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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第84話 胴衣互換とその癒着率の割合

「ふぅ~っ。結構(さば)けてきたな。俺だってやればできるんだよな!」


 あれからようやく慣れてきたのか『チラシを受け取ってくれる人』と『そうでない人』との区別がつくようになり、手元には数枚のチラシが残っているだけである。決してスムーズとは言えなかったが、これでどうにか格好が付く形になっていた。

 

 今は通りにも人が(まば)らなので被りモノの頭部を外して、一息つきながら休憩しているところだった。正直、頭まですっぽり被ってしまうと密封からの暑さと息苦しさが手伝い、俺の命を容赦なく奪おうとする。


 だがそれでもさすがに下まで全部脱いでしまうとまた着るのが大変なので、体の癒着(フィット)率84%と言った感じに頭の部分だけ外すのが精一杯の抵抗と言うもの。というか、このままだと俺がアンパンダーなのか、それともアンパンダーが俺なのか、もはや同一人物と言っても過言ではない状況に陥っていた。


 また万が一にもこのような格好をさっきの女の子や、他の子供達に見られては『夢』を壊してしまうかもしれない。夢はいつか覚めるものである。だかそれは自ら覚ますものであり、外からの要因(中の人)で覚ましていいものではない。むしろそんなことをしては、一生モノのトラウマになってしまうだろう。


 それは着ぐるみ国家に忠誠を誓う者の『定め』とも言うべき事柄であろう。……というか、着ぐるみ国家って何だ? 俺は意味不明な単語が勝手に頭に思い浮かんでしまっていた。


 ちょっと全体を通して何言ってるか理解できないだろうが、俺だって正直何言ってるか分からない。もしかすると俺の体は既に……アンパンダーに乗っ取られているのかもしれない。……まぁ暑さで思考能力が落ちに落ちているだけなのだが。偏差値的に換算すれば、今の俺は『26』と言った感じだろう。



「ファ~ン♪ ファ~ン♪ 小僧よ、按配(あんばい)の方はどうなのじゃ?」

「あ、按配って……ああ、まぁ少しずつってところかな。もう何枚か残ってるくらいだね。正直最初は受け取ってくれる人少なかったけれども、女の子を中心に受け取ってくれているね。チラシ絵が可愛いかもしんないけど。そういや、アマネはどっか行ったの?」


 ちょうどそこへサタナキアさんが空中浮遊しながら、俺の方へとやって来てくれた。既に配り終えたのか、先程まで肉の串刺しならぬチラシの串刺し状になっていたチラシ分は無くなっている。そして何故だか一緒にチラシ配りをしていたはずのアマネの姿が、どこにも見えない。


「お~そうなのかえ! 良かったのぉ~。(わらわ)も今し方配り終えてのぉ~、アマネのヤツか? アマネならばシズネに呼ばれて、先に店へと入って行ったのじゃよ」

「そっかそっか。じゃあ俺達もチラシはこれくらいにして、店の中手伝った方がいいかもしれないね」

(ってか、チラシ串刺し(アレ)はほんとに良かったの? アヤメさんがせっかく作ってくれたのに。まぁ剣身(サタナキアさん)だもんね、仕方ない面もあるけど……)


 サタナキアさんなりにチラシ配りが下手だった俺を心配するようにホッと一息つくと、アマネがシズネさんに呼ばれたことを教えてくれた。どうやら店の方もお客が来始め、人手()が足りなくなっているのかもしれない。


「もきゅもきゅ♪」

「あっ、ユウキさんお疲れ様です。サタナキアさんも。あのぉ~ところで、そろそろお店に戻られた方がよいのではないでしょうか? チラシの方も、もうありませんので……」


 ちょうどそこへアヤメさんがもきゅ子を引き連れて来た。どうやらアヤメさん達も配り終え、店に帰るところらしい。


「アヤメさん、もきゅ子お疲れ様。えぇ、俺達もそろそろ切り上げて戻るところだったんです。おっ、なんだもきゅ子も全部配ったのか? 偉い偉い」

「も、もきゅきゅ~♪」


 アヤメさんに話しながら、ふと足元にいるもきゅ子に目を向けて見るとチラシを持っていなかった。俺は労うようにもきゅ子の頭を撫でてやる。一応まだ首から下はアンパンダーそのものなので手がパンダのままで撫でにくいのだったが、もきゅ子は嬉しそうに鳴いていた。


「ふふっ♪ いいなぁ~……あっ、すみません」

「えっ?」

「もきゅ?」


 ふいに聞こえてくるそんなアヤメさんの呟き。そういえばアヤメさんも、甘えたがり屋さんだってことをすっかり忘れていた。


「……あの、何でしたらアヤメさんもしますか?」

「ふぇ!?」


 ついついそんなことを口走ってしまいながら、腕を大きく広げてみる。少し冗談のつもりで「さぁ抱きついてくださいよ♪」と言った感じ。さすがのアヤメさんでもこんな往来で甘えてきたり……


「ありがとうございます♪ それじゃあ遠慮なく……それ、ぎゅ~っ♪」

「うわあぁぁぁっ!? あ、アヤメさんっ!?」


 その言葉を真に受けたのか、アヤメさんは何の躊躇(ちゅうちょ)もなく俺へと抱きついてきた。正しくは首下アンパンダーなのだが、胴衣互換(どういごかん)と言っても過言ではない。


「あわわわわわ」

「う~~ん♪ この感じ、この手触り……やはりアンパンダーは良いですね~♪ ふかふかもこもこ~♪」


 スリスリ、スリスリっと背中に回された手で撫でられ、自分の感覚が無いにも関わらずとても変な気持ちになっていた。


「ぅぅーっ」

「へっ?」


 だが突然アヤメさんは不機嫌そうに頬を少し膨らませ、必死に何かを訴えかけてきていた。「一体何だ?」一瞬戸惑っていると、横槍が入る。


「小僧……アヤメのヤツ、頭を撫でて欲しいんじゃろうに。いつまでもしない(せん)から怒っておるのじゃよ」

「もきゅもきゅ!」

「えっ!? そ、そうなんですかアヤメさん?」

「…………(コクコク)(照れ照れ)」


 サタナキアさんが解説するようにアヤメさんが怒っている原因を教えてくれると、もきゅ子までも頷いていた。そして俺がほんとかどうか確かめようと抱きとめているアヤメさんに聞くと、少し間を置き恥ずかしそうに頷いてくれた。


「ぅーぅーっ」

「あ、はい……よ、よしよーし♪」

「うにゃ~♪」


 再び抗議の唸り声と共に「撫でてください!」っと、思いっきり頭を差し出されてしまう。そんなむくれっ面のアヤメさんを宥めるようと、頭を撫でるととても甘えた声と表情でご機嫌になっていた。


 正直美人なお姉さん(アヤメさん)にこんなことをされたら、堕ちない男はいないだろう。むしろアヤメさんの方が既に堕ちているのは言わないお約束かもしれなかった……。



 アヤメさん猫化計画を粛々と遂行しつつも、お話は第85話へつづく

※按配=出来具合、作業工程。この場合、チラシの配り状況を聞いていることになる。

胴衣互換どういごかん=悪レス独自の言葉。下手すりゃ既に首から下の体自体が着ぐるみと癒着しているのかもしれない……んなわけねぇって! (マイセルフツッコミ)


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