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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第一章
3/102

コウシンとタイダとユラクソウ

国の名前なんかは軽く読み飛ばしていただいても構いません。

ものすごく厄介で面倒で疲れますので。

ここで読むのストップ、がないことを祈っております。

 ふわりと浮遊感の後に、猛烈な吐き気が込み上げてきた。


「……様、ミズキ様。お目覚めになられましたか?」

「……、青い光、さん?」


 わたしは、ゆっくりと目を開ける。そこは、他の土地より少し高くなった丘だった。後ろに、あの木がある。芝生のような草に、手が触れている。そして頭は、誰かの膝の上……?


「わっ!御免なさい、わたし、男の人の膝に頭を乗せた事なんてないものだから、動揺しちゃう。嫌だ、もう、あぁっ、御免なさい、ホントに!」

「いえ、構いませんよ、ミズキ様。私はミズキ様の側近、コウシンと申します。漢字では、煌紳です」

「煌紳……緑の光さんは?」

「私はこちらにおります、ミズキ様」


 煌紳は、木の方に背を向けて座っていた。緑の光はわたしの頭部付近に座っているようなので、体をひねる。


「私は煌紳と同じくミズキ様の側近、タイダと申します。漢字は、泰雫です」

「泰雫……二人とも良い名前ね。格好良い」

「有難う存じます」

「それより、何でわたしは水樹様なの?ここはどこ?」


 わたしは、煌紳と泰雫に説明を求める。


「ここは、ロガ。漢字では、露河と書きます」


 煌紳の穏やかな声の響きから、説明は始まった。

 ここはロガ、露河という世界。ちなみに、わたしがいた世界は、天乃雨、テノウというらしい。わたしは、露河に呼び出された天乃雨の人間らしい。


 煌紳と泰雫は天乃雨などから人間を呼び出すセイセイ、聖清という役目を負っているらしい。聖清は、「何か」を感じ取ることが出来るらしい。露河に必要な「何か」を。その「何か」を持っている人間を、他世界から呼び出すらしい。


 「何か」を持っている人間は、その人間が呼び出される一か月前、その人間が載っている写真全てに、木――スイジュ、水樹というらしい――が写るそうだ。そして、その木を見ると、苦しみ、恐怖などが訪れるという。ちなみに木は呼び出される予定の人間以外には見えない。


 露河は、全世界の先進国ならぬ先進界、他の世界から人間を呼び出すことなどたやすいのだそうだ。他の世界から呼び出された人は、最初は様付けがされる。それから、聖清と共に身分鑑定をするらしい。その人間は、この世界露河にとって何の身分に当たるのか、そして、どこの地域の区域の民に相応しいのか。


「身分は平等じゃないの?それに、地域って何?」


「いえ、違います。大きく分けると、平民と貴族に分けられます。平民にも、貧民、平民、富豪がいますし、貴族にも、下級貴族、中級貴族、上級貴族、領主血縁と分かれております。呼び出された方が平民の場合、私たちは故郷で暮らすことになります」


「地域とは、天乃雨で言う国です。日本、アメリカ合衆国などの。この露河には、一位『コウリオウィート』通称興利桜、二位、『リンケインルーフィ』通称琳恵、三位『レイカクィンツィア』通称麗歌、四位『ヨーカリエラン』通称陽華莉、五位『ロウフィーアニア』通称楼符、六位『スィンクツィーナ』通称須韻玖、七位『ツァンツェヴィーロ』通称津庵津、八位『ユラクソウィッテ』通称夢楽爽、ですね」


ちょ、待った。コウリオウィート、リンケインルーフィ、レイカクィンツィア、ヨーカリエラン、ロウフィーアニア、スィンクツィーナ、ツァンツェヴィーロ、ユラクソウィッテ……?


「コウリオウ、リンケイ、レイカ、ヨウカリ、ロウフ、スィンク、ツァンツ、ユラクソウで通用しますが、公の場では本当の名称で言わなければなりませんので、お覚え下さい」


ぅわぁお、わぁお。


 煌紳や泰雫が暮らしているのはユラクソウィッテ、通称ユラクソウ、夢楽爽。今からわたしは、身分鑑定をしにいく。わたしがどの地域で過ごすのが良いかによって、住む地域を変えるそうだ。


「ミズキ様。私に、『聖清型へ』、と言って下さい」

「へ?えっと、聖清型、へ?」


 わたしが煌紳の方を見てそう言うと、いつの間にか立っていた煌紳の190㎝以上あるであろう体が青白く光り始め、姿が歪む。気が付いたときには、煌紳は青い光に変わっていた。


「こっ、煌紳⁉」

「私たち聖清は、光と人の姿を持つモノです。光になれば何でもできますし、人になれば動きも人間と同じようにできます」

「いやっ、わたし、煌紳っていう男の人の膝に乗せてもらって……わたしの友達が知ったら、どんなふうに冷やかされるのか……恥ずかしい、御免なさい、煌紳、わたし、はしたない……!」


 煌紳はフッと笑ってわたしを見た。いや、光だからよく分からないが。


「私たちはミズキ様の側近、何でもお申し付けくださいませ。ミズキ様のお気分が優れなくなりましたら、私たちがお治しするまで。側近としての責任は、私にも泰雫にも、あると考えていただきたい」

「う、うん。でも、煌紳は男性でしょう?わたしとスキンシップなんて、いくら側近だからって許してもらえるの?」

「はい、ミズキ様の湯浴み関係に口を出さなければ、文句をいう人はいないでしょう。それに、聖清は他世界から呼び出される方が来るたびに、側近として、聖清として、この木、スイジュの下に向かうのです。そして、その方がいらっしゃったとき、聖清は側近となるのです」


 ふぅん、と相槌を打ちながら、わたしは薄く微笑む泰雫に問いを投げかける。


「泰雫、さっき、領地の名前を教えてくれたでしょう?一位や二位って、何のこと?」

「この世界露河では、一年に一度順位付けが行われます。露河には八国あるのですが夢楽爽は八位。最も下なのです」

「もう一回聞いて悪いんだけど、何で呼び出されるんだっけ?」


 わたしが二人に聞くと、二人とも親切に詳しく教えてくれる。


「この国に関わる大きな役目を背負う人々が、他世界にもいます。露河は、他世界よりも早くその事実を解明し、呼び出すための装置を作り出し、呼び出す権限を得て、他世界から人を呼び出しているのでございます」

「つまり、わたしはこの国に何かをもたらす人ってことね?了解。それでわたしは、どの身分に相当するかを確かめに、身分鑑定場所に行くわけだ。何かをもたらす、その何かは、善悪どちらか、分からないんだよね、今は」

「はい。ここは露河の一番南、スイジュ庭園という場所です。スイジュ庭園には季節、温度などがありません。スイジュ庭園で身分鑑定をした後、魔法陣で住むべき場所に移動します」

「分かった。それならすぐ身分鑑定場所に行っちゃおうか。煌紳に触れれば、すぐに行けるってことだよね?」

「はい」


 煌紳の光に手を触れると、煌紳はゆっくりとふわふわ動き出す。丘の崖を超えると、何もない大理石がただただ広がっているような、まっ平らな広場だった。


「そういえば、煌紳。元の世界には、ちゃんと戻れるよね?」

「はい。行き来することはできます。ただし、ミズキ様が住まわれる地域の領主様の規則に基づいての休暇、という形で戻られることになりますので、ミズキ様はこちらの人間としてカウントしても問題は全くなく、向こうの人間としてカウントしても問題はございません。戻られる期間は少しとなる場合が普通ですので、戻られる期間に懐かしさを感じ取り、故郷の暖かさを思い出されると良いかと思います」


 わたしは、お風呂のことに関しては泰雫がやるのか、という質問をしたが、煌紳は笑って「女性の側近を入れ、お召し替えやお風呂を済まされるかと」と言った。


貧民だったらどうするんだろうね?聖清は離れて、自分でやるようになるのかな?あ、そっか。さっき聞いたこと、もう忘れてたよ。


 本で学んだ知識をフル活用して読書するといういつもの記憶力アップ講座では記憶力がアップしないのか、などとくだらないことを考えていたら、煌紳の「もう着きましたよ」という声が聞こえた。


「もう?」

「はい。ここからは側近は付いて行けませんので、よろしくお願い致します」


 緑が広がる中、白が輝く大きな建物に案内された。煌紳も人の姿に戻って、二人でニコリと笑ってくれる。


「どっ、どこをどう行くの⁉」

「私たちも良くは知りませんが、聖清の先輩によると『行けば分かる』そうです」


 泰雫の力強い声に押されるように、わたしはホールに一歩を踏み出した。



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