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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第二章
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いいですな~

 颯を元気づけて運命共同体になってから、二日。女王とわたしの側近たちは情報を集めるために夢楽爽に戻り、おっさんズはヨウカリの首都にのんびりしに行くといって去った。ありがとうございました太腿好きたちよ。


 今この家にはわたしと凛子、さやかに颯と颯のパーティーのみしかいない。ちなみに、亡霊は女王と側近が全力で光魔法を放って倒したそうだ。ギリギリ残るものは側近たちの底力でぶっとばした、と。実際に見ていたらその感覚も分かっただろうに、もう気を失っていたからなぁ。女王はわたしたちの癒しのために力を蓄えていたそうで。


 やはり凛赤がしぶとかったそうだ。聖清二人にサティと珠蘭が倒したそうだ。他は他の亡霊を全力で倒して凛赤に手出しできなくかったらしく、残念がっていた。


 わたしは相変わらず本を書いている。あのペンで書いた文字は面白いため、楽しくて止まらない。颯も元気になってからわたしが書いた文字を白紙の本に移すスピードが上がり、どんどん進んでいる。そして今も二人で、わたしの部屋で本を書いている。


「そういえば颯、卒業式にこの本渡すんだよね?でも、わたしの自伝ならこれからも続いて行くわけじゃん。それってどうすればいいわけ?」

「お前の人生が進めば勝手に紙と文字が増えていくシステムを取り付ければいいだろ。夜桜の絵も認識させて酷似させた絵をタイミングバッチリのところにぶっこんでくれる装置も足せばいいわけだ。それに、水樹による間違いも消える。勝手に魅力的な文章に書き換えてくれるからな」

「颯、それってホントにどこで覚えたの?」

「図書館の右から三列目の棚の奥、上から二段目の一番左から五冊目の本。俺、あれ好きだったからよく読んでてさ。こういう使わねぇ地味な魔法ばっかり覚える主人公の本なんだわ」

「何それ颯みたい。読みたい」

「前のいらねぇよな?」


 原稿用紙の文字をペンで書きながら、二人でふざけあう。告白の返事なんてもらっていない。わたし的にはそっちの方が良いし、颯はきっとわたしの口からポロっと出た戯言だと思っているだろう。だから、お互いに問い詰めたり話したりしない。


 玖美玲には、あの事件は教えないつもりだ。誰にも言いたくないし、二人だけの秘密にして起きたい。自分用の自伝も書いて、そこに書き込もうと思っている。もちろん、そんなことも颯に相談済みだ。彼はすぐに異空間から白紙の本を出す。その魔法もきっと右から三列目の棚の奥の方、上から三だったか、右から六だったかの本に書いてあったのだろう。


 この本もそろそろ書き終わる。玖美玲が見たら、毎日少しずつ増えていく本に驚くことだろう。だから、ドッキリ大作戦、そのことは敢えて言わないでおこう。


 卒業式まであと九日だ。ちょうどいい頃合いになってきていると思う。表紙や挿絵は絵が得意なさやかにお願いしている。プロ漫画家も顔負けのさやかの絵が一番光る部分は、その……エッチエロ系だが、申し訳ない……。これからあるかもしれないが今のところゼロだ。そうだなぁ、ヴィートレートの胸で泣いたところと颯を抱きしめたところが一番のポイントか?全然エッチでもエロでもないけど。


 自分用の自伝はさやかの絵を認識させる装置で、わたしと颯のシーンなんかは書いてもらうことにする。さやかにも知られたくないこともあるのだ。凛子ならどうだって?論外。


 不意に、わたしの部屋の扉がノックされた。


「待って下さいね、誰かによって入るか出るか決めるから」


 颯とわたしの二人きりを見られるよりは、わたしが自分で出た方が良い相手もいる。例えば凛子とか凛子とか凛子とか。


「わたし、さやかだよ。水樹ちゃん、表紙と裏表紙のデザインと頼まれてた分の挿絵、全部終了しましたよ~!」

「わっ、すごっさやか早っ!ちょっ颯ぉ、もう絵、終わったってさ」

「聞こえてる。夜桜、仕事早すぎだろ。ちょっと見してもらっていいか?」

「良いですよ、先輩。ほらほら、水樹ちゃんも見てみて。修正あったら、今日中にしちゃうから、ね?」


 さやかなら良いかと思い、わたしはドアを開けてさやかを中に招き入れる。さやかの絵を受け取った颯は、じっくり目を通し始める。さやかの目の下には少しだけ隈がある。


「ね、さやか、寝てないでしょ」

「ふぇ⁉だ、大丈夫だよ、水樹ちゃん、全然平気なの」

「駄目だよ、ちゃんと寝て。ね?とりあえず絵も終わったんでしょ?今から寝に行って下さいな」

「ん~、分かった。ありがと水樹ちゃん。お言葉に甘えるね?」


 女王もさやかも最高に可愛い。特に女王は色々な面があっていいと思うのだ。さやかは完全な癒し天使キャラ。これは本がかけるぞ!


「おい、水樹。見ないのか?」

「ぅあっ、颯!あ、見る見る!見たい見たい!」


 わたしは、何枚もある絵の中から颯が見終わった何枚かを貰って一枚見てみる。


「うっひゃぁ……すごい。さやかの技術が半端ない。何と言うかこう、日常の普通の場面が妙にエロいね。その上技術が安定していて綺麗だからこう、引き込まれるな。ぽてっとしつつ艶々な唇、真っ赤に染まる頬、はにかみ笑顔……白黒なのに全部伝わってくる」

「水樹、お前ホント語るよな」

「語るよ?主に本に関係することについて」


 わたしがコテリと首を傾けて颯の方を向くと、彼は口を隠してそっぽを向いた。


「颯?」

「何でもねぇからさ、ほら見ろよ。俺もこっち見てんだからよ」

「勝手に語るからよろしくね」

「おぅ」


 ツンデレの男の子感があるけれど二十歳なんだよね。さやかの絵で三割増しに美麗になってるからちょっとキラキラして見える。いいですな~♪


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