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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第230話 服の裾はナプキン代わり

「は~い、皆さんお待たせいたしました♪」

「おおっ! 待ちかねていましたよ」

「もきゅもきゅ♪」


 ちょうどそこへエルフィが器用にも両手と右肘の上に2皿のナポリタンを乗せてやってきた。


「あらご主人様、ごきげんようですわ」

「ああ、エルフィか。そういや今日の昼も忙しそうだったな」

「ええ、仕事が忙しいことは良いことですしね。ふふっ♪」


 俺はやって来たエルフィと軽く世間話がてらにお昼のピーク時の話を振った。

 だが彼女は疲れを見せるどころか、むしろ仕事が忙しいことに喜びを感じているようだった。


「確かにそうかもしれないな。暇だと逆に地獄に感じるよな」

「え、ええ……私も先程から息を切らせながら頑張っておりましたわ……はぁはぁ♪」


 どうやらエルフィは早くも過酷なまでの無賃金労働者としての自覚を芽生えさせてしまったのか、それともあまりの忙しさに生粋のドM心が擽られてしまったのかもしれない。

 意味深なまでのエルフィの息遣いに興奮を覚えつつも、俺は腹を満たすため運んできてくれたナポリタンを食することにした。


「って、なんで俺のだけこんな山盛りなんだよ?」

「えっ? ご主人様、今日は山盛りになさるのではなかったのですか?」


 先程までのシズネさんともきゅ子との会話が厨房まで聞こえていたのだろう……エルフィは臆することなくそう言ってのけたのだった。


「なんでみんなして、今日の俺を食いしん坊キャラにジョブチェンジさせようとしてるんだか……まぁいいけどさ、もぐもぐ」


 俺はこれ以上何を言っても埒が明かないとセリフ途中にも関わらず口にナポリタンを突っ込み、ただ黙々と目の前にあるナポリタンに手を付けていった。

 まぁ手を付けると言っても、実際にはフォークでグルングルンに巻いてから食べているという極々普通の行動なのであしからず。


「それで旦那様、何か悩みでもあるのですか? 先程お見かけしましたが、どこか深刻そうでありましたが……」


 必死にナポリタンを掻き込み食べ終えたばかりのシズネさんが話を振ってきた。

 どうやら店が混雑しているときに姿を見られてしまったようだ。


「うん、実はさ……って、シズネさんそんなシリアスな展開に持っていこうとしてるけど、口の周りケチャップで真っ赤だよ」

「あっ、これはこれは失礼いたしました……っと、あれ? このナプキン、強欲ですね。まるで自ら拭かれる運命から逃れるように必死に抵抗していやがりますよ!」

「おい……あれ? とか可愛い子ぶってんじゃねぇよ。何で対極に座ってる俺の服の裾を引っ張りナプキン代わりにしようとしてんだよ」


 シリアスな雰囲気を嫌ってのシズネさんお得意のお惚けなのか、それともガチで言ってるのか皆目検討も付かないがどちらにせよ、食事をしながら話すことではなかった。


「食事……終わってからでいいかな?」

「はい。それまでワタシはもきゅ子が食べるところでも観察して間を繋げておくとしましょうかね」


 暇を持て余しているのか、シズネさんはもきゅ子が食べている姿を観察すると口にしていた。

 見ればもきゅ子は相も変わらず、フォークの使い方が理解できずに目の前にあるナポリタンの山へフォークを突き刺すことしかできない様子。


「もっきゅ! もっきゅ! きゅ、きゅ~~っ」


 だがやはり……とも言うべきなのか、「なんで! なんで私だけ食べることができないの!?」っと驚きと嘆きの表情を浮かべて俺達に癒しを提供してくれていた。


「ふふっ。もきゅ子は可愛いですね~。そのように愛想と媚を売ることで生き延び、人々を虜にしてきたのでしょうね~」

「もぐもぐ……」

(……いや、眺めているならもきゅ子を助けてやれよ。何でそんな欲望の権化みたいな感じにもきゅ子の深層心理を口に出してるんだよ?)


 シズネさんはテーブルに両肘をつけ手で作った橋に顎を乗せてその光景に舌鼓をしている。

 俺は食べ勧めながらシズネさんともきゅ子のやり取りを目にしてそう思ってしまう。


「はい、他の方々の分も出来上がりましたよ~♪」

「さて、そろそろ私達も昼にするか!」


 エルフィがアマネ達の分の食事を用意しテーブルに並べると、ようやくアマネ達もお昼の時間となった。

 そしてミミ、ウルフ、アリッサ、エルフィ……などと続々ウチの店の連中が集まり席へと着いて食事をし始めた。


「んっ……ごちそうさま。っと言いたいところだけど……ほら、もきゅ子」

「もきゅ? もきゅもきゅ♪」


 ようやく目の敵のように山盛りになっていたナポリタンを食べ終わり、今度は隣で癒しを提供してくれていたもきゅ子に食べてさせてやることにした。

 ここに至ってなお、誰ももきゅ子の世話をしようとしないのはもはやウチの店の伝統と化しているのだろうか?


「いえいえ、旦那様そんなことはありませんよ。ただ皆さん、自分の欲望に忠実なだけでして……」


 そう言いながらシズネさんは食事を楽しんでいるアマネ達に目を向けていた。


「だから自分の分を食べてから、ってシズネさんは言いたいわけなんだね」


 実際問題、この世知辛い世の中において他人は後回し、まず第一に考えるべきは己である。

 でなければいつ何時何があるかは分からない……特にこのような世界、誰も彼もが信用できない場においてそれは一種の生存本能と言えるのかもしれない。



 第231話へつづく

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