プロローグ(3)
やっと主人公の名前が出ました
このまま逃げたら後ろから頭を叩かれて、気絶し、そのまま死んでしまうだろう…。
だったらせめて、この木刀で一矢報いるとしよう…!!
相手をよく見ろ、ゴブリンだけあって、リーチは短い。
出端をとれる。先程見た感じ、剣速も師範より遅い。安全に行くならば返し技が良いだろう。
「ギャァアアアア!!!」
また、ゴブリンが叫びながら突っ込んできた。
上段だ。
ゴブリンの棒を木刀の右側面で擦り上げ、そのまま引き面を打った。
綺麗に決まった…!
しかし、ゴブリンは絶命しない。
そらそうだ。
こんな細い棒で絶滅するはずがない。
ゴブリンは先程よりも殺気がかった目で見てくる。
その時。
「ハッ!!そんな棒切れでどうやってゴブリンを倒すんだい!?」
そう言いながら、革の鎧を着た大柄な男が走って飛び出し、ゴブリンを後ろから袈裟懸けに斬った。
ゴブリンが、瞬殺だ。
恐ろしい切れ味だ、などと脅威が去ったからか、思考が脇にそれてしまう。
しかし、ここは命を助けて貰ったのだ。
「あ、ありがとうございます。ゴブリンを倒してくれて…」
「なに、良いってことよ!!それよりあんちゃんの名前は?こんな森深くまで来て。大方商隊からはぐれたんだろう。送ってやるよ!」
「僕の名前は、高橋 和志と言います。良いのですか!?こんな見ず知らずの僕を送ってくれるだなんて…」
「ん?案内要らんのか?カズシ。」
「い、いえそういうわけでは…。とてもありがたい申し出でしたので…」
「ならありがたく恩は受け取っておきな。後でなんかあったらその時は助けてくれ」
そう言いながら彼は手を出してニカッと笑った。
「俺の名前はリース。近くの街で冒険者をやっている、よろしくな」
「すみません、改めまして、僕の名前はカズシと言います。こちらこそ宜しくお願いします」
そう言ってお互いに握手をした。
主人公が壁にぶつかる(剣道の経験が活かされなくなる)のはもう少し先です