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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第一章
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ザ・ファンタジー

 そう言って王が話し出した内容を簡単にまとめると、この世界露河では、最近魔物が暴れているらしい。夢楽爽の被害はかなり少ないため、今のところ無事だが、違う所では国民の三分の一が犠牲になったりするほどの魔物がいたりするそうだ。そこでわたしに、魔物退治をしてほしいらしい。しかも、全国に渡って。


そういうところはここに来て最初に言ってほしいよね。普通、転生したら魔物を倒してくださいって言われて最強になるとか、そういうのが定番と言うか王道と言うかって感じじゃないの?今頃?悲しすぎるし。


 そこでわたしが、夢楽爽の王に頼まれている、彼は慈悲深い素敵な者だ、と素性を隠して言えば、夢楽爽の順位も上がるのではないか、ということだ。


はいはいそーですか、どーせわたしは順位上げの道具ですか、そーですか。でも、こういう冒険物にちょっと興味はあったよ?読書の次に好きなのがアニメだから、少し憧れてたりしたしね。


「其方にも利益はあるぞ」

「そうですか?」

「あぁ。其方はとんでもなく強いからな、人々からの信頼を受け、崇められる。そうすれば、『夢楽爽の姫の従姉妹?立派な身分でも何ともないではないか、私から見ればただの平民だ』と蔑まれることもなく、『最近有名な救いの麗しき姫騎士!世界一のお方に出会えて光栄です!』と言われることが常になる。異世界人の其方は、そのような称賛をされた方が良いだろう。これ以上の無理はさせられぬ」


 王様は、女王と心梨、凛赤を帰らせてから人払いをし、座ってわたしと二人きりでそんなことを話した。でもわたしは、王様の言う通りに事が進むとは思えなかった。


「聞いたことがあります。わたしのような異世界人は、善を運ぶ者と悪を運ぶ者がいると。そして、わたしのように天乃雨から来た者は、……悪を運ぶ者が多いと」


 王が息を飲む音が聞こえた。わたしは、その息が「何故それを知っている?」という声に思えた。わたしは、微笑を浮かべて答える。


「心梨ちゃんから聞きました。全部。水晶玉を使って、二人で話してくれたんです。協力し合うことも、そこで決めました。だから、冒険に出たらわたし、きっと、この世界の人に天乃雨からの人なら、悪を運ぶに違いないって、絶対……絶対、誰も助けてくれませんから。世界一の人にはなれませんし、麗しき姫騎士も夢のまた夢です。きっと、悪を運びます、わたし――あ」


 瞳からぶわりと涙が零れる。そして、せっかく用意した繊細なドレスの上にぼたりと落ちていく。そっか。そうだったんだ。自分では気が付いてなかったけど、結構傷ついてたんだ。わたしが、悪を背負っているかもって知っても、あんなに冷静でいられたのに、今になれば、悔しかったんだ。


 誰かに、「アイツは悪を運ぶ」って言われるのが怖くて、きっと皆に嫌われてしまって、誰も味方がいなくなって……そんな未来を、頭の中では描いていたんだ。


「王様、わたし、わたし……善を背負いたい。5%に選ばれたい!」

「私は、其方は善を背負っていると思っていたが、違ったか?」


 王様は今日、聞いたことがない声を出しますね――そう言いたかったけれど、涙で崩れて言えなかった。甘くとろけるような、優しい声で呟き、そっとわたしを抱き寄せる。暖かい胸の中で、わたしは泣いた。みっともないほど泣いた。側近がいたら「はしたない」と言われるだろうけど、王様は言わなかった。そっと背中を撫でて、泣きたいだけ泣かせてくれた。






「ごめんなさい」

「構わぬ。人払いをしていてよかったな、誰かに見られていたら、必ず叱られてしまうぞ」


 悪戯っ子のような顔をした王様が笑うのを見たのは、夕日が出た時だった。光がわたしの左の頬と王様の右の頬を照らす。大理石だから、光が反射して、とても眩しい。


「わたし、やった方が良いですか?魔物狩り」

「無理をしないならな。苦しいなら、やるな」

「じゃ、やります」


 即答したわたしに驚いたのか、王様は目を見開いてポカンとわたしを見た。わたしは、ニコリと笑って見せる。


「わたし、もうスッキリしちゃいました。悪を背負ってても、わたしは正しい事しかしてないですから。わたしは、望んでここに来て悪を運んだわけじゃないから、自信を持って魔物を狩ります」

「良いのか?」

「一つだけ、条件を飲んでくれれば、良いですよ?」


 わたしは、思わせぶりにニヤリと笑みを浮かべる。王も笑みを浮かべて、問いかける。


「何だ?」

「王様も着いて来てください」

「はぁっ⁉」


 ビックリした顔に思わずわたしは吹き出して、王様に軽く睨まれてしまった。だって安心するんですもん、と答えたら、それは嬉しいが……とぶつぶつ言い始めて、それも面白かった。涙の花が枯れて、笑いの芽が生えた。


「まぁ、仕方がなかろう。私も着いて行く。それと、『わたくし』だぞ?」

「分かっておりますわ、王様?」


 王はもしゃもしゃとわたしの頭を撫でまわす。キャッキャとはしゃぎながら、わたしは立ち上がった。


「鏡とか、ないんですか?わたくし、この世界に来てから一度も、鏡を見ていないんです」

「そこにあるぞ」


 王様が指さした方向を見ると、銀色に煌く鏡があった。

「わっ、鏡だ!」


 わたしはタタタタッと駆け寄って、自分の顔を映してみる。


「あれ?誰よこの美人は……」

「其方であろう」


 後ろから王様が覆いかぶさってきた。この美人がわたしだと言うことは証明されたが、わたしはこんなに美形じゃない。玖美玲ちゃんより可愛い。そして、綺麗だ。麗しき姫騎士、夢じゃない!


「この世界に来ると、天乃雨の人は美形になるんですか?」

「知らぬ」


 興味がなさそうにふいっと横に顔を背けて王様は行ってしまった。わたしも慌てて追いかけると、王様が人払いを解除した。扉から、側近たちが出てくる。


「随分と長かったですね、お二人とも?」

「いや、まぁ、な」

「えぇ、そうですわ」


 わたしたちはゆったりと笑って誤魔化す。吹き出さないように頑張って堪えた。凄みのある笑顔にも負けないよ!あの「可愛い」はお世辞じゃなかったからね、もうわたし、麗しき姫騎士だから!誰にも負けないんだからね!


 わたしは側近たちと友達二人、そして王様と女王様ににっこりと笑いかけた。わたしの冒険が始まって行く。いよいよ、ファンタジー!って感じだ。やるぞー!


ここで、第一部終了って感じですかね。

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