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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第二章
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幻獣

 その日のうちに、女王から調べた資料が送られてきた。もちろん、異空間郵送というやつで。異空間郵送は、相手から何かが送られてくると勝手に自分の異空間が開いて、それを受け取ることが出来る魔法だ。


「颯、凛子、さやか、アスート、イズフェ。女王から資料が来たよ。集まって、一緒に見よう」

「お、ついに来たか」

「あたしたちの情報整理の腕が鳴るじゃねぇか!」

「凛子ちゃんはそんなでもないと思うんだけどな……」


 リビングのテーブルに、六人が腰かける。わたしは、女王から送られてきた書類を皆の前に出す。意外と薄い紙を、わたしから読んで回していく。わたし、颯、凛子、さやか、アスート、イズフェ、わたし……という順だ。


「どれどれ?」


『七愚の魔物について、詳しい情報を送ります。

 傲慢の魔物……パープルグリフォン

        防御力がとてつもなく高いようです。人を引き裂いて殺すようです。爪や嘴は鋭         く、とても危険です。

 憤怒の魔物……ブラックオーガ

        凶暴で残忍、知性や賢さは0です。人の生肉を食べるといわれています。また、自        由に姿を変えることが可能です。攻撃力は高いようです。

 嫉妬の魔物……グリーンマーメイド

        人の姿をしているマーメイドです。話し、理性や知性を持ちます。故、倒すことが        困難です。人のようにずる賢いため、殺すのが難しいと思われます。

 怠惰の魔物……ホワイトフェニックス

        不死鳥だといわれていますが、炎攻撃に弱いようです。また、攻撃力と防御力は同        じくらいあると思われます。

 強欲の魔物……イエローゴブリン

        醜く意地汚い、邪悪な小人ですが、攻撃力は高いです。十分に注意を払って下さ         い。また、ゴブリンの群れでの攻撃も予想できます。

 暴食の魔物……レッドケルベロス

       三つの頭を持つ巨大な犬です。ですが、甘いものに非常に弱いようです。これは戦闘       には役立たないと思われます。三つの頭の特徴についてはよく分かっていません。

 色欲の魔物……ブルーサキュバス

       夢魔と言われています。美しい幻影を見せていますが、実際には醜いようです。サ        キュバスと会話をし過ぎると死に招かれるようです。

魔物については異常です。』


「まんま七つの大罪の幻獣だよね⁉」

「「「「「ふぁっ⁉」」」」」


 あ、ごめん、何でもないと言い訳をして、わたしは颯に渡した。あれは酷似しすぎだ。全部幻獣だし、特徴もそのままだ。そして幻獣の名前の上に色の名前がついてるのって、最高にダサくない?や、ホントにさ。


 強欲のパープルグリフォン、憤怒のブラックオーガ、嫉妬のグリーンマーメイド、怠惰のホワイトフェニックス、強欲のイエローゴブリン、暴食のレッドケルベロス、色欲のブルーサキュバス。……勇者様お助けを!まずは記憶力からプリーズ!







 倒し方について、などは書かれておらず、一番の収穫は魔物についての資料だった。名前?ちょっとよく分からない。ゴブリンはよく最弱モンスターとして描かれているけれど、攻撃力が高いようだ。やっぱり殺したら血が出ると思う。マーメイドなんて殺せないです。


 ちなみにイーリンワーナとデヴァウムの死体は粉にして土に埋めた。わたしと颯で高らかに笑いながら踏みつぶした。いやー快感でしたよ、ありゃ。


 あぁ、あと封印されている場所も分かった。興利央以外のすべての国に、一つずつ封印されているらしい。いちいち興利央が気に食わないなぁ。夢楽爽にはパープルグリフォンがいるみたいだ。きっと夢楽爽のイメージカラーが紫だからだろう。レイカはグリーンマーメイド。レイカのイメージカラーは緑なのか……?


「どこから殺しに行こうか」

「水樹ちゃん、まずは入学しないとだよ」

「あ、そっか。そこで勇者さんとご学友にならなきゃ」

「それにまだ封印も解かれてねぇよ」


 凛子がお茶を飲みながら面倒そうに呟く。颯は、また軽く唇を噛んでいる。


「颯」


 わたしが声をかけると、驚いたようにこちらを見る。軽く頷いてあげると、「あぁ」と言っていつもの顔に戻った。颯は自分に責任を感じ過ぎなのだ。颯は何も悪くないのに。この間の励ましがあったからか、颯はすぐに通常運転を再開する。


「封印が解ける時間は分からねぇんだよな?」

「うん、分からないみたい。だから、そういう情報が入ったら、すぐに向かうしかないよね」

「厄介だな……」


 頭をガシガシと書きながら魔物について簡単に書きだす颯の手元を見る。サラサラと描かれる文字は確かに日本語だ。


「あれ?漫画とかの字って日本語?違うよね?」

「こっちの文字だろ。俺は普通に言語共通なんちゃら的なのが発動して普通に聞き取れたし読めたけどな」

「わたしもだ。あーよかった。心配しちゃったよ」


 ならきっとわたしたちが日本語を書いても向こうの人には露河の文字で見えているというわけだ。今まで書いた日本語が意味不明の言語として取られていたとしたら、もう厄介すぎて学園生活どころじゃなくなるところだった。


「皆、これ以上話し合うことは無いかもしれない。今日はもう寝ようか?」

「あたし寝たーい」

「凛子がこう言うから寝よう。わたしもなんか今日は眠いよ」

「水樹、今日は真剣に書いたもんな。お疲れさん」

「ありがと、颯。颯もゆっくり休みなよ?君にもたくさん手伝ってもらったんだから、さ?」


 そう言って、わたしと凛子とさやかは浴室に向かった。全てが異空間調達だけれど、結構しっかりしたプチ豪邸になっている気がする。


「凛子、卒業式の時には、向こうの世界との干渉、よろしくね?」


 任せろよ!と親指を立てながらお風呂でジュースを飲む凛子は二十歳と言えどもお子ちゃまだ。お子ちゃますぎだ。馬鹿だ。阿保だ。かっ、可愛い……あ!わたしが駄目になって行く!凛子を可愛いと思ったら一生の終わりだよぉぅ!


「おい水樹、なにこっち見ながら百面相してんだよ」

「一生の終わりだよぉぅ!」

「はぁっ⁉」


 お風呂の中にジュースを零した凛子を叩くことも出来ずむくれたままお風呂を出た。まぁ楽しかったから全然OKだ。体がジュースでベトリとしていると思うと気持ち悪くてしっかりバスタオルで体を拭いた。後に入る人たちが可哀そうすぎるため、魔法で水を洗浄しておいた。




 そうして、卒業式当日になった。


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