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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第三章
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第三十回露河学園入学式

第三章始まりです!

これからもお願いします。

一章と二章は短かったですけど、三章は長めにしてみてる感じです。頑張ります!

『ただいまより、第三十回露河学園入学式を始めます』


 放送のアナウンスが流れるところが天乃雨らしくて少し笑いが漏れる。でも、左右や後ろに保護者はいないし、きっと声の増長魔法か何かを使っているんだろう。


『初めに、学園長よりお言葉を頂きます。学園長、よろしくお願い致します』

『おっほん』


え⁉咳払いまで大きくさせる意味なくない⁉


 学園長らしき人がステージの上に立って、『えー』と話し始める。やはり魔法を使っているようだ。学園長の手には魔術具的な何かはない。魔術具ってのも憧れるよね。


『私の名はセイズ=エシーテ・ヴィヌマスだ。露河学園の学園長を務めておる。私は王族の王より直々に役職を賜った。これはとても喜ばしく感慨深いものである。故に――』


 と、まぁ校長特有の長ったらしいお話で唯一聞き取れたのは、セイズ=エシーテ・ヴィヌマスという名前だけだった。いや、結構凄いと思うのよね、これ。


『学園長、ありがとうございました。続いて、入学生首席の挨拶。お願いします』

『あぁ』


 お?女の声だ。これは……首席と友達になりたい!ララノラじゃないよね、ララノラもわたしたちみたいに特別入学だよね?あ、違った!


 ステージに上がった女の子は、紺青の、肩を少し超すくらいの長さの髪をして、制服のようなきっちりした服を着ている。


『お初にお目にかかる。入学生首席、セーリーラ=ローゲルディック・ミュリレ=ヴェツァート・マノエグ・モースだ。これからよろしく頼む。己は首席だから早めに制服を貰った。故、贔屓だと思わないで欲しい』


 セーリーラの見た目にそぐわない、一つ一つの分が短い言葉のギャップに驚きながら、わたしは彼女の制服を確認する。やはり、制服だったか。


 白いブラウスに、緑の細く長いリボン。淵にはレースがついていてお洒落だ。袖は提灯袖。あれか、お金持ちの象徴みたいだもんね。その袖の淵にも豪奢なレースが付いている。長袖でも提灯袖って、やるな。半袖でもそうなんだろうな。


 ブラウスの下には、短めのスカート、膝より少し上くらいの長さのものをはいている。あれで大丈夫なんだ。スカートの色はリボンと同じ緑。この学年のイメージカラーは緑なのだろうか。スカートの淵にもレースがあって思わず笑ってしまった。レース好きだね!


 スカートのデザインもよく見ると凝っていて驚きだ。わたしは視覚を急激に発達させる魔法も取得済みだ。


 靴下は、またまた淵にレース。真っ白な靴下に真っ白なレースだが、視覚強化をしなくても分かるほどレースと靴下が一つ一つ見える。それほどレースが豪奢だ、ということです。なんだかメイド服みたいだね。


 そして靴は勿論ローファーだ。これはお嬢様学校の基本だよね。ローファーって言うより、革靴?みたいな。変わらないか。


『己には似合わぬ。入学式の後配られるらしい。きっと己には合わなくても似合う者は必ずいると思うぞ。明日からの学園生活が楽しみだ。己と是非、仲良くしてくれると嬉しい。そして』


 セーリーラは一度言葉を区切り、視線を目の前からふいっと動かした。


「っ⁉」


 何故か、わたしと目が合ってしまった。彼女は、非常に可愛らしく笑う。逆にわたしは、冷や汗ドバドバ、膠着状態だ。


『今年は英雄たちが沢山入学している。例えば、麗しき姫騎士とオムニポテント&ソールドレディ、レイカの英雄のリーダー。それに、勇者五人のうち三人』


え⁉三人も来てんの⁉それ以前に、何で知ってんの⁉


『皆と仲良くしたいと思っている。首席代表挨拶の時間に、交流会をしたかった。生徒の皆、特に英雄の方々。是非、己、セーリーラ=ローゲルディック・ミュリレ=ヴェツァート・マノエグ・モースを頼む。以上』


 パチパチパチ、と絵にかいたような拍手が響く。だが、わたしの手は猿のシンバル玩具のような(正式名称は存じません)拍手だ。


いやー、セーリーラさんに見つめられた時、焦った~。何かあるのかと思ったら、ララノラ様も言われてたし。何でわたしのことだけ見たの⁉ってツッコミたいよ、まったくもう。わたしが困るでしょ、セーリーラさん!


 非常に癖が強い首席が席に戻るのを見届け、司会者が『では、入学生の個人名の点呼を行います』と言った。わたしはどうなるのだろうか。


『クラスA、15。レーイレア=イスクレッテ・メルゴライル』

「はい」


 変なところで、『レ』が飛び出した。五十文字順じゃないの?後で聞いてみたら、身分順と言っていた。


『クラスC、1。ララノラ=ソイーロリド・イル・ミドゥ=イタルゥニィナ』

「はぁい」


 お、ララノラ様はCね。


『2。セーリーラ=ローゲルディック・ミュリレ=ヴェツァート・マノエグ・モース』

「あぁ」


 セーリーラさんもCか。勇者と首席が同じ組って、どんだけよ。それにしても、セーリーラさん、身分高いなぁ。


『5。クィツィレア=ユラクソウィッテ・アローラ・ユーヒレア=ジェヴァーノ・ミルティック』

「は、はいっ!」


 さやかが、裏返った声を出しながら落ち着いて立ち上がる。作り笑いがとても柔らかで、男子のほとんどはメロメロにされるだろう。


 ってか、長っ!本名長っ!さやかはクラス、ララノラ様と一緒なの⁉頑張って!ってさやか、セーリーラさんより身分低いのね⁈知りませんでした。セーリーラさん、マジ何者?


『6。レムーテリン=ユラクソウィッテ・アロール・ユーヒレア=ジェヴァーノ・ミルティック』

「はい」


あ、従姉妹だとアローラじゃなくてアロールなのね。初耳。


 学校の式典には何度も出たことがあるため、わたしは比較的ゆっくりと優美に立ち上がり一礼、また座る。さやかは緊張しやすいタイプだから、少し上がってしまう所があった。でも、今回はよく抑えたと思う。


これが、成長だ!


 それに、さやかと同じクラス、というのが思ったより嬉しい。……ん、ちょっと待ってね。イコール、首席のセーリーラさんと、一緒?イコール、ララノラ様と、一緒?


「……ぱぁどぅん?」


 理解が追いつきません。セーリーラさんは別にいいんだよ。もう一人の方は、ちょ、ちょ――。


「わぁ、リーミルフィちゃんも一緒なのぉ?よろしくねぇ」

「あ、え、えぇ、そうです、そうですわよ、ね。仲良く致しましょ?そう、そうしましょう」

「?ふぁあぁ、ララ眠ぅい」


 ララノラ様が式典でしっかり寝ようとしている教養がないお嬢様とはこの事か。起こそうとしても、これ以上話したら教師の眼が怖い。


 ララノラ様がぱっと起きた。みると、後ろに座っていたセーリーラさんがおでこをつついたようだ。

首席、そこだったんスね。


「んぅ、ララのおねんね邪魔したの、だぁれだ」

「己だ。ララノラ殿、式典中の居眠りはどうかと思うぞ」

「えぇ~、ちょっとくらいいいじゃぁん」

「ならば、一分だけ、己が計ろう。その間だけ、寝ておられたらどうだ」

「じゃ、おやすみぃ~。無限に寝させてくれてもいいよぉ~?」

「それは駄目だぞ、ララノラ殿」


 なんか首席が頼りになる!ララノラ様ストッパーとして重宝したい!これは絶対にご学友にならねば。


『クラスD、1。ハヤト・ロガ』

「はい」


 その瞬間、ざわりとざわめきが広がる。まさか、王族の者が入学しているとは思っていなかったのだろう。颯は、咄嗟の王子様スマイルで笑って言う。


「大丈夫です。私を露河の王子として扱わずとも結構。……まぁ、その選択肢を消せばレイカの英雄のリーダーって肩書が残っちまうんだが」


最後の呟き、隣のわたしはしっかり拾ったぞ、颯。貴方、英雄の肩書を欲しいままにしておいて、鬱陶しがってるでしょ?異世界ファンタジーのチートを追い払ったら、どん底から突き進む成り上がりファンタジーに変化するぞ?それよりなにより、一番名前がシンプルですね。


「2。リンコ・ナツバタ」

「ほいっ!」


 あぁ、また凛子がやらかしたよ。皆冷めた目で見てる。まぁ、この人のおかげで皆の存在があるわけなんだけどね。


 えーっと、知っている人の確認からすると、わたしとさやか(心梨)、ララノラと首席のセーリーラさんがC、颯と凛子がDね。D組、5:2は可哀そうじゃない?


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