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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第5章 日常的風景と非日常との重なり

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第48話 ピエロと非エロと微エロは、似て非なるものなりけり。

挿絵(By みてみん)

「ふむ。それでだな、私の提案というのは……店内にてショーを見せるのはどうだろうか? ということなのだ」

「ショー……ですか?」

「もきゅ~っ?」

「うん? ショーってあれだろ、歌ったり踊ったりする演劇というか、見世物のヤツだろ?」


 アマネの提案というのは店の中で演劇をすることでお客に食事の提供だけではなく、楽しませる娯楽要素を追加するらしい。確かにお酒の飲みながら楽しいショーを見せられれば、お客も楽しみ時間的にも長居をするので客単価が増えるかもしれない。


「まぁみんなが驚くのも無理もない話なのだが、実は私は前のレストランでショーを仕事としていてな、これでもなかなかの人気者だったのだぞ!」

「ふむ……」

「きゅ~」

「アマネがショーをやっていた……ね」


 俺はその話を聞いて余計不安に思ってしまった。何故ならアマネがしていたというショーの内容がいとも容易く頭に浮かんでしまい、「マジかぁ~」と思ってしまったからだ。


「それで、アマネは何の見世物(ピエロ)をしていたのですか?」

「もきゅもきゅ」

「確かに……それは気になるよな」

(……というか、シズネさん。そのルビ振り表記は本当に合っているのかよ? いや、まぁ確かに見世物だから『ピエロ』って表現は言いえて妙だけどさ、それだとアマネ自身が道化師(ピエロ)になっちまうだろうが!)


 俺達は一様にピエロアマネに興味津々と言った具合に、アマネのピエロ感の虜になりその話に耳を傾けてしまう。


「ああ、聞いて驚け……なんと『勇者と魔王』の寸劇を披露していたのだぞっ!!」

「「「……」」」


 ピエロアマネがそうドヤ声とドヤ顔で決め込んでいるのだが、俺達はみな期待を裏切られ感満載となり一様に無言となってしまう。


「(……ふつ~う。すっげぇ普通の見世物やってたんだな、アマネも。いやほんと、あまりにも普通すぎてこっちがビックリする番だわ。ってか、そもそもそこは歌舞伎役者(・・・・・)じゃねぇのかよ、アマネさんや!? これまで歌舞(かぶ)いてたのはその前フリ、伏線じゃなかったのかよ!! もうほんと予想を裏切る展開の数々にビックリしちゃうよね!)」


 俺は驚きのあまり、自分でも何を言ってのか理解できず、またそれと同時に読者に語りかけてしまうほど混乱してしまっていたのだ。


「勇者と……魔王(・・)の劇ですか」

「もきゅ……きゅきゅ」

「うん? 何か引っ掛かりでもあるのか、シズネともきゅ子よ?」


 シズネさんももきゅ子も『元』と『現』という役割のためか、そのあまりにも役柄ピッタリな内容に戸惑いを隠せない様子。また一方アマネも二人の正体を知らないので、何を驚き戸惑っているのか疑問のようだ。


「もしかして二人とも、実は『魔王』だなんて言わな……」

「あ、アマネっ! そのアイディア面白いそうだよな!! それやったらお客さんだって喜ぶかもしんないぞ! ね、シズネさん、もきゅ子!」 

「い……あ、ああ……キミもそう思うだろ? 実はだな、これがなかなかに難しくて私一人で勇者役と魔王役を兼任しながら寸劇を披露するのだが……」


 アマネはあまりにも不信な態度から勇者らしく二人の本来の姿を予見したのか、正体を口にしようとしていたのだが、俺が横から口を出しどうにか事なきを得、誤魔化すことができた。


「……だがな、さすがの私でも一人二役は厳しいものがあって、いつも失敗ばかりで……」

「(ほっ。どうにか話題が逸れて良かったぜぇ~。アマネは勇者様なんだもん、二人の正体に気付いたらどうなるか分かったもんじゃねぇもんよ)」


 熱が入ってしまったのか、アマネは過去の劇の苦労話に夢中となり、シズネさんともきゅ子の正体なんてすっかり忘れている。


「……そして誤って、テーブルごと客を斬り捨て御免と言いながら……」

「まぁワタシがその噂の元魔王様なんですけどね。ちなみにもきゅ子は今も現役の魔王様なのですが……ね?」

「もきゅ!」


 シズネさんももきゅ子も、何食わぬ顔で自分の正体を明かしてしまったのだった。何気に右手を元気に挙げているもきゅ子がちょっと可愛いのは秘密。


「シズネさんっ!? アンタ、何しれっと自分ともきゅ子が魔王様なんてアマネに言ってやがるんだよっ!? 正体バレちまうだろうがっ!!」

「えっ? えっ? シズネともきゅ子が……魔王様……だと? キミ!? それは一体どういうことなのだ!? 今言ったことは本当なのか!!」

「えっ? あっ、いや……って、俺の言葉にだけ過剰な反応示すのかよ!? その前にシズネさんが言ったのに!?」


 どうやらアマネはシズネさんの言葉では謎の無判定よろしく、逆に俺の言葉だけには過剰なまでの反応を示すと「今のは一体どういうことなのか!?」などと俺へと詰め寄って来ていた。


「あら、旦那様はお喋りなのですね。自らのお口でワタシ達の正体を勇者とピエロを兼任しているアマネに伝えてしまうだなんて、なんと嘆かわしいことなのか……よよよよよ、よぉ~っ! (ババン!!)」

「もきゅ! もきゅきゅきゅきゅ、きゅ~っ! (パパン!!)」


 そして俺の口から正体を明かされてしまったことへの嘆きからなのか、シズネさんももきゅ子も泣き真似をしながら歌舞伎役者っぽいのを演じている。ってか、お前らが演じるのかよ……いや、面白いんだけどね。


「あっなぁ~んだ、『魔王』と言ってもみんな役柄(・・)の話をしていたのか? まったくもう~、そんなことを言われてしまっては勇者であるこの私が勘違いしてしまうではないか! まぁそもそもこのような街中のレストランなどに、ダンジョン奥深くいるはずの魔王がいるわけないのだがな! HAHAHAHA」

「(ほっ。どうにか誤魔化すことに成功したか。というか、アマネのヤツも案外チョロいなぁ~。あれでほんとに勇者なのかよ?)」


 どうやらアマネはシズネさんともきゅ子に対して、言った『魔王』という言葉を自分同様に役柄だと信じ込んでしまったらしい。そして外国人バリの発音で笑っている。


「ふむ。ところで先程からみんな私の事を、『ピエロ』だ『道化師』だなんだなどと呼んでいるようなのだが……そんなに鼻が丸くて赤くなっているのか?」

「「「……」」」


 どうやら俺達が『ピエロ』と呼んでいたことも、しっかりと聞こえていたようだ。そしてアマネは自らの鼻を触り、ピエロ具合を確かめていた。


「……いや、きっと『ピエロ』じゃなくてさ、『ヒーロー』ってのを聞き間違えたんじゃないかな? だって勇者ってヒーローみたいなものだろ? 違うかな? ねぇ、シズネさん?」


 俺はどうにかこうにか空耳クオリティだと強引にアマネに納得させつつ、隣にいるシズネさんの脇腹を肘でセクハラしよう……じゃなくて、小突いて話を合わせるよう合図を送った。


「へっ? ああ、そうかもしれませんねぇ~。もしくは『非エロ』と聞き間違えたのかもしれません。ね? もきゅ子?」

「も、もきゅ!? も~…………きゅ!」

「ほらぁ~、もきゅ子も「それって、微エロじゃねぇの?」って言ってますし~。きっとアマネのお耳が勘違いしたのでしょうね!」


 シズネさんも俺同様に適当な単語を並べて、話をもきゅ子に振った。そしてもきゅ子の言葉を代弁するように『ピエロ』じゃなくて『微エロ』などと、更なる適当な言葉を述べている。


「うん? みんな、そうなのか? うーん。聞き間違えだったのかぁ~。まぁどちらも似たようなものだし、いっか♪」


 そうしてようやくピエロアマネも納得するのだった……。



 この物語のどこに微エロが潜んでいるのか、それを次話までに考えつつ、お話は第49話へつづく

※空耳クオリティ=悪レス独自の略称。空耳に聞こえてしまうほどの聴力を持つ人々の総称……というか、誤魔化し方。

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