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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第5章 日常的風景と非日常との重なり

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第43話 今ある生活のありがたみからの笑いと団欒。

「んっと。これで最後、っと。ふぅーっ……ようやく倉庫整理も終わったか。あとは例の如く厨房の仕事だけか」


 俺は朝食を食べ終わるとすぐに昨日向かいのレストランから頂いてきた食材を倉庫の棚に分類して、並べ置く作業をしていた。

挿絵(By みてみん)


 でもまさか、この店の料理の材料が強奪品によって成り立っていようとは誰が想像しえることだろう? でも昨夜の行為で向かいの店の倉庫の食材はほとんど奪い、また復旧の見通しが無い店であるから当然店側も仕入れなんてするわけはない。


 今後どうやって店の仕入れをするのだろうか? やはり直接ギルドから購入するのか? そもそもギルドの敵方である俺達に売ってくれるかどうか……下手をすれば倍の値段でボッタクられる可能性も大いにありえるだろう。


 まぁ尤も、この街というかこの世界ではそれ以外に方法など存在しないのだが、シズネさんならなんとか出来てしまうという謎の期待感及びそれを軽々と上回る極度の不安に駆られ、今から胃が痛くなりそうだ。


「シズネさ~ん、倉庫整理終わったよ~」

「お疲れ様です。ではさっそくなのですが、昨日と同じく野菜の仕込みをお願いできますかね? やり方は昨日と同じですから大丈夫ですよね?」

「ああ、あれくらいなら俺でも出来るから任せてよ!」

挿絵(By みてみん)

 そうして俺は昨日と同じく、一切の休み無くして文字通り馬車馬のように働かされることとなった。


 その途中、昨日と同じくアマネが「あいや、その注文ん~この勇者アマネが承ったぁぁぁっ」などと歌舞伎役者で接客したり、「きゅーっきゅーっ」「いやぁ~ん、今日もきゃわいいわね♪ お姉さーん、ナポリタン一つ追加ねぇ~♪」とかもきゅ子の魅力によって犠牲者が増えたり……いや、あれは昨日と同じお姉さんだったわ。ってか、また来てたのかよ。お腹もきゅ子みたくポッコリさせて大丈夫なの? などと既にリピーターを獲得していたり。


 あと昨日約束していたとおり、マリーとアヤメさんが来店すると例の如く「あら、このお店では乾麺(・・)を使っているそうね! ふふふっ……」「ええ、そうですよ。貴女のおウチの(・・・・)、ですがね。くくくっ……」「今日もおいふぃですねぇ~」などとシズネさんのトンチバトルが始まるとそれを俺が仲裁したりも。


 また「この店はいつまで客を待たせるのだ! ふざけているのか!? (パンパン)女将を呼べ!」「(ペチペチ)もきゅ!!」などと客からのクレームが相次ぎ、その対応も俺がやらされ……いや、だから何で作る側(お前ら)が座って注文してやがるんだよ。女将を呼べ……というか、それはシズネさん本人を指しているんだろ? なら既にアマネの隣にいるじゃねぇかよ……。あと呼んでどうする気なんだ?


 などと肉体の疲労だけでなく気苦労が堪えない労働の一日が終わり、ようやく腰を下ろし休むこととなった。



「はぁーっ。今日もやっと終わったか……」


 昨日に引き続き腰掛けている椅子に寝そべるようにダラケながら座り、今日一日の労働の疲れを声に出してしまう。


「はい。今日も皆様お疲れ様でした。それでは夕食になりますが……みんな大好き『ナポリタン』になりま~す♪ ま、本当は既に作るのは愚か、食べるのも見るのもそして名前を口にするのにも飽き飽きしているのですが、実際ウチにある材料がこれしかないので仕方ありません」


 シズネさんも疲れているのか、取り繕うことなく毒舌を口にしていた。というか、作ってる本人がナポリタン自体を飽きて否定しちゃダメでしょ?


「おーっ! 私は今日も大盛りで頼むぞ!!」

「もきゅ♪」

「……あっ俺は普通盛りでいいかな」


 だがアマネももきゅ子も昼夜と同じナポリタンだと言うのに、一切の文句を口にせず喜んでいた。また昨日とは違い、俺も朝昼夜とちゃんと食事をしている。むしろ三食ちゃんと食べなければ、体が持たないのだ。下手しなくてもダンジョンに潜るよりも全然重労働である。


「はいはい、今ちゃんと取り分けますからね」


 そう言いながらシズネさんは、白い大皿に山のように盛り付けられたナポリタンをトングを使い、各自のお皿へと取り分けいく。


 俺達が普段食べている食事はお客に提供するのとは違い、従業員用の賄い飯とも呼ばれるものである。それは店で出すような正式料理ではないので彩りや食器など外面を気にしない。


「はい、まずは旦那様ですね」

「ありがとう」

「次はアマネの大盛りともきゅ子の分です」


 一応旦那という立場の俺を立ててくれているのか、一番先に盛り付け手渡してくれるのがなんとも夫婦らしい。ちょっと立ててくれるのが嬉しいと思ってしまう。


 そして最後に自分の分をよそうと、シズネさんも俺の隣の席へと着いた。


「「「いただきます!」」」

「もきゅ!」


 一応マナーというか、食べる前の挨拶はどうにも必需らしい。今の今まで一人っきりだった俺も最初は戸惑ったのだが、すぐに違和感が無くなっていた。きっとシズネさんの人望やアマネやもきゅ子達の明るさのおかげなのかもしれない。


 それまではいつも一人寂しく冷え切った食事を取り、また一切の会話をすることもなくダンジョンへと赴き、魔物と戦いアイテムを得て道具屋などに売り払い、そしてただ宿屋へは寝に帰るだけの生活。それを延々と繰り返してきたのだ。


 クランなどでパーティでも組めれば、少しは違った生活になっていたのだろうが俺は背景(モブ)だ。それも名前すら一切誰にも知られず、数十年生きてきたモブの中のモブ。例え俺が死んだり、いつ居なくなっても誰も分からない。


 これまでそんな自分を寂しいとか、辛いなどとは一度たりとも考えたこともなかった。だがしかし、シズネさんに出逢いそして夫婦となり、可愛いもきゅ子や俺を轢き殺そうとしたジズさんと出会い、また店にはアマネが転がり込んで来たり、またそれまで縁が無かったギルドの人間、マリーやアヤメさんとも仲良くなれた。


 だからこそ、今はこの何気ない日常で幸せな日々を失うのが怖いと感じている。もしも今俺がここを去ったら、また誰にも名前すら知られない存在になるのではないか? この場にいる誰も、俺のことを思い出してはくれないのではないだろうか? 

 

 そんな不安と寂しさを抱いてしまうほど、俺は今のこの生活が気に入ってしまっていた。それは今まで感じたことのない恐怖と不安と、そして何より毎日を幸せに生きることができる嬉しさなのかもしれない。


「もぐもぐ……ふむ、今日も美味いな! やはり労働の後には腹が減り、食事が美味いしく感じるよな♪」

「もきゅもきゅ♪」

「ふふっ。アマネももきゅ子も口周りにベッタリっとケチャップをつけて、まるで子供ですね」


 シズネさんはまるで子供の面倒をみるように、紙ナプキンでアマネともきゅ子の口周りを拭いていた。


「……いや、そう言ってるシズネさんも口周り真っ赤じゃねぇかよ」

「ふぇっ? だ、旦那様!?」

「ふにゃにゃ」

「ふふっ……これでよしっと」


 俺も真似してシズネさんの口元に紙ナプキンを当て、拭いてやる。


「ぷっ」

「ははっ」

「もきゅっ」

「まったく、みなさん何を笑っていらっしゃるのですか! 旦那様っ!! 貴方はワタシの旦那様なのですから、妻を庇うのがお役目でしょうに何故笑っていらっしゃるのですか! まったくもう……ふふっ」


 こうして俺達は同じテーブルを囲い毎日毎食温かい食事を一緒に取り、笑い合いながら日々を過ごしていけるものだとばかり思っていた。……このときまでは。

 


 たまには意味深な前振りを無意味に(えが)きつつ、お話は第44話へつづく

※賄い飯=正規完成系の注文料理ではなく、装飾などをしない簡易的な食事。また作りやすさや材料がかからないように作る料理の総称

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