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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第二章
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魔物と車と男に要注意

 疑問点だが、魔人についてだ。魔人とは、人が望んでなるものらしい。少なくとも、一昨日の会話から見るに、そう受け取れる。わたしのちっぽけな脳味噌でどこまで理解できるか分からないが、女王に聞いて得る利益は少なからずあると思う。


 ……意外と少なかったなぁ。


「おはようございます、レムーテリン様」

「皆様、相変わらず早起きですのね」

「おはようございますわ、サティ、珠蘭。他の側近は何をしていますの?」


 二人を見てすぐに口調を変えられるまで、わたしは元通りに治った。友達を作るのにフレンドリーさは必須だ。


「そろそろ起きてくる頃合いですわ。あと、そろそろサンシンセンも参ります」

「そう、やっぱり貴族は皆早起きね。太腿おっさんが何故早起きかはわかりかねますが」

「おい嬢ちゃんなんか今言わなかったか?」

「気のせいだと思うよおっさん3」

「言っただろ!」

「側近の中でも二人が特に早起きよね。感心するわ」

「無視かよ⁉」


 スンが何やら叫んでいるが、わたしはスルーして二人に話しかける。何だか顔に、主上が戻ったと書いてあるようで、こちらも嬉しい。わたしの側近は皆可愛いから、自慢したくなるレベルだが、その側近に嬉しいなんて言われて萌えない方がおかしいのである。


「おはようございま~すぅ、ニハァッ……」

「おはようございます主上!お元気で良かったです!」

「ミズキ様、おはようございます」

「遅れてしまい申し訳ありません」

「おはようございます、お食事の希望は!」

「貫春、早すぎるわ。おはようございます、皆」


 眩しい笑顔が六つ、入って来た。イケメン聖清に眠そうなほにゃほにゃ陽満、きりっとした可愛い系の笑照、力み気味の貫春、落ち着いた冷静な真華。彼女は心なしかレルロッサムに似ている凛々しい女性だ。


「陽満、笑照、煌紳、泰雫、貫春、真華、おはようございますわ。皆元気です。颯、ホットミルク十一人分だからね~。わたしの側近と、乳繰りおっさん三人分」

「嬢ちゃん……⁈」

「もう二十歳です~だ。お、サンシンセン、おはよう」


 今度は思わず三つ子かと疑いたくなる三つの顔が現れる。もちろん、三つ子ではない。四つ子なのだ。


「おはよ、嬢ちゃん」

「よぅ、元気か!」

「早起きにゃあ慣れねぇな」


 女王が遅いな、と思っていると、颯が十一人分のミルクをテーブルに並べる。作るの早っ!と颯を見ると、ピースを顔の横に立てて笑う。今どきピースサインをする男子が健在だとは……驚きである。


「颯、わたしちょっと女王探しに行ってくる」

「おぅ、気を付けろよな」

「魔物はもういないってば」

「転ぶなよ!車と男に気を付けろ!」

「車はないし男がいても魔法があるでしょーが」


 相変わらず軽口は言い合える。これで心が和むのは隠しても隠し切れない。そう、ほっこりする癒しだ。


「部屋にはいない、ね」


 また窓越しの風景を見ながら泣いているかと思ったが、さすがに朝はいない。どこだ、と思って探していると、微かに足音が聞こえる。


「外……?」


 ベランダに出て見ると、そこでは風に結い上げた髪の後れ毛を揺らす女王が立っていた。さっきの足音は立ち位置を変えたときに出た音だったのだろうか。これは声をかけてもいいタイミング、だよね。多分。


 わたしは、「女王、おはようございます」と話しかける。さすがに一国の頂点に敬語を使わないのは嫌だ。前のわたしは罪悪感なんて0でした。すみません。


「あら、おはようございますわ、レムーテリン。皆お目覚め?」

「来てないのは女王とアスートとイズフェだけですよ。颯のホットミルクが待ってます」

「なら、すぐ行きましょう。今日は事情説明ですから、色々と考えていたのですわ」

「女王、今さら面会みたいな空気作らないで下さいね?」


 わたしが女王の肩を押すと、女王が僅かに顔をしかめる。普通に触ってしまったのが駄目だっただろうか。痛かった?と思って手を離すと、女王は振り返る。


「敬語はいらないと言ったでしょう、レムーテリン?女王という呼び名を変えぬのなら、そのままで構いませんわ」

「……そ?なら、敬語はいらないってことで。ちょっと申し訳ないけど、それが本人の希望なら、そういうことで。ほら、行こ、女王」


 女王を押しながらリビングに行く途中に、アスートとイズフェとも合流したので、四人でリビングに向かう。すると、足音を察知していたらしい颯が、すぐにミルクカップを三人に渡す。


「おはよう、アスート、イズフェ。おはようございます、穏音様」

「おっはよ、ハヤト」

「ハヤトのミルクは美味しいからね、今日もいい香りだよ」


 イズフェが手を振りながらカップを受け取る。アスートのミルクの香りを嗅ぐ動作が様になっていて彼のイケメン度が上がる。顔面率がめちゃくちゃ高い。美人と美男子のみだ。わたしも何故か美顔整形されてるし。


「おはようございますわ、ハヤト。懐かしい再会と喜びたいところだけれど……今はタイミングが悪いですわね。また後で、沢山話しましょう、ハヤト」

「はい、穏音様。お会いできて、お……私も嬉しいです。事情説明、今日はよろしくお願い致します」

「分かっていますわ。ミルク、ありがとう」

「いえ」


 凄い、女王と颯がちゃんと親族やってる!何だか始めて見る光景で違和感ばかりだけれど、ハヤトが王族の威厳を出しつつ女王を上にしてる感じがたまらなく良い!顔も整ってるし絵になりすぎる!何だか知らないけど興奮する!


「皆様、朝食が出来ましたよ!」


 貫春の声が響く。随分と早い、という顔を皆はしているが、わたしの側近とわたしは普通の顔で食べ始めようとする。この二人は本当に料理が上手くて、早く美味しく作れる。いつもこのくらいの速さなのだ。なのに盛り付けも完璧。本当に良い料理人を引き当てたと思う。逆に、二人がこれまで料理人見習いで誰かの専属料理人になってなかったのが驚きだ。


「いただきます」


 久々のユッチェントブレッドだが、わたしの最新ブレッドはあの昼食だ。正直、苦い思いでしかない。でも、これに罪はない。美味しいのは事実だ。まず、二人が焼くブレッドとあのブレッドは見た目も味も違う。


「相変わらず美味しいわね、真華、貫春」

「「お褒めの言葉、有難く頂戴致します」」


 そんでもって相変わらずいいお返事ですこと、と心で呟きながら、三杯目となるミルクを飲む。ブレッドに信じられないほどあう。


「颯、あんた天才だよ」

「いきなりどうした⁉一番らしくねぇ発言だな⁉」

「ミルク作り職人にでもなれば?」

「学園生活を謳歌するって決めただろ⁉」


 叫ぶ颯が面白くて思わず吹き出すと、皆がつられたように笑い出す。ついに本人まで笑い出してしまった。


 快晴。雲一つない青空。人口密度が少しばかり低くなったわたしたち一行。色々と話し合う会が再び、英雄たちを交えて開かれる。


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