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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第二章
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「何だァ、誰もいねぇじゃねぇか。つまんねぇな、野次馬共がいねぇとやる気が起きねぇ」

「それで結構。二人とも、行っちゃっていいよね?」

「もちろんだ」


 二人から力強い声が返ってくる。薄暗い路地で、わたしは二人の前に立って、リーダーの目の前にピシッと立った。


「殴られる気か?ヒヒヒッ」

「別に金を出しゃあいいんだぜェ?」

「だから、お金は出せないってば」


 普通に呟いてからわたしは、今までにも何回かカツアゲ相手に使ったことがあるスキルを選んだ。


「んなっ⁉」


 カツアゲの下に魔法陣を描いて、そこから大きな縄を出し、五人を縛る。


「ふざけるな!」

「ふざけてないよ、別に。さてと……、今から君たちはどうする?わたしはもう君たちの人生更生に付き合ってあげる義理もないから、自分で自分を変えるべきだって、わたしは思うよ?上から目線だと思うかもしれないけどさ、カツアゲなんてやってても得なんてないからね。損しか生まれない」

「……」

「ここで今、もっとしっかり生きたいって思った人がいるならわたしは、とても嬉しい。こんな貧相な言葉で自分を変えたいって思ってくれた人がいるならね。とにかく――」


 わたしは、優しい言葉を投げかけるのをやめて、一度目を伏せた後、ギラリと五人を睨んだ。


「今まで盗ったもの、全部出しな」

「ヒィッ⁉」


 わたしは一度縄を消して、この空間にバリアシールドを出す。カツアゲたちは、急いでものを出し始めた。その中のほとんどがお金だった。悲しい人たちだよ、ホントに。


「で、いるわけ?自分を変えたい人はさ」


すると、二人、スッと手を挙げた。


「前からやめたいって思ってたんス」

「ありがとうございましたっス」


 二人は、逃げるような足取りではなく、ゆっくりと地面を踏み込むようにして出て行った。ちなみにこの盾、ここだけ開けるみたいな小技も効く、便利シールドだ。


「で、残りの三人は自分はこのままでいいって思ってるわけね」


 三人とも無言でわたしを睨んでくる。仕方ない、とわたしはため息を着いて、もう一度縄を出した。わたしだって、殺すような物騒なことはやりたくない。出来るだけ改心の方向に持って行きたいけど……。


「残念だけど、君たちを国に突き出すよ。来世はもっと真面目な人になりなよね」


 その後この国の管理事務所に三人を連れて行ってから宿に行ったので、かなり遅くなってしまった。今はもう12時30分くらいだ。


「眠いねぇ……ぅふぁあ、ああいう奴らは多いよね、ホントに」

「邪魔だよな」

「世の中に存在するべきではないと、自分は思うぞ」


 うんざりしたような顔で、二人はベッドに寝転がった。宿では毎回最上級の部屋に泊まらせてもらっているから、とても綺麗なベッドだ。


「わたし、もう寝ていいかな?」

「もちろんだ、おやすみ」

「早く寝ろ、明日も早いんだ」


 レルロッサムに布団をかけてもらって、わたしは眠りについた。






「何で?何故?こうなってしまったの……?」


どこかで声がしてる。優しくてふんわりとした甘い声。でも、その声は苛立ってる。戸惑ってる。苦しそうに喘いでる。

知ってる。わたしはこの声の主を知ってる。


「ミズキちゃん……」


呼ばれてる、わたしが、彼女に。あぁ、どうしよう。知っているのに、ぼんやりとした意識の中だから、脳が働かないよ。でも今、彼女は困ってる。


「お願い……やめて!あっ――」


突然、雰囲気が真っ黒く染まっていった。心がキュッと縛られたみたいに動かなくなってく。苦しいよ。


「許せない!これ以上何かをしたらわたし、憎むわ!」


ゴオォッと心の中が燃えてる。憎しみと恨みでいっぱいになって、ついにもう抑えきれなくなって、わたしは叫ぶ。






「んあっ――」

「リーミルフィ!起きたか」

「レルロッサム?」


 わたしは、もそもそと布団を剥いでベッドに座る。窓からは、さんさんと眩しい太陽の光が降り注いでいた。


「今何時なの?一体」

「もう昼になる。貴女はずっと眠りこけていたんだぞ、リーミルフィ?何かあったのか?」


 わたしは、少し悩みこんでから、ふるふると首を横に振った。


「分からない」

「分からないって……明確な答えが出せないのか」


 誰だったっけ、あの人。わたしはあの人を知っている。でも、夢の中だからか、思い出せない。もどかしい……誰だろうか、あの人は……。


「とりあえず朝食――昼食を食べろ。お腹は空くはずだ」

「ナイテクストは?」

「魔物狩りに行った。少しでも強くなっておきたいそうだ。心配そうにしていたぞ。帰って来たら無事を報告しておけ」

「分かってるってば。それにしてもわたしったら、どうしちゃったんだろ」



 このころのわたしは、今からどんなことが起きるのか分かっていなかった。


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