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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第三章
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これいい。

「なんてビックリ発言されたらさぁ、もう『あ、はい』っつって笑うしか出来ないじゃん?」

「……だな。つかさ、そのカレナ様、だっけか?カレナ様が水樹並みに変な勇者様なんだよな。アドバイスのしようもねぇよ」

「色々と意地悪」


 カレナと話し合ってから二日後、わたしは魔物学の講義終了後、あのパラソルで颯と話をしていた。


そうよ。命名者、水樹。命名、パラソル。


 レーイレアにギンッと睨みつけられたけれど怖くも痒くもないので、そのまま受け流してやった。


嫉妬深い女よ、全く。見事なくらい愚かで笑えてくるわ。


 なんて内心思うわたしもなかなかの嫉妬深さだとは思うが、そこは置いておいて。


「で、主になったのかよ、水樹は」

「馬鹿なの⁉中二病発言を真に受けて『カレナ!世界征服して来い!』だとか何とか言えると思う⁉そこはさぁ、普通に『カレナ様が仰るのでしたら、考えておきますわ。わたくしの考えがまとまり次第、カレナ様にお伝え致しますので』って言うしかないじゃんか!」


 わたしがふざけてセリフごとに声を変えて言ってやると、颯は口に手を当ててなにやらもごもご言い始めた。


「ん、どったの」

「いや、なんか、お前……声優になったらいいんじゃねぇの」

「い、今更小学生の時の夢を持ち出されても困るんだけど⁉」


 思わず幼き頃の黒歴史を突かれて取り乱しながら叫んでしまったわたしを見て、颯が急に笑い出した。


「ちょ、あーっ、やめて!ホントに恥ずかしいっ!さりげなく自分で弱み握られるほど馬鹿だとは思わなかったよ水樹!」

「はひっひっはっ……水樹の小学生の時の夢って、声優だったのか~」


 楽しそうに颯が言うもんだから、わたしはやけになって「そうだよ」と言い放つ。もうここまで来たら全部話してやる!


 颯は、笑いながらわたしに肩をぶつける仕草をする。


「ぶすっとしてんなよー」

「ブスなのは言わんでも知っとるわ」

「いやお前、美人だろ普通に」


 と、ととと突然、真顔になって、颯がわたしに言った。まっすぐにわたしを見つめて、そう言っちゃったんだもん。


「好きです」


 としか言いようがないじゃんか!


「唐突だなおい!」

「颯もイケメンだよ?」

「イケメンなのは言わんでも知っとるわ」

「ナルシだね」

「ナルシなのは言わんでも知っとるわ。……ぇあ?」


 軽くわたしを睨みながら不思議そうに呟いたときの表情がとても幼く可愛らしく見えて、わたしは思わずふふっと笑いを漏らす。


だって今、好きだなぁって思ったんだもん。


「好きだよ。颯が好きだよ、わたし。好き」

「え……うん。ありがとう?」

「あはは、うん。どういたしまして」



 何気ない茶番を披露した後、わたしたちは何気なく、浅めの接吻(ファーストキス)を交わした。



でへ。えへへ。

ぐふふふふふ。

げへへへへへ。

でへへへへぇ♪


「ってっ、どうしたんスかっ、ハバサワ様っ」

「うふふふふ……って、リゼッテ。おはよう」

「おはっスハバサワ様っ。なんか今日浮かれてるっスよねっ?」


 翌日。そう、翌日。何のかって?


「おほほほほっ!」

「さーせんハバサワ様正直言って今メルゴライル様よりウザいっス」

「それはないわよ」

「そこだけ反応早くないスか?」


 どんだけ敏感なんスか~と言いながら、講堂のど真ん中の道を二人で歩いて行く。リゼッテは頭の後ろに両手を回して、鼻歌を歌いながら足を高く上げて、すごく楽しそうに歩いている。


 それに負けない幸福感がわたしにはあるのだ。だって今わたし、世界の誰よりも、幸せ。


これだけは自信を持って言えるね。うん。


だってほら、今颯と目が合ったもん。あ、あの人笑ってくれた。


 はにかみながら笑い返すと、颯は少しばかり頬を赤らめながら恥ずかしそうに口を……否、唇を抑えた。途端に心臓が爆発する。わたしも、そっと唇に触れて、ニヤリとしてみせた。颯も、ニヤッと笑う。


 いい。


 これいい。


「おぉいハバサワ様っ、どうしたんスかぁってっ、あっ、これ今ボクが邪魔した駄目なやつっスねっ」


 なんていうリゼッテの言葉も耳に入らないほど、わたしは今幸福で満ち足りている。


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