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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第一章
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身分鑑定と領地測定

 わたしは、履いていたスニーカーを脱ぎ、目の前に合った靴箱に閉まった。どこからか女性が現れ、ニコリと笑みを送ってくる。


「天乃雨からいらしたミズキ様でございますね?わたくしはサティ、漢字では沙庭と申します。ミズキ様の身分によって、仕えるか仕えないか変わりますので、今はわたくしをただの案内人と思って下さいませ」

「えっと、サティさん、ですね?お願いします」


 サティは、足音を出さずに、右側の廊下を進んでいく。


「本日ミズキ様がなされますのは、身分鑑定と地域測定でございます。まずは身分鑑定から行われます。こちらのお部屋にお入り頂いて、大きなベッドがございますので、そこにゆったりと、睡眠の準備のように横たわって下さいませ」

「はい。サティさんは……?」


「わたくしは裏でアナウンスを致します。ミズキ様のご様子がこちらにも伝わるように、ミズキ様のお洋服の襟元に小さなモニターを付けておきますので、触られることがないよう、十分にお気を付けください」

「つまり、わたしがベッドに寝たら、サティさんの声が聞こえるってわけですね?」

「はい、その通りでございます」


 サティの声は明るく、どこか静かで、とても耳に優しい声だった。わたしは、サティに促されるままに部屋に足を踏み入れた。


「ではこちらのベッドに横たわって下さいませ」


 わたしは軽く頷いて、ベッドに全体重を預ける。


『ミズキ様。わたくしの声が聞こえますか?サティです。今から身分鑑定を行います。出来るだけ動かないようにお願い致します』

「あっ、はい。お願いしまぁす」


 わたしは真上を向いて、軽く返事をした。途端に、ベッドしかない部屋の周りが青白く光り出し、ピンクが混ざり、黄色が混ざり……色々な色が混ざって最後に出来たのは、紫だった。


「お待たせ致しました、ミズキ様」

「ふぇっ⁉ど、どうしたんでしょう、サティさん」


 サティが部屋に入って来るなり、起きたわたしの前で跪いた。片膝を立て、左手を胸に、右手を地面に付ける跪き方だ。


「サティで構いません。貴女様は、領主血縁の方でございます」

「領主、血縁?」


え、それ結構凄くない?え、良いの?わたしがそんな大層な役目。


「はい。領主の娘様の従姉妹という立場に当たります」

「領主の娘様の従姉妹?わたし、そんなに偉い身分じゃなくて……」

「そうなのです。この世界では。それでは、次は領地測定です。別名、領域測定、領地測定とも呼ばれます」


 サティはどんどん話を進めていく。


わたし、きまずい。その前に、領主の娘様、勝手に従姉妹が出来ちゃうってことだよね?もの凄く嫌じゃない?


「えっと、はい、分かりました。向かいの部屋ですか?」


 奥に廊下はあるものの、部屋は二つしかなかった。勿体ない。左の廊下はないのだから、そこの部分のお金を削れば、絶対費用抑えられるよ!国会作るより。国会、右と左あるもんね。


「どうぞ、お入りください、ミズキ様」

「サティさ……サティの声は、また上から聞こえるんですね?わたしはその指示に従えば良いと」

「はい、その通りでございます」


 わたしはニコリと笑って、部屋の中に入った。


『サティです。では、測定を始めます。目の前にありますモニターに、両手をかざして下さいませ』


 わたしは、ふわりとモニターに手をかざしてみる。今度は淡いピンクと水色が混ざった色に見えた。所々に紫色がある。


『分かりました。どうぞ、お部屋を出て下さいませ』


 わたしは、黒くて浮いているモニターから手を外し、指示に従って外へ出た。


「貴女様は、ユラクソウィッテの王、ヴィートレート様、又は厳安様の娘様クィツィレア様、又は心梨様の従姉妹のお方です」


複名、かなり違うね。ややこしいね。


「勝手に従姉妹とか作っちゃってよいんですか?」

「そういう決まりですから。わたくしは貴女様に仕えることになりました。わたくしもユラクソウィッテの出身でして。ふふ、これからよろしくお願い致します」

「お願いします!」


えと、何が、何だって……?







「おや、沙庭」

「煌紳、泰雫。貴女方がミズキ様の側近なのですね」


 サティが、ホールを出るなり、二人に笑顔で言葉を投げかけた。


「側近とそう断定する様子は……ミズキ様は貴族なのだな?」

「どこの領地のどういう身分だ?」


 煌紳と泰雫は、本当に嬉しそうに笑ってくれる。


「ユラクソウィッテの、王の娘様の従姉妹でございますわ。本当におめでたい事」

「なんとっ!」


 二人とも歓喜の表情に溢れているので、落ち着いているサティに聞いてみる。


「王様の娘様は、いくつ?」

「14歳、でございますね」

「わたしと同い年だ!」


 わたしがひそかに心の中で小躍りしていると、今度は泰雫が光になった。


「沙庭、もうミズキ様をご案内して良いか」

「えぇ、構いません。この情報は、もう王に伝わっているはずですわ。ミズキ様、今から王にお話をいたします。緊張はいりませんわ、リラックスなさって。煌紳、わたくしも運んでくださる?」

「あぁ、構わぬ」


 煌紳も瞬時に光になって、ふわふわと浮く。サティが煌紳に触れると、凄いスピードで足元に魔法陣が現れ、わたしたちを飛ばせ始めた。


ちょ、少し付いて行けない気味なのは、わたしだけ?あぁ、目が回るぅ……。ファ、ファンタジー……。


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