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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第二章
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生命のやり取り

こうなったら、ヴィーナススマッシュストーム、何回だってぶっ放してやろう。わたしも荒んだな……人殺しに躊躇いを感じない。躊躇なんてしてられるか!


「颯、今ならわたし、必殺技何発やっても倒れない」

「っ、分かった。皆、表に出る。そしたら、全力で攻めろ!」


 颯が無詠唱でガードを張った。わたしも上から重ねて強力なガードを張る。ギィンという音がして、今までわたしが作ったどのバリアより強いバリアが現れる。無意識に力んでいる。でも、止めない。


「ぅらぁっ!」

「たぁっ!」

「よっ!」

「ふんっ」

「やぁあっ!」


 颯とさやかがイーリンワーナ、アスートとイズフェ、デウムがデヴァウムに剣を振るう。土煙で二人の様子が見えない。すぐに颯がわたしのバリアの中に戻ってくる。右隣にいる凛子がわたしと目を合わせて、軽く頷いた。わたしも頷き返す。


「ほぃっ!」


 凛子の突き刺しがドーッと二人に向かう。見たことがないほどの青い光が四方八方からイーリンワーナを突き刺す。追って颯が無詠唱で風の魔法をデヴァウムに向けて放つ。再び土煙が立ち、全く様子が分からない。でも!わたしは魔剣を突き出して構え、走りながら祝詞を叫んだ。


『この地に生ける 全ての生命よ 今我に力を貸し 今我に希望を与えよ 想うは全て 感じるは世界 命の輝きと共に 聖なる光よ 悪しき力を罰し 愚かな身に苦しみを 女神の吐息で 目覚めるは白き愛 麗らかな水に愛を乗せ 激しき滝へと変化せよ』

「トップクアラティ・ヴィーナススマッシュストーム!」


 土煙が消え初め、仲間が身を引いた瞬間、わたしは剣を振りかぶって二人の体に同時に傷が入るように必殺技をぶちかました。――つもりだった。



「「トップクアラティ・ダークヴィーナススマッシュファイアディ!」」



 二重展開のバリアをするすると通貫していく相手の攻撃。ドサッと颯の隣の地面に投げ出される体。鈍い衝撃。そして……



「ぐはああぁあぁぁああぁっ――!」



 この感覚をわたしは知っている。左の肩から胸にかけてが嫌な音を立てて弾け、ブチャアッと肉が裂けシャーッと血が噴き出す、不可解で違和感ばかりの感覚。そして、唐突に全身を襲う死にそうなほどの痛み。頭痛、腹痛、吐き気、浮遊感、耳鳴り、痺れ、麻痺……辛うじて保たれる心臓の鼓動。抉られる……生命力。



「「トップクアラティ・セカンドダークヴィーナススマッシュファイアディ!」」



 そして、最後の頼みの綱を引きちぎる再びのディ……わたし、死ぬ。



「死ぬんじゃねぇ水樹!」



 颯の声?わたしを呼び止めてる?でも、もうきっと死んでるから、幻聴だな。最後に聞こえる幻聴が颯だなんて、ちょっと悲しいかも。



「トップクアラティ・ゴッドスマッシュヒール!」



ふわっ……



 突然の浮遊感と共に、熱い痛みを感じる。先ほどのような濁った嫌な浮遊感ではない。これって、死んだってこと?



「目ぇ開けろ水樹!ガードが割られてる!張り直すぞ!チッ、お前の傷もまだ完全に塞がってねぇじゃねぇか」

「……は、やと?」


 ピクピクと痙攣する瞼を無理矢理開けると、颯の真剣な横顔が見えた。汗が滝のように流れ出ている。


「水樹、お前はまだ生きてるんだ!最強の魔物、いや魔人たちも生きてる。なら、水樹は生きて、アイツらを殺すしかねぇだろ!アイツらはお前とお前の仲間の殺人犯だ!」

「っ、わたし、生きてる……?ゴフッ」


 痛みに耐えきれず、思わず吐血する。草原を赤黒く染めた血と颯の焦ったような顔が、視界に映る。


「トップクアラティ・セカンドゴッドスマッシュヒール!俺が今、癒してる。お前はまだ、死んでない。ずっと生きてる。生き続ける!」


 頭痛も腹痛も吐き気も浮遊感も耳鳴りも痺れも麻痺も、颯の癒しでは消えない。その証拠に、先程の血がある。


 ああ……死にかける前より体が大変なことになっている。頭が割れそうで、音が上手く聞き取れない。足がふらついて、体を支えきれるかどうか……。息をする衝撃で血反吐を吐くような状況だが、戦わないわけにはいかない。口の端には血泡が浮かび、意識の中で確認できるのは思い切りぶちまけられる吐瀉物と血反吐。


 荒い呼吸。心臓が助けを呼んでいる。わたしは憎き相手を睨みつけた。死ぬ……おふざけじゃない、戯言じゃない。真剣に、死ぬ。自分で自分の余命宣告なんて、したくない。死にたくない。まだ……死ねない!


「魔人イーリンワーナと魔人デヴァウム……殺すんだ」


 イーリンワーナとデヴァウムは、わたしの必殺技を軽く受け流していた。颯より強いだろう。今のわたしならきっと、瞬殺される。


 生憎、ディなんていう残酷な魔法、わたしは手に入れていない。もちろん手に入れていたら何回だって使ってやろうじゃないか。でも……魔剣と仲間、魔法や技術なら、こっちにだってあるんだ!


「颯、この世界には、MPみたいなものって……ゲフッ……っ、ないんだよな?」

「エネルギーならあるけどな。それよりお前、喋るな!まさか、戦う気か?」

「信じろ」


 不安がるような顔をする颯を見て再び笑うと、傷跡から流れる血を舌でぺろりと舐める。


 バリアが破られたんだっけ。なら仕方ない。わたしは必死でバリアを張り始める。そう、本当に文字通りの意味で……必死。


「早く死んでほしいわね、リーミルフィ」


 相手の声を聴いた瞬間にどす黒い憎しみ、恨み、妬みがわたしの中で溢れ充満していく。いいじゃん……ひひっ……愉しみだなぁ。殺し合い、命の奪い合い、生命のやり取りが、ね……。


作者的にはもうドン引きであります。

ちょっと水樹さんが理解できないです。

この子怖いですね。

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