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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第75話 笑顔と握手と仲直りと

「ふ、ふぅ~っ。美味かった~♪」

「確かに何の味も分からないまま、全力で食べてしまったなぁ~」


 俺とアマネは全身全霊、そりゃ~もう体に備わっているすべての筋力を使いながら朝食を食べ終えた。その全力具合と言ったら、もはや手足の末端神経に麻痺が出ている状態である。というか、現在進行形でマヒってる。


「もきゅもきゅ♪」

「あっ、もきゅ子ダメですよ。そのように食べ零しては……ふふっ。まったくもう……」

「ん~っ♪ 今日も(わらわ)は満足であるぞ~♪」

「こら、サナ! いくらフォークを使うのが苦手だからと言って、コーンを剣先で突き刺して食べるのは止めてくださいよ。もきゅ子がそれを見て、真似してしまうでしょ!」


 カチャカチャ。同じテーブルでは今もシズネさん達が食事を楽しんでいる真っ最中だった。シズネさんはもきゅ子の口元拭いたり、食べ零しを拾ったりしながら自分の食事を摂っていた。またサタナキアさんだけには特別厳しいのか、もきゅ子のそれとは違い怒りながら食事についての何たるか(・・・・)をレクチャーしている。


「「…………」」


 既に食事を食べ終えた俺とアマネはそれらの会話に入ることすらできなく、ただ黙ってみんなが食べ終わるのをじ~っとした目で見つめながら待つことしかできない。


 何気にこの『待つ』という時間は永遠にも感じられるほどに、『苦痛』を要するものである。『暇は人をも殺し()る』……そんな言葉もあるくらいだ。



「あっ俺、食べた分の食器片付けてくるわ……」


 ズズッ。俺はその時間が居た堪れなくなり、自分が食べ終わった食器を運ぼうと席を立った。


「わ、私も!」


 ズッ! アマネもそれに倣うよう勢いよく席を立ち、一緒に食器を持ち運ぶ。どうやら互いにこの何ともいえない雰囲気から逃げ出すきっかけを探っていたのかもしれない。


「アマネ、後は俺がやっておくから戻ってもいいんだぞ」

「あっいや、あの席に一人で戻るのには少し勇気がいる。それよりも私も手伝うぞ!」


 俺は食器を洗いながらアマネに席へと戻るよう告げるのだが、あそこに戻るのには、いくら勇者であるアマネでさえも尻込みしてしまうのか、洗い物の手伝いを買って出てくれた。


「そっか……」

「うむ……」


 俺達は未だ微妙な雰囲気とも言える距離感と、互いに何を話したらよいのかというけん制と共に一つの洗い場で一緒に食器を洗う、そんな作業を二人でする。だが肘と肘が触れるほどの距離感なので、互いにそれを意識しないわけがない。


「んっ」

「ああ」


 俺がスポンジで皿などを洗い、アマネが泡を(ゆす)ぎ水切りラックへと乗せていく。何のことは無い単純な作業。そもそも二人分合わせてもお皿四枚にもならない洗い物なので、あっという間に汚れた皿を洗い終えてしまう。


「終わったな……」

「う、うむ……」


 互いに濡れた手をタオルで抜き水気を取る。だがそれが終わってしまえば、もう何もすることはない。


「席……戻るか?」

「……いいや」


 俺もアマネも互いに話すきっかけを探していたのかもしれない。俺は俺で昨日の脱衣所で迫ってきたアマネはなんだったのか? それを聞いてみたい気持ちもあったのだが、勇気がなく聞くに聞けない。俺はその時点で名前負けした。


「あ、あの!」

「は、はいぃぃっ!」


 ようやくアマネから声をかけてくれようとしたのだが俺は緊張していたためなのか、ちょいカンフースターのような掛け声で答えてしまった。


「ぷっ。な、何なのだそ、その返事は……あっは。お、おかしいーっ」

「あの、その……(照)」


 当然の如くアマネには笑われてしまい、俺は顔が上気して体温が少しずつ上昇していくのを感じてしまう。


「わ、笑うなって」

「ぷくくっ。す、すまない。だ、だがな……ぷぷぷっ」


 俺がそれ以上笑うのを止めるよう「ちょっと笑いすぎだぞ!」っとアマネの肘を小突く。だがまだおかしいのか、アマネは口元を押さえ笑いを堪えているのだが収まる気配がなかった。


「誰にだって失敗くらいあるだろ?」

「ははっ……あっ、すまない……その、怒ったかな?」


 俺が少し真面目なトーンで聞き返すと、アマネは察したのか、謝罪しながら上目になりながら俺の様子を窺っている。


「つーん」

「す、すまない。私も少し笑いすぎてしまったな。許しては……くれまいか?」


 俺はわざとらしく「つーん」と口に出すことで、怒っていることをアマネへと猛烈にアピールする。アマネはそんな態度を本気に受け取ったのか、既に先程のように笑ってはいなかった。


「じゃあさ、次こんなことがあっても絶対に笑わねぇか?」

「あ、ああ……もちろんだとも! というか、()とは……ぷぷっ」


 アマネは既に次があるという前提で話している俺に対し、先程のを思い出してしまったか噴き出し笑いをしていた。


「ああああ、アマネっ! やっぱり笑ってんじゃねぇかよ!?」

「だってだってこんなの笑うな! と言うほうが難しいではないのか。無理ムリ~っ」

「ったく。ふふふっ」

「ふふっ」


 お互いに『笑い』を共有したせいか、もう今朝のようなぎこちなさ(・・・・・)はそこには無かった。


「アマネ、これからもよろしくな!」

「ああ、私の方こそよろしく頼む!」


 俺達は互いに握手をして普段と変わらない距離感、そして態度で自然と接することができるようになっていた。


「(ニッ♪)」


 だがそんな俺達を覗き見る赤い影がいたことを、俺もアマネも知る由も無かったのだった……。



 笑顔と握手は万国共通『仲直り』の秘訣かもしれない……などと、たまには世事を反映した世の(ことわり)を述べつつ、お話は第76話へつづく

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