたったんじゃよ!」
「そうなんすかー。で、今の状況に?」
「うんうん。なんでもたべちゃうじゃしんちゃんのVaemilriorのオイタをどうにかしたけど重症負ってね。だからこの『世界の裏』みたいなとこで回復してたんよ!」
「そっかそっか。あの十字架は?」
「趣味ですが?」
「アッハイ」
そう、どうにもこの邪神、傷の療養をしていただけのようなのだ。はー?それに加えて、あの封印っぽいのは趣味でやってただけのようだ。僕が態々来たのは意味があったのだろうか?
「あったあった」
「何処に?」
「…………」
「沈黙の意味は『なかった』として捉えますわ」
「それは止めてほしいですわ!ボタワシその件に関してはあったと答える他無いですの!」
「理由は」
「無いですの!」
「成る程おくたばりくださいませ」
「酷いですわ酷いですわ!」
そこで、Rerzoviamはふと目を閉じる。感じがした。ちょっと顎を引いたから目を閉じたと思う。物理的に目が閉じられてる訳なんだが。
そして慈愛に満ちたっぽい表情をする。
「ん、そろそろだね?多分、もうアレは倒しきれるだろうし」
「へ?何ぞ何ぞ」
にこりと微笑むと、此方に顔を近付けたRerzoviamは言う。アイエエエ美人さん。ちなみに邪神!
「ファンブル。いや、カズ。ボクは確かに邪神だ。でも、ボクだけじゃない」
妙に迫力のあるRerzoviamに気圧されながら話を聞く。いや、アンタみたいなのいっぱいいても疲れるだけやぞ?
「ボクより酷いぞアイツ等」
「ぬっ!?」
「うん、伝えとこうか」
白眼になりかけた僕を優しくツンツコするRerzoviam。その途端に脳に直接情報が流れ込んでくる。……おぇ。ぐるんぐるんげろんげろん……。
「まずソイツがFedcklmiss。司るのは正。時間で言えば加速、支援で言えばバフに当たるかな。そして何より、このクソは『無機物』と『創造』も司るんだ」
「お、おう?」
送り込まれたイメージ映像に映るのは蒼い…よりは水色をした髪の長身美人さんだ。しかし眼中のハイライトが殆ど仕事してないんだよ、怖い怖い……!Rerzoviamの記憶なんだろうけど、爆速で殴り殴りしてきてて純粋に恐怖。何やってらっしゃるの邪神?
Rerzoviamは続ける。
「この能力は見たことあるでしょ、つーかさっき見たね?真生多脚蜘蛛の機械装甲っぽいのは、Fedcklmissが関わってるんだよ」
ヤバい事を聞いた気がする。ソレ言って良いの?お宅、実は口も軽かったりしないかしら?
そして今更ながらアシテラグモの事を思い出した。そっちはどうなんだろうか?
「んー、どっちもだぃじょび。で、そのFedcklmissと全く正反対なのが、Sbvemgwyest。司るのは負。減速とデバフだね。こっちの生ゴミは『有機物』と『破壊』も司ってる。要は病疫とか肉だね?」
「それ一番ヤバないか?」
聞いてる内に邪神が真面目に邪神してるらしくて発狂しそう。どうしろと?倒せと?無理だろ?無限加速機械装甲と破壊系生肉製造工場じゃろ?
そして脳裏に浮かんでくるのはそのヤバい邪神ことSbvemgwyest。紫っぽい髪をしている。毒々しくて怖い。更に右目に眼帯をしている。体格的には幼女染みて小さいが、その周りにボロボロで醜悪な外見のゾンビがいるのでSAN値ピンチである。しかもめっちゃ楽しそう。狂人だな。
「いやいや、まだ話が出来るボクみたいなタイプだから」
「は?」
この邪神、話が上手いなー。冗談キレッキレやん。ハッハッハ、いや受け止めるけど。
話が通じない邪神ってそれただの破壊神では?
「まあさっきも愚痴ったけど、その腹ペコじゃしんちゃんはVaemilrior。司るのは、ゼロ。『無』とか『空白』もかな。破壊も創造もまとめて喰らう、最悪最凶で無慈悲無責任、ボクの知る限り史上最も『破壊神』に近しい邪神だ」
「無敵か」
「実際無敵だから」
「ふぁっ」
なんでも(文字通り)喰らうって……それ……。イメージではにぱりん!と笑顔の素敵な女の子だったけど、即送られてきた追加イメージ映像にいた彼女は……あれさっきのSbvemgwyestのゾンビだよな?めっちゃ齧ってる!踊り食いやめろ!ゾンビだって生きて……ないのか。でも悲しそうだし辛そうだぞ!目を細めるVaemilriorの瞳の奥に感じるのは純粋な食欲だけだった。悪意が無いのはだいぶタチが悪い。
にへら、と顔を緩ませたRerzoviamは、ふんす!と胸を張った。
「最後にボクことRerzoviam!司るのは虚!虚数的な感じだね?」
「あらーつよそー」
にへにへするRerzoviamのほっぺたをぷにりんむっと触る。あらやだプリンみたいね!
「そのちょくしぇいじょぉ……やめへやめへ」
「おっとごめんなさい、余りにも柔らかくて」
「美味しそうか!?たべりゅ!?」
「いりません」
「はーーーー……」
滅茶苦茶悲しそうなRerzoviam。そんな、こんな邪神のほっぺたプリン食べる訳無いやん?
Rerzoviamはよいせのそっ、と立ち上がって呟く。
「虚数だからね、Vaemilrior以外なら完封出来るんだよねボク」
「えっつよないかお前?」
「だし、『裏』とか『感情』も司ってるからねぇ」
「さてはてめぇ最強か?」
ダンスダンス☆と踊り出した目の前の馬鹿っぽい邪神、何とほぼ最強であった。何それ裏とか強そうな気配しかしないよ!
そりゃそうか、Vaemilriorとか言う破壊神も封じたのよな。ソレぐらいじゃないと喰われるのか。
1曲躍り終えたRerzoviamはきゅぴーむっ!とポーズを決めて此方に向く。
「まあ、察してくれたかもしれないけど、『ふぁわわ』のボスクラスはボク等の能力が多少発現してるんだ」
「なるほろ?」
ということは――――――
「赤銅触手冥皇蟲か」
「御名答。ボスドロップはその邪神と交信出来得る素材だよ。まあ、此方が認めないと話せないけど」
「つまりRerzoviamは……虚骸之死角仮面なんだな?」
「セヤデセヤデ」
あの謎仮面の謎機能にはそんな通信機能もあったんだな。すげーふしぎ。つーことぁこれから暇な時にゃRerzoviamとお話出来るって?
「Exactly!」
「暇神め」
「だって暇だもん」
「うるさい馬鹿」
Rerzoviamが僕のほっぺたに手を当てる。ふふふと笑うその表情は邪神とは思えない。
「ふふ、ありがと。じゃ、またね」
一方的に告げられると、目の前が暗転した。
「ふぁっ!」
突然、目が覚める。
「はあ……やっと冷静に……おぇ。づがれだぁぁ……」
目の前でどたっと倒れ伏したてるる、そして少し怯えた様子の虫ガールズ。
ん?何が起きた?
「シィィィ―――――」
後ろを見れば、全身が真っ黒で金属質な真生多脚蜘蛛が満身創痍で膝を突いている。膝って何処だ。
そして前を向き直して飛び込んできたのは。
「うぉふうぉふ!うぉふうぉふ!」
「わ、わふ!無事か!?」
「うぉふ!」
もふもふわんわんこと我等がわふ!ありゃまあ無事なの!
てるるが尺取り虫の如くにょむにょむ動いて転がって来る。汚れてやんの汚れてやんの。そのだるだるてるるんは呆れたように口を開く。
「えぇ……覚えてないの?」
「全く」
「これだからわんわん狂いは!蜘蛛とついでにくたばってろボケナス」
ごろごろと転がってくてるる。その後ろ……前……後ろ……ええい!後ろ姿を見送る!すると前からエルちゃんとちーちゃんが抱き付き、後ろにガスプ姫が飛び込んで来る。ワオ……アッタカイ。
「パパぁーーーーーっ!もう無理しちゃ駄目だよ!」
「パパのお尻とても素敵」
「オイ蜂」
「何だよ牛」
「静かにしとけ」
「ばるぅんばるぅん」
「その喧嘩買った!ダメージコンテストすっぞコラァ!」
「やってやろぉじゃないのこの牛!」
いつもの調子で喧嘩開始した2人は放置して、エルちゃんに話を聞く。
「エルちゃんや」
「……」
「聞きたいことがあるのよ」
エルちゃんは黙って頷く。ぎゅーっと足まで使って抱き付いてくるエルちゃんは……身体を強張らせた。
「さっきまで、何があったの?」
エルちゃんはゆっくりと顔を上げ、目を合わせてくれる。そして更に抱き締める力を強くし、話し始めてくれた。
それは、僕の――――暴走の話だった。
良いよな暴走!なんかすごいロマンロマンしてる!
あー、そうそう、アルティメットサブリミナルで申し訳ないけど、適当設定置き場を新たに増設しました。
邪神の皆の生まれ方も分かるよ!
邪神と言えば、FedcklmissとSbvemgwyestですけど、まあ某組織の要注意団体の機械宗教と肉文化の感じで。
ウチの可愛いウンベラータのべらっちゃんなんだが、最近葉が黄色くなってて怖い……誰か何でかおせーておせーて……。それはそれとしてニラカスマジで駆逐されろ。雨で成長するし庭仕事出来ねぇんだよぉ……!