中学時代のピッツァ
「レムーテリン、一度休憩だ」
ぷっはぁ、とわたしは、王様に休憩時間を貰った後、息を吐き出した。王様はチリンとベルを鳴らす。と、すぐにフルーティーな香りのする紅茶がやって来た。王様が出す課題は、出費と支出の計算と、誤字脱字のチェックだった。わたしは数学より国語が得意だから、誤字脱字チェックの方が比較的楽だった。というか、出費支出計算はわたしがやると間違えそうで怖い。
「王様、少しお話が」
「ふむ、何だ。また特産品の話か?」
「えぇ、そうですわ。ですが、新しい特産品の話です。それも、三つの」
「ほぅ、三つ!多いな、興味深い。聞かせてもらおうか」
思ったより軽く話を切り出すことが出来た。まさに理想のタイミングだ。よっし、頑張るぞぉ!
「わたくしが出そうと思っている特産品は、マンガとパフェとピッツァですわ」
「『マンガ』と『パフェ』と『ピッツァ』か?知らぬな」
「ふふっ、それはそうですわ、わたくしの世界のものなのです。この世界には内容ですから、どうでしょうか。一度試作品を作ってみましょうか?」
「そうだな、またある部屋を貸そう。そこで其方が自分で作れ。良いか?」
「では、材料の発注を頼みたいですわ」
「よかろう」
やった!とわたしは心の中でほくそ笑みながらガッツポーズする。必要なのは、あらゆる果物、甘ふわクリーム、んーっ、チョコレートもコーンフレークも欲しいなぁ。
マンガは、どうしよう!白紙の本、で大丈夫かな⁉側近の誰かに絵を描いてもらって、実際にある本をストーリーにして一編だけ描いてもらう、みたいな?
わたし、ピッツァは詳しいんだよね。友達の誕生日に生地もソースも手作りのピッツァが食べたい!と言われて、誕生日会に招かれた友達皆でピッツァを必死になって作ったんだっけ。懐かしいな~。っじゃなくって、えーとまずは、強力粉、薄力粉、ドライイースト、砂糖と塩とお湯はまぁ自分で調達できるからいいとして、オリーブオイルとカットトマト、ニンニク、玉ねぎ、塩コショウ……も自分で行けるね。チーズとバジル、これで大丈夫。
パフェとマンガが心配だなぁ。本の作り方?うん、大好きな本に詳しく書いてあったよ。でもね、和紙の作り方と膠の作り方とインクの作り方と……こういう断片的なのしか覚えてないんだ。結果的にどうやったっけ?記憶ゼロ。
パフェも、自分で作ったことないんだよねー。女子力低い?当たり前じゃないですか、パフェも「きゃーっ大好きだわーっ」とかじゃなかったし。お菓子を作ってる時間を読書に当てたい人だったからなー。彼氏?いたら怖いよ!異性に興味が湧かないの、ちっとも!凛子なんて「アイツいいよね」「でもアイツも迷っちゃうー」「浮気しちゃう?二股、三股……無限にしそうだー」とか言ってたのにね。親友は恋沙汰に興味なしです、はい。
「其方、聞いているか?」
「ふえっ⁉あぁっ、はい、欲しいものですよね。あらゆる果物と甘くてふわっふわのクリーム、チョコレートとコーンフレーク、白紙の本ですわ。あの、本の作り方が分からないので、白紙の本に書き込む……やっぱりおかしいですね」
「本の作り方が分かる人材を派遣しよう。本を作るところから始めたらどうだ、紙に絵を描いて組み込ませることもできるだろう」
「分かりました!あと、ピッツァですね。強力粉と薄力粉、ドライイースト、オリーブオイルにカットトマト、ニンニク、玉ねぎ、チーズとバジルです」
「『カットトマト』と『ニンニク』『タマネギ』『チーズ』はこの世界にはないぞ」
「わっ、そうでしたわ!えっと、カットレッデミーアとヴィク、センファ、チューアです!」
トマトがレッデミーア、ニンニクがヴィク、玉ねぎがセンファ、チーズがチューアだ。唯一似てるのが、チーズとチューアかな?これは比較的覚えやすかったんだよね。
それにしても、王様からなかなかの利益を得られた。最下位の国なのに予算を削ってる感じがして、少し罪悪感もある。でも、でも!これにより、最下位から最上位になるんだもん!予定だけど。
「さぁ、また始めるぞ、レムーテリン」
「あ、分かりましたわ」
わたしは紅茶を一気に飲んで、手元にあった資料に目を向けた。




