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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第80話 白と黒のコントラストが特徴のレッツ・シマウマる♪

「た、ただいま戻りましたぁ~」

「あっ、お疲れさまアヤメさん。今水を……」


 カランカラン♪ ドアベルが勢い良く鳴らされると急いで戻ってきたのか、アヤメさんが息を切らせながら店に入ってきた。俺は労いの言葉と同時に水を差し出すと彼女は間を入れず、それを両手で受け取り飲み始めた。


「ごくっごくっごくっ……ふぅ~。ありがとうございます、ユウキさん。ご馳走様でしたぁ~」

「い、いえ(照)」


 アヤメさんは一気に飲み干すと、ようやく息をつくように落ち着いた。間近で飲む姿を見せ付けられた俺は何故だかそんな姿を「色っぽいなぁ~」と思い、少しだけ照れてしまう。


「それでアヤメさん、首尾の方はどうでしたかね?」

「それなら万事大丈夫でしたよ♪ シズネさんに言われたとおり……まずは一番目立つ玄関入り口や依頼掲示板(クエスト受注)のボード一面に界を覆うようすべて貼り付け、ついでに私の独断でギルド内に居た冒険者達全員の背中(・・)にまでチラシビラを貼り付けておきましたぁ~♪」


 シズネさんがそう尋ねるとアヤメさんは「私、一生懸命頑張りましたよ♪」っと猛烈にアピールする。


「そ、そうなんだ……大変だったねアヤメさん。ありがとう……」

「いえいえ~、大したことありません! えっへん!」

「(アヤメさん慌ててたから、いつものドジッ子ぶりを発揮したのかな? というか、冒険者達の背中に貼るってどういうことだい? 軽いクラスで起こり得るイジメ体験を冒険者全員にさせちゃった感じなのか?)」


 俺が若干混乱しながらその話を聞き相槌を打つと、アヤメさんは謙遜交じりに少しだけ誇らしそうにしていた。


「ふふん。やるわね、アヤメ。さすがだわ。人から指示されていない(言われていない)事までちゃんとするだなんて、ほんと有能な貴女らしいわよ」

「お嬢様ぁ~、そんなに褒めないでくださいよぉ~。照れてしまいます」

「(この従者ありで、その主人ありき……か)」


 それまで口を閉ざしていたマリーだったが、アヤメさんの独断を褒めちぎり賞賛の言葉を浴びせた。また当のアヤメさんも満更ではないのか、照れ照れしながらも嬉しそうにしている。やはりアヤメさんは、褒めれば簡単に堕ちてしまう『チョロイン』の代表格だとあらためて確信する。


「ふむっ。それならばそろそろ我々も、表に出てチラシ配りをした始めた方がいいのかな?」

「そうですね、アヤメさんも帰って来たことですしね。では、さっそく始めましょうか♪」

「お~、ようやくなのじゃのぉ~。妾も手伝って(てつどうて)やるのじゃ!」

「もきゅ~」


 ギィーッ。そんなアマネの掛け声から始まり、シズネさん、サタナキアさん、もきゅ子はチラシの一部を持って外に出て、さっそく店の宣伝をしようと出て行こうとした。


「お、俺も……」


 俺もみんなに付いて行こうと席を立ち上がろうとした。


「あっ、ユウキさんはお待ちください」

「えっ?」


 だがアヤメさんに呼び止められてしまい、立つとも座るとも言えない格好で静止してしまった。


「あの、アヤメさん……何か?」

「いえ、実はですね。お店の外で宣伝するに当たり、して欲しいことがありまして……」


 最初はアヤメさんとマリーもビラ配りの手伝いの申し出かとも思ったのだが、どうやら違うようだ。またアヤメさんにしては妙に言い淀み、言葉に歯切れの無さが感じられる。


「…………」


 ふとマリーへと目を差し向けてみると両腕を抱えるようにして目を瞑り、一言も発しようとしない。どうやらマリーではなく、アヤメさんの言いたいことらしい。「これは何かあるぞ……」俺は直感的にそう思ってしまう。それも特に根拠は無いのだが、俺の冒険者としての感がそう告げているように感じていた。


「そ、それで俺に何か……」

「ええ。まぁ実はですね……」


 俺は探りを入れるため再度質問するのだが、アヤメさんは言いにくいことなのか目の前で指と指とをくっ付けたり話したりして言い出せずにいた。


「アヤメ……」

「は、はい」


 見兼ねてマリーがアヤメさんの名前を呼んだ。どうやら「覚悟を決めなさい」と発破をかけたのかもしれない。そしてアヤメさんは意を決して俺にこう問い(ただ)してきた。


「ユウキさん! と、突然ですがアンパンダーはお好きですかっ!!」

「…………へっ?」


 いきなりそんなことを言われ、一瞬「アンパンダーって何???」っと混乱してしまうのだが、そこでアヤメさんが一番初めに描いたチラシを思い出す。


「あ、ああ……アンパンダーってあれですよね? アヤメさんが描いたファンシーで可愛らしい感じのパンダのヤツ」


 俺はうろ覚えながら、思いつく限りの事を口に出してみる。


「そうですそうです! そのアンパンダーさんなのです! で! で! お好きなのですか? あっそれとも……お嫌い……ですかね?」


 チラシ配りをしようとしたその矢先、アヤメさんからそんな関係ない事を言われてしまい、俺は戸惑っていた。


「(そもそもそのアンパンダーが何だって言うんだ、アヤメさんは? 今このときに質問するほど重要な話なのかよ?)」


 だがアヤメさんの真剣すぎるほど真剣な眼差しと言葉と共に体に力が入り込みすぎているのか、思わずキスでもするかのように俺の目前へと迫り来ていたのだ。さすがにこれでは曖昧に答えるわけにはいかず、俺は今の素直な気持ちを口にする。


「そ、そうですね……確かにアレ、可愛らしいので好きちゃ好きですけどね。その事と今からするチラシ配りが関係あるんですか?」

「(ボソリッ)……関係あるからアヤメも聞いているのでしょう。はぁ~」


 まるで俺の質問に答えるように、そうボソリとマリーはそう呟いていた。しかもやや呆れながらに、だ。それは俺にというよりも、むしろアヤメさんに向けてだったのかもしれない。



「ええ、ええ! 関係大アリなのですよ! 英語で言えばジャイアントアリさんなんです!」

「そ、そうですか……」

(ジャイアントアリさん……何故に英語と日本語交じりに言ったんだ? 普通、ジャイアント・アントとかだよな? それはアリ達への差別だぜぇ~、アヤメさんや。しかもちょっと言いにくいのが(きず)だわ~。いや、そんな感じの造語も全然嫌いじゃないんだけどね)


 そんなアヤメさんのジャイアントアリさん、通称……つ、通称…………いや、ごめんそれに通称とか付けるの無理だわこりゃ。俺はこの物語中初めて通称を付けることを断念しながら、アヤメさんに続きを促した。


「それで具体的には何を?」

「あっ。す、すみません、つい熱くなってしまいましたよね。申し訳ありません」


 俺の若干引き気味の顔で状況をようやく理解したのか、アヤメさんは姿勢を元に戻し少しだけ冷静さを取り戻しつつあった。


「それでユウキさんには……」

「お、俺には……? (ゴクリッ)」


 アヤメさんの溜めに溜めた言葉の引っ張りに俺も思わず前のめりになりながら、言葉を待ってしまう。


「貴方にはアンパンダーになって欲しいんです!!」

「…………んっ!? あ、アンパンダー? 俺がなる???」

(えっ? えっ? 何々一体どういう意味だそりゃ? 今アヤメさんは何言っちゃってるの? 俺にアンパンダーになって欲しい? それってどういう……)


 アヤメさんはそう叫ぶと同時に、店の外へと走って行ってしまった。


「あ、アヤメさんっ!?」


 その突然の言動に思考が追いつく気配をみせずに、俺も彼女の後を追ってしまう。


「ユウキさん、これです!!」

「おうっ!?」


 外に出るその寸前、店内に戻って来たアヤメさんとぶつかりそうになってしまった。そしてそのまま、アヤメさんはとあるモノを俺へと差し出した。それは白と黒のコントラストが特徴の着ぐるみだった……。



 白と黒の着ぐるみ? もしかしてシマウマさんなのかな? などとシマウマ感全開にしつつ、お話は第81話へつづく

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