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何故か王様になっちゃった件について。  作者: 白玉 ショコラ
第一章
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料理パワー

 わたしは、自分の部屋に戻って、うふふーんと鼻歌を歌いながら本を読み始めた。


「良かったですわね、レムーテリン様」

「貴女様のおかげで羽根ペンが流通致しますわ」

「そうね、サティ、レーランティーナ。わたくしも嬉しいわ」


 そっと本の紙を撫でる。革張りの表紙に手を滑らせると、軽く指が止まった。見てみると手の汗で少しだけ色が濃くなっている。


「こんな革張りの本も素敵よね。わたくしの世界ではなかなか手に入らなかったのよ」

「そうなのですか?あぁ、その本は、以前レムーテリン様がわたくしに貸して下さった本ですね。絵のデザインや構図、色遣いが非常に綺麗ですよね」

「まぁ、珠蘭もそう思っていて?」

「えぇ。この絵で埋め尽くされた本があれば、わたくしはすぐに買ってしまうと思いますわ」


……ん?絵で埋め尽くされた本?それって、もしか。


「マンガで代用できない?ってか、それまんまマンガじゃない⁉」

「レムーテリン様⁉どうなさいました?」

「あっ、その、新しい特産品を、一つ、思いついて。マンガと、あとそうだ、新しい料理なんかもいかがかしら?」

「マ、『マンガ』?」


 わたしは、側に置いてある紙にサラサラと説明と絵を描いていく。


「マンガは、レーランティーナが欲しがっている絵と会話だけでストーリーが進む本よ。いかがでしょう?絶対に本好きには売れると思いませんこと?」

「そうですね、少なくともわたくしは欲しいですわ」

「わたくしもです。絵だけなら、文字を目で追わなくても済みますから」


 サティは本が少しばかり苦手のようだった。いいじゃない、わたしが大の本好きにしてみせるよ!ん、マンガ好きになっちゃわない?あ、漫画が好き!から本も読みたい!に意識を変えればいいのね、うんうん、難しそう!


「ならばマンガを出しましょう。この世に本があるんですから、製本工房?とかそのあたりにマンガを説明すればできるわよね。あっ、もちろん、王様やクィツィレア様、凛赤様にもお伝えするわ。あと、新しい料理は何がいいかしら……そうね、パフェとピッツァ!」

「『パフェ』と『ピッツァ』?」


料理パワーすごっ!


 料理の話になると、男性側近が一気に集まってきた。前々から耳を傾けていたのだろう。そんなわたしは心で抱える動揺を隠して笑顔でゆっくりと微笑む。


「えぇ、そうですわ。パフェは甘いもので、ピッツァはまぁ、基本的にはしょっぱいですけれど辛いのも甘いのもありますね。酸っぱいのももちろんあります」

「わたくしは『パフェ』が食べたいですわ」

「わたくしも」

「私は『ピッツァ』が」

「私は両方食べたいです」

「皆で両方食べませんか?」

「いいですね!」


いやちょっと側近くんたち、ボクを置き去りにしないでくれないかい?皆で食べよう!いいね!食べ物がないよ!おぉぅ!……という様子が脳裏に浮かぶよ?


「待ってくださいませ、皆。まずはパフェとピッツァが出来ていないわ。両方とも専属工房なんかを立ち上げたいと思っているの。まずは、マンガもパフェもピッツァも、王様にお話してみるわ。王様のお仕事を手伝う日が近いから」


 そう言って……







 その日が来た。


「待っていた、レムーテリン。早くこちらへ来い」

「失礼致します」


ハァ、精神が試されるよ、こりゃ。自分勝手と言うかなんというか、「あっはっは」な王様に、果たして羽葉澤水樹は付いて行けるのでしょうか!



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