プロローグ
羽葉澤水樹は、今日も図書室で本を読んでいた。今日の本は、心理学。明日は、物語。昨日は、仏教。水樹の好むジャンルは全てだ。基本、水樹は本が大好きなのである。
「水樹、今日も朝から読書?ホントに本好きだねぇ」
「あぁ、凛子。うん、朝の図書室は静かだから」
水樹の親友、夏端凛子が、早朝から図書室にやって来た。ちなみに今は、朝六時半である。水樹は六時十五分から学校の図書室に来て、読書をしているのだ。
最近は凛子も朝は早めに来て、二人で読書をするようになった。もちろん、学校には先生も二人くらいしか来ていない。図書室の司書の先生もいないなか、水樹と凛子は二人で読書をするのである。
「そういえば。今日、さやか、熱が出たから休みみたいだぞ」
「えっ、さやかちゃん、熱出ちゃったの?今日、学校終わったらお見舞いに行こうか」
「そう言うと思って、今日はお金、持ってきたんだ。さやかの好きなもの、買っていくだろ?」
「もちろん。さやかちゃん、チョコレートパイが好きなんだよね。お店、寄っていこうね」
二人の親友、夜桜さやかのお見舞いの計画を立てながら、二人はお互いに好きな本を読み始めた。
「すみません、チョコレートパイ、一つお願いします」
「はい、どうぞ。685円です」
水樹は、ビニール袋に入ったチョコレートパイを受け取って、小銭を差し出した。チョコレートでコーティングされたパイは、齧るとサクッと気持ちの良い音を立て、中からまろやかでクリーミーな生クリームが流れ出てくるのだ。
「おい、さやかのだけ買ったのか?一つって聞こえたけど」
「そうに決まってるでしょ?わたしたちの分なんて買えませんし買いませんよ」
「あたしの腹、鳴りまくりだぞ」
「どうぞ、ご勝手にお鳴り下さいな」
凛子に睨まれつつ、水樹はさやかの家へと向かう。さやかの家は一軒家で、マンションの凛子には憧れなのだそうだ。水樹の家も一軒家だが、凛子曰く「ちょっと違う」そうだ。水樹としては、少しばかり悔しい。
「すみませーん、さやかちゃん、いますか?お見舞いに来ました!」
『あら、水樹ちゃん?久しぶりね。凛子ちゃんも一緒かしら?少し待っていて、鍵を開けるわ』
その声と同時に、さやかの家の鍵が開いて、さやかのお母さんの美人顔が出てきた。
「いらっしゃい、水樹ちゃん、凛子ちゃん。どうぞ、入って」
「失礼します」
「お邪魔しまぁっす」
始まりましたよ!ここからどんな風になるのかなぁ、みたいな、ちょっぴりの希望を持っていただけたら幸いです。




