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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第二章
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くたばってたまるか

「誰か……誰か」


逆に聞くけど。あんたは誰?


「助けて……」


無理だよ。この状況じゃ、わたしが助けてほしいくらいだって。


「お願い、力が欲しい……」


わたしもだよ。魔法紋を返せって、何度言ったことか。


「ミズキちゃん」


何のよう?毎度思うのだけど、思い出せないんだよ。


「頑張ったけどわたし、無理だったみたい」


そういえば前、言ったっけ。頑張るからね、ミズキちゃんって、あんたは。


「無力だね、わたしって……」


無力なのはわたしの方だよ、あんたは無力じゃない、決して。


「もう、何も出来ないよ……」


わたしは荒んだけど、あんたはまだ荒んでない。希望ならあんたの方があるはずだよ。


「諦めるしか、ないのかも」


まだいける。頑張れ。お互いに、頑張ろう。


「ミズキちゃん……」


絶対に生きる。ここでくたばってたまるか。大丈夫だ。あがけ!


「会いたいね……」


わたしだって、会いたい。だから、わたしもあんたも平和になったら、会おう。


「会いたいなぁ」


生きていれば会える。だから本気で理不尽に向き合ってみよう。ね?







「起きたか」

「またあんたか」


 わたしが目を開けるとそこにはダウヴェがいた。コツコツと靴音を立てて近づいて来る。


「あの方から、情報の一部をお前に渡せとの命令が出た」

「何の情報がもらえる?」

「お前の他にあの方の支配下にいるのは、少なくとも三人はいる」

「わたしとナイテクスト、レルロッサムに、あと一人いるわけ?」

「その通り」


 ダウヴェはそう言って、指をパチンと鳴らした。同時に、体中が痺れて麻痺し、動かなくなる。


「情報の対価だ」

「大き、すぎる」

「いや、むしろ小さい方だ」


 わたしはダウヴェが上がって行った階段を見ながら、「あと一人」のことを考えていた。夢に出てくるあの人かもしれないと、どこかで思う。わたしたちはお互いに知っていて、向こうはわたしの助けを呼んでいる。でも、わたしはあの人が分からない。ナイテクストたちはどうなっているだろう。


死んでる?


 そう考えた瞬間に、背中を冷たいものがザッと走った。ここに来てから一週間くらい経っただろうか。わたしの周りに温もりがない。


「わたしも会いたい……」


 思わずこぼれ出た一言は、誰に向かって言ったものか分からなかった。







 久しぶりにあの三人が揃っているところを見た。嫌らしいニヤニヤ笑いを浮かべて、わたしを見つめる。ギッと睨んで、「何の用?」と尋ねる。


「あの方がお前にお会いしたいそうだ」


 そう言ってダウヴェが牢の鍵を開けて、ハイクトーエとシャッテルがわたしの足から鎖をとって、手の縄は取らないまま無理矢理立たせて歩かせる。


「どこに行く気?」

「あの方のところだって言ってるでしょ?」

「理解能力が発達していらっしゃらないようねー、麗しき姫騎士。今は捕われの庶民?」


 理解能力が発達していないのはあんたらだ、女二人。「あの方」のところがどこかを聞いているのに、話す気はないみたいだ。


 そして、飴色の扉の前についた。


「ただいま参りました」

「本日はあの方に変わってわたくしがお話しします」


 その声と同時に、前にある扉をダウヴェが開けていく。


「其方が代弁するのか、ミサクーリ」

「そうよ、ダウヴェ。だって、ソイツにあの方のことを知られたら困るでしょう?」

「そうだな」


 ミサクーリの声は比較的落ち着いていたが、その中にはやはりわたしに対しての憎悪が詰まっていた。


「ハバサワミズキ。わたくしはあの方の側近のミサクーリ。今日はあの方とアナタを近づけることが出来ないため、わたくしがあの方の話されるお言葉を代わりに伝えるわ」

「あんたの仲介はいらない。直接会話をする」

「出来ないわ」

「何故!」

「黙りなさい」


 ミサクーリがわたしの口に人差し指を向ける。刹那、わたしの口は開かなくなった。


「んっ」

「しばらくそのままでいなさい。まず……わたくしたちの主である方を仮に、Ⅹ様としましょう。Ⅹ様は、強い憎しみや恨みを抱く者がいます。それが、アナタやその仲間。理由は話さないわ。今、Ⅹ様が捕らえているのはアナタを含めて4人。これはもうダウヴェから聞いているわね。アナタと二人の仲間、あともう一人は自分で考えなさい。こちらに話す義務はないわ」


 冷静で淡々とした語り方なのに、不快感とイライラが湧き出てくる。


「魔法紋は全員から剥奪済みよ。既にアナタは気付いているみたいだけれど。Ⅹ様はアナタたちの息の根を止めたいと仰っていたから、残る命もそろそろね」


 ミサクーリが指をパチンと鳴らすと、口が動くようになった。


「ふざけるな!」

「何の台詞かしら?質問を受け付ける趣味はないわ、ダウヴェ、すぐに連れて帰りなさい」

「分かっている」

「待て!ダウヴェ、ミサクーリ!」


 抵抗も空しく、わたしは薄暗く肌寒い地下牢に戻され、たった二分程度の状況説明は幕を下ろした。







「なっ……」


あんたと夢で逢うのは四度目だよね。どうした?


「嫌だ……!」


何を拒絶してる?教えて。


「駄目!」


そうか……あんたも抵抗してるってわけね。


「駄目なの!」


わたしは無理かもしれないけど、あんたならできるかもしれない。


「やめて……」


諦めないで、やってやれ。本気を見せつけてやろうよ。


「ミズキちゃん……っ」


何だ?大丈夫、落ち着いて。いつだってここにいるから。夢でなら、会えるから。


「許せない……許さない。絶対」


また心が赤黒く煮えくり返ってる。苦しいのか?この炎の中にいるわたしまで熱くなる。


「絶対に」


苦しいのか。憎いのか。恨みで溢れてるのか。わたしと同じ。


「わたしは、絶対許さない!」



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