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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第二章
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第一の復讐

「ここの先に、アイツらがいる。まだ、二人の魔法紋が剥奪されたことはバレてないみたいだな。とりあえず最初は派手に……扉、ぶっ壊すぞ!」


 凛子が、前にわたしが二分程度の状況説明を受けた部屋の前で止まった。そして、両手をかざして少し俯く。そして、カッと目を見開いて、両手をひいて押し戻した。


バッカゥォォン――


 派手な音を立てて、ドアが木端微塵に砕け散った。


「やるじゃん、凛子」

「だろ?ひっひ」


 得意げに凛子が笑う。しばらく土煙で見えなかった前方が見えるようになる。そこには、ダウヴェとハイクトーエ、シャッテルとミサクーリが四人で話していた。わたしと右に並ぶ凛子、左に並ぶ心梨を見て目を丸くしている。だが、しばらくしてニヤリと笑う。


「まとめて処分ができるところに来てくれたわけね。左の黒髪は知らんが、巻き込んだって悲しむ奴はいないよね。一気に殺してあげる!」


 ハイクトーエが甲高い声で叫ぶ。


ホントに、反吐が出るからやめてくれないかな。顔面に血を吐き出してやろうか?


「残念ながら、その言葉、こっちの台詞!知らない奴はいないけど、アンタらが消えたところで涙を流す奴なんていないよ!」


 凛子が挑発的にそう言って、わたしたちに顎で指図する。わたしは頷いて、無詠唱で魔法をぶっ放した。


「な⁉」

「魔法紋を取り返したことを知らないの?皆さん。わたしはもう無敵だよ。わたしはもう麗しき姫騎士だ。左にはわたしが信頼する姫君、右にはとてつもなく強い親友がいるから、逆にあんたらがわたしたちを殺せたら拍手してやるよ」

「死んだら拍手なんてできないって、水樹」


 凛子に突っ込まれるが、わたしが放った魔法の水で前が全く見えないのだ。手加減したから、ターゲットである四人以外は被害が出てないはずだ。もちろん、こっちに飛んでくる反射魔法もない。それがあっても防げるように、ガード魔法もかけてある。


 今放った魔法は、『クアラティ・ウォッシュ』だ。典型的な水魔法だが、そのレベルはなかなかのものだ。クアラティとは、高級、上等、上質などという意味がある。これより上にトップクアラティがあるが、それはコイツらの主とやらにぶっ放せばいいだろう。その五人の存在価値なんてない。


 水がパッと消えた。これだけでは水だから存在を消すことはなかなか難しいはずだ。その予想は当たって、コイツらはギリギリで生きていた。皆、肩で息をしている。疲弊しきった顔でわたしを睨んでくる顔は憎悪で濡れていて、少しばかり気分が良くなる。こんな顔をわたしは毎日していたのかもしれない。さっきから反吐が出まくってしまう。


「何をする気だ」

「情報を搾り取るつもりでいるけど」


 さぁ、洗いざらい吐けとわたしが凄んで笑うと、ダウヴェは舌打ちをして話し出した。そんなに死ぬのが怖いのか。わたしは別にそこまででもなかった。でも……いざ死んだら、悔しいんだろうな。まぁ、コイツらが悔やんでも悔やまなくても本当にどうでもいいんだけど。興味があった方がおかしいし。


「我らが主は強大な力を持つお前らが憎かったそうだ。その黒髪を除いてな」

「それだけで殺そうとしたっての?」

「主は、ご自分が世界のトップにいるべきだとお考えだ。我らも同感だ。だから今すぐにお前らを殺す」

『クアラティ・ファイア!』


 ダウヴェが放った魔法は、わたしのガードにはじかれて消えた。罅一つも入らない。


「なっ⁉」

「その台詞好きだね。弱すぎて笑いが止まらない。で?他に情報は?」

「他には何もない」


 わたしは即座に苦しむ呪文をかける。ダウヴェたち四人がのたうちまわり始めた。


「ほら、話さない限りこうなり続けて死ぬよ?」


 そう言った瞬間、ダウヴェが叫んだ。


「一つだけある!主はあまり他の者に情報を話さなかったのだ!」

「そう。ならすぐに話せ」

「主は、とてつもなく強い。だから、今世界中に魔物を生み出し続けている。魔物の発生源は主だ」

「そう、それだけ……。じゃ、もう用済み。わたしたちを苦しめた代償として、じっくり死んでもらうとしようかな。ナイテクストとレルロッサムの分も、味わってもらう」

『この地に生ける 全ての生命よ 今我に力を貸し 今我に希望を与えよ 想うは炎 感じるは紅 命の輝きと共に 激しい舞を踊れ』

「クアラティ・ファイア!」


 ダウヴェには自分がさっきわたしに放った魔法で死んでもらうとしよう。そう思ってわたしは全力で叫ぶ。いつもなら無詠唱でぶっ放すが、今は荒れている。どうせなら、叫んだ方が楽しいだろう。


 目の前が、炎で燃え盛り始めた。ダウヴェの威力とは全く違う。経験が違うだけで、同じ魔法でもこんなに違うらしい。大発見だ。


 奴らが叫ぶ声が聞こえる。もっとじっくりやっても良かったんだけど。時間がないからね。主って奴を処理しなくちゃだから。


 わたしは一歩出ていたため、そっと下がった。そして、二人に話しかける。


「これで、次はコイツらの主を殺って終わり?」

「いや、まだみたいだぜ」


 右を見ると、凛子が歯がゆそうに唇を噛んでいた。


「ダウヴェ、だっけ?ソイツとあと一人、まだ死んでない。厄介だな」


 迷惑だなと思って左を見てみると、心梨もすっくと立っていた。


「成長したな、心梨。前はナイフを見てもオドオドしてたのに、今は人が二人死ぬところを見ても怯えないなんてな。今から目の前で殺人劇が行われるから、嫌だったら目、つぶってよね」

「大丈夫。一週間程度のブランクはあるけど、わたしも騎士特訓のジムで毎日剣の練習をしていたの。二年間ずっとよ?だから、強くなったと思うの。主って人と戦うとき、見せてあげる。だから水樹ちゃん、じっくりゆっくり、殺してね?派手な魔法はあんまり使わないでよ、トップクアラティは、トドメに使って」


 分かったとわたしが答えた瞬間、ダウヴェともう一人――ミサクーリがよろよろと立ち上がった。その後ろではハイクトーエとシャッテルが痙攣しながら死に向かっている。


「面倒くさいな、まだ死なないの?」

「そんなに簡単に死ねるか!」

「ダウヴェ、二人の魔法を合わせましょう。それでガードは破壊できるとして、その後二人の最強魔法をぶつければ――」


 ミサクーリがそっとダウヴェに耳打ちをしているが、戦闘経験豊富だと聴力や視力もアップするらしく、小声も全て聞き取れる。


「残念だけどミサクーリ!全部作戦が聞こえちゃったなあ。と、いうわけで……すぐ、死んでもらうから!」

『クアラティ・ファイア!』

『クアラティ・ウォーター!』


 ダウヴェはファイアが好きなのか本日二回目の同じ魔法をぶっ放してきた。聞くはずがないと知っているのに。ミサクーリに頼りすぎではないのか。対するミサクーリも、ウォーター。ウォッシュの一つ下の低級魔法だ。同じくガードに阻まれて消え去った。いくら行動が早くても、威力がなさすぎる。


「ね?言ったよね、わたし?さぁ……鬱陶しいから、バイバイ!」

『この地に生ける 全ての生命よ 今我に力を貸し 今我に希望を与えよ 想うは暴風 感じるはゆらめき 命の輝きと共に 全てを焼き尽くせ』

「クアラティ・ファイアストーム!」


 上質な炎の嵐に巻き込まれ、二人は呆気なく死んだ。初めて人殺しをしたというのに、わたしはそこまで怯えていない。むしろ、ゆっくり殺せなかったことにつまらなさを感じているレベルだ。


「奥の扉の向こうに、主とやらがいるみたいだ。すぐ行くよな?」

「行かないわけがないでしょ」

「水樹ちゃん、くれぐれもゆっくり、頼むね?」


 心梨が、腰の鞘に刺さった剣を抜きながら不敵に笑った。親の仇を討つんだから、ワクワクするだろう。わたしだって、恩人を二人殺されたのだ。ワクワクしないわけがない。


「凛子、さっきみたいに扉、ぶっ壊しちゃって!」

「ラジャー!」


 凛子は、先程と全く同じように、実に気持ち良く扉をぶっ壊した。


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