お風呂編 Part1 ~はじめ~
ヴェクが帰り、わたしたちは少し遅めの入浴をする。まずはユフィアナからだ。するとユフィアナは、軽くセーリーラの服を引っ張った。
「なんだ、ユフィアナ殿」
「いっしょにはいろ、セーリーラ」
「……っ、あぁ、あぁ構わないぞユフィアナ殿!共に神々の祝福の聖水を全身に浴びようではないか!」
「何セーリーラって詩癖的なのあるの?」
ユフィアナは、セーリーラを連れて風呂場へ歩いて行く。残るはわたしとララノラだけだ。ふと彼女を見ると、ララノラはとろりとした目でわたしを見つめていた。
「ねぇ、食事ってどうするの?」
「学園内にぃ、食堂があるよぉ?すっごい豪華なのぉ。だからぁ、そこで食べるんだよぉ。みんなお風呂が終わってからぁ、一緒に行こうねぇ」
「へぇ、そうなんだ。何食べようかな。お刺身とかあるかな?焼き魚定食もいいかも。あ、待って。米!米食べたい!」
「お米ならあると思うよぉ?」
「ひゃっぴーっ!二年ぶりの米だぃ!いやっほー!やったね颯!――って、あれ?颯?」
わたしは、いつもなら「米だ米だ!うっひー、やったな水樹!」と言ってハイタッチでもしてきそうな颯の姿が見当たらない。周りを見回すと、ララノラが苦笑したように言った。
「ミズちゃん、ここにはハヤトちゃんはいないよぉ?ハヤトちゃんはぁ、別の部屋なんじゃないかなぁ」
「ぁ」
そうだった。颯は今隣の部屋で、凛子とさやかとレーイレアとかいう女性と四人で楽しく話してるんだろう。
俺一人だけ男ってどうなのよって苦笑いをしつつ、レーイレアと仲良くなって、相変わらず凛子とさやかとわいわいやって。
……馬鹿颯。ヴェクみたいにこっちには遊びにも来ないで。女の子に囲まれて楽しくやってるんでしょ?ホント……なんだかなぁもぉ。
「出たぞ、二人とも」
「あったかかった。きもちかった」
「お、なら次、わたしが入るよ。早いから大丈夫」
「じゃぁ、ララ待ってるねぇ。いってらっしゃぁい」
ひらひらと手を振ってくるララノラにわたしも手を振り返し、「思ってたほどヤバい人じゃないじゃん」と心の中で零す。
ララノラはもっとキョーレツキテレツボバーンドッカーンジャジャーンドデーンビッカーン、って感じだと思っていたのだ。正直度肝を抜かれてドビックリだ。
「ぅわぁ、広い……」
浴室の扉を開けると、大理石のような床や壁が広がり、優雅でだだっ広い洗面所があった。バスマットの側の洗濯機(現実的だね……)に洋服を入れると、わたしは風呂の扉を押した。
「……あれ?」
扉が動かない。力を入れて押しても駄目だ。引いてみる。駄目。どうすればいいんでしょうか。わたしはすぐに洗濯機から服を拾ってもう一度着、リビングに駆け戻った。
「お風呂の扉が開かないの!」
「あ」
わたしが叫ぶと、ユフィアナが小さく反応した。
「ユフィアナたん、何か知ってる?」
「ユフィアナがさいごにでたでしょ、セーリーラ」
「あぁ、そうだな」
「ユフィアナがドアしめたとき、なかなかしまんなくて、えいってやったらおもかったの。だからたぶん、それ」
「あー」
わたしは三人を連れ、風呂場に向かう。さきほどと同じように4パターンやってみる。やはり微動だにしない。
「結局、入れたのは己たちだけか。その、すまないな」
「ユフィアナがぐいってやったから。ごめん」
「ううん、全然いいんだけど……どうしよっか」
再びわたしたちはリビングに戻り、相談をしていた。そこで、ララノラが明るい顔で「でもぉ」と口を挟む。微かな希望を感じ取り、わたしはバッとララノラの方に顔を向ける。
「でも、何⁉」
「この学園にはねぇ、公共共有のお風呂があってぇ、そこで入れると思うよぉ?」
「行こう!」
わたしは椅子を蹴飛ばしてガタッと立ち上がった。そしてバスタオルや着替えやら何やらを引っ掴み、部屋のドアを開ける。廊下を駆け抜ける寒々しい風。でも!わたしは負けない!お風呂に、入るのだ!
「ミズちゃん、ララも入るんだから待ってよぉ」
「己たちも着いて行くぞ」
「おふろのまえのベンチでまってる。セーリーラ、そのときパフェ」
「分かった。ユフィアナ殿の頼みならば聞くほかない」
「やった」
両手をあげて万歳をしながら喜ぶユフィアナの頭をそっと撫で、風呂場の位置を知っているらしいララノラに着いて行く。
※えろっちぃのは出ませんすいません
女風呂だからってねぇ美少女だからってねぇエロイのボーンって話じゃないんだよ。
新作?エロ?出る、かなぁ。趣違いすぎて断言できません!




