第一章2 友達
大輝が指した指の方角は外だ。外を見るとそこには恐ろしく、おぞましいく、戦車ぐらいあるだろう体で無理やり校門を破壊して入ってくる海人の姿がある。しかしこちらの校舎に入るための入り口に何人かの生徒が立っているのが見える。するとその生徒達は海人に向かい走り出すではないか。普通の人間なら抵抗する暇もなく死んでしまうだろう。ただの自殺行為だ。だがそれは普通の人間の話だ。彼らは選ばれた人間だ。正確に言うと生まれた時から神様に人を救う為に力をもらっている人間だ。この世界では神に選ばれた人間をヒーローと呼ばれている。このヒーローは20万人に一人という確率で生まれる。
「もう終わったよ。流石ヒーローだな。」
みんな海人を倒したヒーローに激励、感謝しているが大輝だけはヒーローを冷たい目で見ていた。
「また目が死んでるぞ。」
「本当だ。助かったんだからちょっとは嬉しそうな顔しなさいよ。」
「ヒーローがいなきゃ私たち人間はとっくの昔に滅びてたんだからね。」
「感謝してるしてる。でもアイツらがいるからこの世界には暗黙の了解が出来た訳だしな。感謝なんかできねーよ。」
この世界はヒーローが出てくる前まではなんだかんだ平和であった世界だったらしい。
しかしヒーローが生まれてからという物この世界はカースト制度みたいな物ができていた。簡単な話ヒーローが一番上、ヒーローじゃない奴らが底辺って訳だ。でもそれをヒーローの前で言うと何されるかわからないからみんな言わないだけ。これでこの世界に暗黙の了解の完成だ。だからこそヒーローは待遇される。気分を害すと助けて貰えなくなるし、殺されるかも知れない。
「バカ、聞こえたらどうするの!」
「聞こえたぜ。」
先程まで海人の近くにいたこの学校の頂点であるヒーロー、新田 豪が窓の目の前で浮いている。
「お前、度胸あるな。そう言う奴は嫌いじゃねぇよ。だかなそれはヒーローだったらの話だ。普通の人間でその態度はただのうつけ者って言うんだよ。」
「悪かったよ。あんたは正義の味方だろ。底辺の言うことなんか無視しといてくれよ。」
「テメー、まだ言うか!」
さほど気に触れたのか目の前のガラスが溶けるほど暑くなっている。
「バカ!すいません、コイツまだ寝ぼけてるみたいでちゃんと躾とくんで、許して貰えないですか。」
すぐに危険を察知した悠木が土下座をして機嫌を治そうとしている。
「チッ、そいつに免じて今は見逃してやる。」
そう言うと直ぐにどこかに消えてしまう。
「大輝、お前な!」
いつも大人しいはずの悠木が声を荒げて大輝の胸ぐらを掴んで持ち上げている。
「悪い、悪い」
「本当だよ!死んじゃうのかと思ったじゃん!」
内田も声を荒げて目から大粒の滴をポロポロと落としながら怒っている。
「悪かったって!」
まさかこんな怒られるとはな。本当、コイツらは俺には勿体ないぐらいだな。
「今日、焼肉奢ってくれたら許してやる。」
「えっ!」
「勿論、高級なとこの焼肉だよ!」
「えっ!」
「絶対な!」
「絶対だよ!」
二人の声が被って強迫されいる気分だ。
「わかった、わかったって奢る奢る。」
コイツらどさくさに紛れてとんでもない事要求をぶつけて来やがった。
「今月、金欠確定だな」
顔を天井に上げいくら貯金があったのか思い出して、現実を呟く。
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本作「ヒーローを殺すそれが俺の役目だ。」
を読んでいただき誠にありがとうございます。
どうか今後も末永く読んで頂けると嬉しいです。
また誤字、脱字、感想などをお待ちしております。
今後とも本作を書いていくための強力な力の源になります。感想、評価をしてくださった方、本当に感謝しております。ありがとうございます。