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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第95話 新たな奴隷……じゃなかった仲間の受け入れと自己紹介

「じゃあマリー、ウチの両隣の空き家になってる建物を俺達に貸してくれるってことでいいんだよな?」

「はぁ~~っ。ええ、ええ! もういいわよ。どうせ今更断わったりしたら、貴方達どんな因縁付けてくるか分からないでしょ? なら、私なりの()を取るまでのことよ! それに……(そっちの方が都合がいいしね)」


「んっ? それに? なんだって?」

「……いえ。今のは忘れてちょうだい」


 マリーは大きな溜め息をつくと、諦めたように承諾してくれた。彼女なりの利を理解して納得してくれたようだったが、最後言葉を濁したところをみると別の思惑もあるのかもしれない。


「良かったですよね~。え、え~っと……」

「あっ、自己紹介がまだだったね! ボクの名前はジャスミン! 『ジャスミン・ライラック』って言うんだよ。見ての通り西方地方の大都市『フレンツェ』から来た商人なんだ~。夢はデッカくこの世界で一番の大商人になること! みんなぁ~、よろしくね~」

「ではジャスミン……で、よろしいですかね? ワタシの名前はシズネです。ま、貴女ならばシズネ様やシズネお姉様と呼んでも……」


「じゃあシズネさんだね! よろしくよろしく~♪」

「えっ? あっ、いやだからシズネ様かシズネお姉様呼びをしていただけると……ちょ、ちょっとぉ~っ!!」


 シズネさんが安堵させるようにその子に声をかけると、互いに自己紹介するのを忘れていたことに気付いた。その子の名前はジャスミンと言うらしい。しかも技術と商人の街である西方地方から来たようだ。しかもシズネさん自ら呼び名を指定したにも関わらず、難なく勢いと挨拶だけで華麗にスルーできる能力の持ち主だった。


「フレンツェの大都市から来たって言うのか!? あっ、俺はシズネさんの夫で名前はタチバナ・ユウキってんだ。よろしくな、ジャスミン」

「タチバナ……ユウキ? お兄さんって、なんだか覚えづらい名前してるんだね(笑) もう面倒だからボクは『お兄さん』呼びでいいよね?」


「お、覚えづらい名前って……あ、ああ。もうそれでいいわ」

(このジャスミンっての、呆気らかんとした態度と時折みせる傲慢さは今までの誰とも違う独特の雰囲気があるよな。しかもだからと言って適当な言動じゃなくて、合理的というか理論的に自分に有利になるよう物事を円滑に進めているし……商人ってみんなこんな感じなのかな?)


 いつものように俺の名前についてを弄られ、結局は「お兄さん」呼びとなった。一瞬反論しようかとも思ったのだったが、「これ系の人物には無意味なことだろう……」と諦めてしまう。だが商人の押しの強さと物事を進める話術には舌を巻いてしまったのも事実である。



「ファ~ン♪ ファ~ン♪ で、どうなったのじゃ? その娘を雇うのかえ?」

「もきゅ~」

「私は別にどちらでも良いぞ! まぁ仕事が楽になるのなら、むしろ大歓迎だかな! はっはっはっ」


 今まで話の蚊帳の外だったサタナキアさん、もきゅ子、アマネがこれ幸いと自らの出番を獲得するため、強引に会話へと入ってきた。きっとタイミングを見計らい、ここぞとばかりに押しに来たのかもしれない。


「ええ、そうですよ。貴女達の無償労働者(奴隷仲間)……いえ、仕事仲間(タダ飯食らい)がお一人ですが、獲得できましたよ! みなさん、この小娘……いえ、ジャスミンに各々挨拶をしてくださいな」

「(おい! いつの間にかシズネさんの中じゃ、俺達のことをマジで『奴隷』扱いの位置づけにしてやがんぞ! ついでにジャスミンのことも『小娘』とか侮ってるし。しかもしっかりと述べてから言い直してやがるし)」


 パンパン♪ シズネさんは注目するように手を軽く叩くと、自己紹介するように促す。だがそこで新たな事実、俺達が奴隷扱いだということが判明したのだった。ま、確かに最低限の衣食住の保証はされていたのだが、肝心の給金については一切話してくれず薄々はその待遇だと嫌でも気付いてしまう。


「みんなこんにちは! ボクはジャスミンって言います。よろしくよろしく~♪」


 ジャスミンは元気一杯と言った感じの笑顔で、サタナキアさん達に握手をしていった。とは言ったものの、サタナキアさんとの握手は剣身ではなく持ち手(グリップ)部分を握ってだったが。


「お~! お主、元気な娘じゃのぉ~♪ (わらわ)の名は魔神サタナキアなのじゃ。気軽にサタナキアと呼んでもよいのじゃよ。ちなみにこの赤いドラゴンはもきゅ子なのじゃ」

「もきゅもきゅ♪」

「剣が喋るなんてボク初めて見たよ! しかもしかも子供とはいえドラゴンまでいるなんて~、みんなすごいなぁ~♪」


 サタナキアさんともきゅ子も、明け透けのないジャスミンが気に入ったのか、好意的に挨拶を済ませていた。初めこそジャスミンも驚いた様子だったが、すぐに「ま、世の中不思議なことがあるもんね!」っと自分なりに二人(?)の存在を受け入れていた。


「ふむ。私の名前はアマネだ。職業は一応ここのウエイトレスもしてるのだが、本職は『勇者』なのだぞ! 以後見知りおけいぃぃぃぃっ!」

「うにゃ??? うん。見てるね」


「……あ、あの見知りおけというのはだな、知っておけというかなんというか、そのような意味合いで……」

「ん??? お姉さんの名前が『アマネさん』なんだよね? ボク、ちゃんと聞いてるし知ってもいるよ」


「お、おう。確かにそれで間違いではないのだが……」

「うんうん。それでそれで?」

「あうあうあう」


 アマネとジャスミンは不思議な雰囲気で互いにやり取りをしているようにも見えるが、実際ジャスミンに優勢の話ペースとなっていたのだ。普段ボケだかなんだか分からないアマネの歌舞伎に対抗するには、このように『素』で対応すればいいのだと思い知らされてしまう。


「(おっほぉ~♪ あのアマネですらジャスミンにとって、赤子を捻るような感じになってるぞ。これが空気が読めるけれど、敢えて読まない商人の力ってヤツなのかよ……)」


 マジ商人半端ねぇ(パネぇぇぇっ)!! などと感心しながら、二人の会話を見守ってしまう。


「最後は私のようね! 私の名前はマーガレットよ。親しい者にはマリーなんて可愛らしくも呼ばれているわね。ちなみにだけど、私の家はこの世界の悪役の最たる頂点に君臨する「ギルド」で、私はそこの(おさ)をしているわ! どうお嬢さん?」


 最後の大鳥モノと言わんばかり仁王立ちをして、マリーはふんずり返りながら偉そうな自己紹介をしていた。少し見下すかのように下目使いでジャスミンにそう叫んでいた。それはもはや挑発的とも言える行為にも見える。


「(というか、マリーよ。すっげぇ悪役っぽい自己紹介になってんぞ。自分()ディスりまくりじゃねぇか。もしかしてジャスミンのこと試してるのかな?)」


 俺はハラハラとしながら、二人のやり取りを見守る。……というか、今日の俺ずっと見守ってばかりだな。


「へえぇぇぇぇっ! マリーさんって、ギルドの長なんだぁ~♪ さっきもこのお店の両隣の建物が自分のところだ! な~んて言ってから、すっごく権力のある人なんだろうなぁ~っては思ってたけれども、そっかそっか。納得だよ! でもそうなると今の内からマリーさんと仲良くしておけばいいんだよね♪ よろしくね、マリーさん♪」

「ぅぅっ。よ、よろしく……おねがいね」


 ジャスミンはそんな権力のあるマリーにすら(おく)することもなく、自分の思いを正直に打ち明け笑顔で右手を差し出していた。意地悪してやろうと思っていたマリーは当てが外れたのか、バツが悪そうな顔でその手を握り握手をしている。


 さすがジャスミンは商人とも言うべきだろうか、誰とでも隔てなく仲良くなり、そしていつの間にか自分のペースへと話を引きずり込んでしまっていたのだった……。



 もしかしてこの物語、魔王様よりも商人が最強伝説なのかな? などと改めてタイトルに注目させつつ、お話は第96話へつづく  

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