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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第89話 頭を下げる意味とその効果的活用術

「旦那様。レストランに来るお客と言うものはですね、単純に『料理の味』や『値段』だけ(・・)で来るものではないのです」

「えっ? そ、そうなのか? 他に何があるって言うのシズネさん?」


 俺は今の今までそれだけで(・・・・・)お客が来ると思っていた。レストランなんてただ料理の味が美味しければ流行る。値段が安ければ他の店ではなくウチに来る。そう単純に思っていたのを根底から覆す言葉だった。そしてシズネさんは飲食店はそれ以外も同等に重要なのだと語り始める。


「元冒険者の旦那様ならご存知でしょうが、そもそも冒険者の方々には『休日』というものが存在しません。毎日ダンジョンに潜ってお宝を見つけたり、ギルドなどの依頼をこなすことで日々の生活を維持しています。お金に余裕があれば話は違うでしょうが、常に働かねばその日泊まる宿屋代は愚か食事すらもできません。我々の飲食店であるレストランもそれと同様に、常に営業していなければお客は別の店へ(・・・・)と流れてしまいます。ですから、そもそも飲食店にお休みなどは存在し得ないのです」


「あーっ。確かに言われてみればそうだよね。俺だって、今思えばそうだったかもしれないなぁ。いつも行ってる店が休みの時はさ、「なんだよ、休みなのかよ……」とか文句言ちまって、別の店で食べたりして後はもうその店に行かなくなることもあったもんなぁ~。そっかそっか。そういうこともあるんだよね」


 俺はそう説明されて思わず納得してしまう。


 また冒険者達は街で自ら調理をする『自炊』などは一切しない。もちろん野外やダンジョン内で一夜を過ごす際には、持ってきた食料や現地調達した食材を火で焙ったりして調理をするのだが、街にいる時にまでそんなことはしないのだ。きっと後始末の面倒くささや、街にいる時くらいは『美味しいものを食べたい!』という欲求が無意識下にそうさせているのかもしれない。


「ええ。またそれだけでなく店員の接客態度やお店の雰囲気、初めて入るお店ならば外から入りやすさなど……これは『外観』ですね。そして先程述べたようにお店の休み……これもいわゆる『お店の定休日』ですね。そしてただ食事をして胃袋を満足させるだけではなく、その日一日の労働の疲れに対する(ねぎら)い、明日も働くための英気(活力)を養う目的で美味しいものを食べる。また他にも他の客から情報を得たり、仲間を集めたり、辛い事を忘れるためお酒を飲みに来る。などなど様々な要因・要素によって、お客はお店に来店するものなんです」


「そ、そうなんだ……。言われてみればどれもこれも心当たりがあるよ。俺、何にも知らず余計なこと言っちゃったね。ごめん……シズネさん」

(確かにシズネさんの言うとおりだわ。こうして説明されると、全部心当たりあるもん。ほんと俺ってダメだよなぁ~。何にも考えずにただ疲れたから休みたいとか、店の定休日を! とか言っちまうんだもん)


 ぐうの音も出ない程に納得してしまい、俺はバツが悪いと顔を下に向けてしまう。そんな俺を見兼ねてか、シズネさんはこんな言葉を口にする。


「ふふっ。ですが、まぁ旦那様の仰ったことも(あなが)ち間違いではないですがね」

「えっ?」


 そう言われ、俺は思わず顔を上げてしまう。


「確かにアマネ達だけでなく、私にだって疲れはありますよ。今は勢いだけで誤魔化せてはいますが、いずれそのツケ(・・)が回ってしまうでしょうね。お休みを設けるなり、新たな従業員を雇うなりしないとダメですよね。旦那様」

「んっ? 何シズネさん?」

「ワタシのほうこそ、偉そうなことばかり言って申し訳ありませんでした。旦那様の言うとおり、何度もその問題を指摘されているにも関わらず見てみぬ振りをしていたワタシに責任があります」


 シズネさんはそう言って俺へと頭を下げてくれた。いつものようにふざけたり、遊びからかいなどで頭を下げたりはしていたが、こうして正式な謝罪として頭を下げられたのは初めてのことだった。俺は戸惑い動揺しながらも、慌てたように言葉を口に出す。


「い、いや、俺だって何の考えもなく言っちまったしさ。ほら、これからいつものようにみんなでアイディアを出し合えばどうにかなるって! だから一緒に頑張ろうよ、シズネさん!」

「旦那様……ええ、ええ。そうですよね♪」


 俺は思わずシズネさんの手を握り、そう言って励ます。もちろん自分を励ます意味もあったのだが、まさかシズネさんが俺に対して頭を下げ謝罪してくれるとは思わなかった。


 意見・考え方を論理的に叩き落してからの持ち上げ、そして謝罪からの相手意見の取り入れ……これにはクルものがあった。こんなことをされてしまえば、嫌でも協力しなくてはならないし、今までよりも仕事を頑張らなければならないと思ってしまう。


「それではまずは食事にいたしましょうかね? あっ今温めますので、その間旦那様はお皿を出してくれませんか?」

「そうだね、腹が減ってはなんとやらって言うもんね。空腹じゃ良いアイディアも思い浮かばないだろうし。うん、分かった!」


 ジュ~ッ。シズネさんは再びフライパンを火にかけ、俺は皿を出そうと戸棚の方へ向かい背を向ける。


「(ニヨニヨ♪)」

「シズネさん? 今心の中で「しめしめ、すべて計画どおりになったわ。こりゃ~、もっとコイツらをこき使ってやらねぇとな~。やっぱり頭は立場が上のヤツが下げると効果あるって噂は本当だったなぁ~。これで公然とワタシの地位も名誉も、そして同時に実利までも得らちまったわ。こりゃ笑いが止まらねぇや。くくくっ」とかって意味深な笑み浮かべていなかった?」


「いえいえいえいえ、そんな滅相もないです旦那様。きっとそれは疲れからくる幻覚のようなものですよ、旦那様はお疲れなのですね~」

「そ、そうかな? 確かにそんな風なモノを感じた……というか、見えたように思うんだけれども」


 確かにシズネさん(背後)から黒い渦のようなものを感じたのだが、それは仕事の疲れからくる気のせいだったのだろうか?  

 


 常に疲れからくる幻覚だとか(てい)のいいリップサービスなどの語句を用いながら適当に誤魔化しつつ、お話は第90話へつづく

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