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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第6章 ~経営指南編~

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第61話 ぷりぷりマリーさんと他人に頭を下げる価値観の違い。

「よいしょっと、ふぅ~っ。ようやくこれで荷降ろし済んだっと」

「そっ。ご苦労様……と言っても、これは私が言うセリフじゃないわよね。ふふっ」


 あれから何箱(なんぱこ)か俺だけで食材倉庫へと運び入れ、その間マリーは偉そうに腕を組みながら俺の後をくっ付いて来ていた。


 どうせなら手伝ってくれればいいのに……っとも思ったのだが、そもそもマリーの腕じゃ木箱一つ持つことすらできないと声かけはしなかった。


「ねぇ、気にならないの?」

「んっ? 何をだよ?」


 ようやく運びを息を整えていると、そんな風に気になる言葉をかけてきた。やはりマリーは何か意図があって、俺の後をくっ付き喋るタイミングを見計らっていたのかも知れない。


「いえね……どうして貴方達の敵方であるギルドが、それもギルド(ちょう)であるこの私が(・・・・)自ら品物なんて運んで来たかってことをよ。気になるでしょ?」

「まぁ確かに……変と言えば変だよな。何でだ?」

(というか、運んだのは俺とアヤメさんだろ? マリーなんてただ偉そうに突っ立ってただけじゃねぇか。まぁ実際、ギルド長なんだから偉いんだけどさ)


 嫌に変な回りくどい言い方をマリーはしていた。仕方ないので、俺もそれに話を合わせ相槌を打ちながらそのまま質問を返してみる。


「ふふっ。まぁ理由は色々とあるけれど、言えないわね」

「そ、そうなんだ……なら、聞けなくても仕方ねぇよな」

(めんどっ!! マリー、すっごく面倒臭いぞっ! なら、前振りなんてするんじゃねぇよな)


 話を聞いて欲しいのか、それともただ焦らしからかいたいだけなのか、俺には分かりかねた。


「でも……そういや、昨日の夜だかにシズネさんがギルド(そっち)に行って食材融通するように頼んだんだってな。よくもまぁ俺達に卸してくれたよな。アヤメさんは別のルートだから大丈夫って言ってたけれども……」

「ええ。そうね。それくらいなら話してあげてもいいわよ」


「お、おおう……た、頼むわ」

(これが噂に聞くツンデレちゃんなのか? すっげえ活き活きとした表情というか、ご満悦した表情になってんぞマリー。お前どんだけ友達いねぇんだよ……)


 俺は若干マリーを可哀想なものを見る目で見ながらも、一応表向き感謝する素振りをして話の続きを聞くことにした。

 

「昨日ね、シズネのヤツが私の元に来て頭を下げて(・・・・・)食材を融通して欲しいと頼み込んで来たわ。ま、下げたと言ってもすっごく偉そうにだったけどね! ほんっと、あれが他人()にモノを頼みに来る態度なのかしら? 初めはふざけているのかと思ったわよ。でもまぁとても貴重なものが見れたのだから、いいのだけれどもね」


「シズネさんが頭を下げたって言うのか!? そ、そっか……」

(きっと任せろって言ってたシズネさんも万策尽きて、嫌々頼みに行ったんだろうなぁ~。それもいつも言い争うをしているマリーに、直接(・・)頭を下げるだなんて……。そんなの死んでもしない女性()だと思ってたけれども、そうか……シズネさんが……)


 俺はシズネさんの心中を察して、驚きと同時に納得もした。たぶんあの時の話し合い(ミーティング)の時には既にそうするつもりだったのかもしれない。そうでなければあんな風に自信満々で「食材はなんとかする……」だなんて言わないだろうし。


「ふふっ。さすがの貴方も、これには驚いた様子ね。どぉ~、心底シズネに対して呆れたんじゃないかしら? いいえ、むしろ失望と言った方がお似合いかもしれないわね♪」


 マリーはまるで得意げとも言わんばかりに胸を張り、シズネさんがしたこと……自分に対して頭を下げたことを自慢していたのだった。

挿絵(By みてみん)


「俺は……」


『マリーに対して何と応えますか? 以下よりお選びください』


『マリーに同調する』

『マリーに同調しない』


「そうだな。確かにあの(・・)シズネさんが他人()に頭を下げるだなんて信じられないし、意外というかなんというか……」

「そうでしょ! 貴方も当然そう思うわよね♪ 格好悪いでしょ? 是非ともあの姿を貴方にも見せてあげたかったわよ! ふふふふふっ」


 俺はマリーに同調するように言葉を口にすると、マリーは満足そうに笑みを浮かべていた。


「うん。確かに格好悪いよな……」

「そうでしょそうでしょ♪」

「……でもなっ!」

「えっ?」


 俺がそれ以上言葉を続けると思わなかったのか、今度はマリーが驚いた表情をする番だった。



「でも……格好なんて悪くてもいいんじゃないか? 何かを成し遂げるためには、時には他人()に頭を下げなくちゃいけない状況もあるだろ? むしろ自分のプライドを押し殺してまで相手に頭を下げるだなんて、普通できないんじゃないかな? それにマリーだって、一度くらいは他人に頭を下げたことあるだろ? それを(さげす)むってことは、過去の自分自身をも蔑むことになるんじゃないか?」

「ぐぬぬぬぬっ」


 俺の反論、シズネさんを擁護(フォロー)することが意外だったのか、マリーはぶすっとした表情でぐぅの音も出せない。まぁ何か唸り声を聞こえてくるのは、この際なかったことにしよう。


「……ふっ。確かに貴方の言うとおりかもしれないわね。普通、そんなことできるものではないもの。ましてや、この私に頭を下げるだなんて……ね」


 マリーは息を吐くと「貴方には負けたわ……」という表情をして、俺の言葉を頷きながら納得していた。


「だろ? それにマリーも言ってたように、シズネさんなら死んでもしないタイプだと思うよな? そんなシズネさんが頭を下げたからこそ、マリーもこうして食材を俺達に通常の卸値(・・・・・)で入れてくれたわけなんだろ?」


 俺はマリーがシズネさんを馬鹿にして、ただ見下したいだけではないと言う事をすぐに見抜いていた。何故ならシズネさんの夫であると同時にマリーも俺を夫にしたい(・・・・・・・)と思っているのだから、こうした陰口というかそんなことを伝えても何ら得はないと思ったのだ。


 むしろそんなことを教えても俺の嫌悪感を増すだけだと、聡いマリーだったら重々承知しているはずだ。なら、何故そんなことをわざわざしたのか? 俺はそのことを質問してみることにした。


「なぁ、マリーはわざとそんなことを言って、本当は俺を試したかっただけなんだろ? 違うか?」

「……な、何故そんなことを言うのかしら? 私はシズネを貶めたかっただけなのよ!! そ、そうすれば貴方もあの子から、私へと心変わりするかもしれない……そ、そう考えただけなのよ! だから変な勘違いをしないでくれるかしら!!」


 俺の言葉が図星だったのか、マリーは顔を赤らめソッポを向いてしまった。どうやらそれとは別に、実際俺の気を惹きたい思惑もあったのかもしれない。だが試したというのも、本当なのだろう。


 人の言葉にただ同調し、肯定し、悪口を言うだけなんて良い人であるわけがない。むしろそういう輩は袖の下(賄賂)や有り余る権力へと溺れ、人を……マリーの言葉を借りるならば庶民のためのギルド(・・・・・・・・・)には絶対良くないことである。


「ふふっ」

「なっ!? い、今、私のことを見て笑ったわね!!」


 そんなマリーのことが少し可愛く見えてしまい、ふいに笑ってしまった。


 そんな態度がとても気に入らなかったのか、マリーは「貴方、私を誰だと思っているのよ!!」っと俺を指差しながらも顔を赤らめていた。


「……ぷっ」

「むっきーっ! もう何なのよ、貴方はっ!! この私を何度も何度も笑う命知らずな無礼者なんて、貴方くらいなものよっ!! ふん!」


 ドンドン、ドンドン。マリーは食材倉庫の床板を音が響くほど踏み鳴らし、地団駄をして怒っていた。だがそれもむしろ年相応の子供のように思え、俺にはより可愛く見えてしまう。


 そしてキリがないと悟ったのか、またもやぷいっとソッポを向いてしまう。


「(マリーもマリーで年相応の女の子なんだな。普段はギルドの長だからと気を張って、頑張ってるのかもしれないなぁ~)」


 俺はそう思いながらも悪戯心が湧き、そんなマリーを少しからかってみることに。


「マリーってさ……」

「な、なによ! 文句でもあるって言うの!!」


 俺の言葉が気になるのか、ちょっとだけこちらを向きながらも言葉だけで怒っている様を表現している。だがそれは同時に「怒っていないのかしら?」などと、こちらの様子を窺うようにも見えてしまう。


「怒った顔も可愛いよな」

「なぁっ!? ああああ、貴方、さっきから私のことからって馬鹿にしているでしょっ!! このっ! このっ!!」


 パシパシッ。俺がそう伝えると、更に顔を赤らめ俺の肩や腕を必死に叩いてきた。だが力不足のため、まったく痛くない。


 だが反射的に「いてて。痛いってば! 冗談、冗談だからさ、そんなに怒るなって……」っと謝ると、「まったくもう……」っとぷりぷりしながら叩くのを止めてくれた。


「それでさ……」

「なによ、また叩かれたいって言うつもりなの?」


 俺は話題を切り替えようとしたが、マリーは「また蒸し返すつもりなの!?」っと勘違いしてしていた。


「ちげーって。いや、まったく関係ないって話じゃねぇんだけどさ……一つ疑問というか、聞きたいことがあるんだわ」

「……なによ?」


 言葉の重みから『話題が違う』と分かるとマリーは急に大人しくなるといつもの冷静な感じに戻り、俺の言葉に耳を傾けてくれた。


 こんな素直なところも可愛らしく思ってしまう。だがそれを口にすると、からかわれたと思い再び叩かれてしまうだろう。


「いや、な。食材を適正価格で卸してくれただろ? 普通、いくらシズネさんが頭を下げて頼んだからって、いくらか割り増しくらいにはするはずだろ? なのに、こうして荷馬車をつかってまで運んで来てくれたのには、他の思惑もあったんじゃねぇかな? っと思ってな。それも……わりかし重要な感じの理由が、さ」


 俺はマリーの行動際し一切の確信はなかったが、カマをかける意味で自分の考えを伝えることにした。



 そのマリーの思惑と理由とやらを今から次話までにどうにかこうにか思いつくことを願いつつ、お話は第62話へつづく

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