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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第226話 武具の手入れの重要性の確認

「すいませ~ん。この商品の性能について聞きたいんですけどぉ~、いいですかぁ~?」

「これか? これはだな……」


 道具屋の店内を見て回っていると、客達が商品について詳細をウルフへと聞いていた。

 今はレストランも混雑しているので、こちらに手を回す余裕はなかっただろう。やはり人を増やしたのは大正解だったのかもしれない。


 邪魔をしてはいけないと俺は客へ商品説明しているウルフを尻目に、静かに二階の武具屋へと向かうことにした。



「こっちはあんま客が居ないんだな……」


 二階へと上がると、武具屋には客が二人ほどしか見当たらなかった。


 一人はローブを着込んだ魔法使いらしき女性が、魔法の杖コーナーで品定め中みたいだった。

 あともう一人は冒険者の男で戦士タイプなのか、バトルアックスを右肩に乗せてカウンターに居る店の主アリッサと話をしているのが見えた。


「あれって、この間ウチのクランに来ていた冒険者か?」


 俺はその男に見覚えがあった。あれはミミが男性恐怖症を克服した際に接客していた冒険者の男に間違いない。

 確かあのとき、帰りに二階の武具屋に寄って行くなどと言ってた記憶があるのだが、何で数日経った今日もその姿がここにあるのだろうか?


 俺は声をかけようと、二人が話しているカウンターへと向ってみることにした。


「……それでどうだい、研ぎ直したアックスの切れ味は?」

「ああ、もうバッチリだったぜ姉さん!」

「そうかいそうかい。それは良かったよ。アンタにそう言ってもらえてあたいも嬉しいさね♪」


 どうやらあの冒険者の男はアリッサにバトルアックスの刃を研ぎ直してもらうようにと、依頼していたらしい。

 きっと今日あたりダンジョンに赴き、その切れ味を確かめ報告に来たといったところなんだろう。


「けどさ、アンタもたまには自分の武器のメンテナンスくらいしてやんないとダメだよ。だ~から切れ味が落ちちまうんさね。どうせアンタみたいな無骨者のことだ、使い終わった後に血を拭ったりもしないんだろ? 違うかい?」

「ほんと姉さんには何でもお見通しなんだな。ああ、これからは使い終わったら、ちゃんと拭き取ることにするよ」


 なんだか物騒な会話をしている二人であるが、武器を扱う冒険者にとって武具のメンテナンスは重要不可欠である。

 

 モンスターを切れば当然血が付き、拭かずにそのままにすれば、血に含まれる塩分により錆を誘発してしまい、仕舞いにはその武器の切れ味を大幅に下げてしまうのである。

 だから自分でメンテナンスをするか、もしくは定期的に鍛冶屋や武器屋に赴き有料で刃を研いでもらうのが武器を長く使うコツなのである。


 もちろん鎧や盾などの防具にも修繕は必要である。

 これはヒビや壊れた部分を新しいものに取替え直すことで修復することができる。


 それに何より武具の消耗が早くなってしまうため、余計に金がかかるわけだ。


 また武具の手入れを疎かにしていると、いざという時に裏切られて容易に命を落としてしまうことだってある。

 だからメンテナンスをする者としない者とでは、生存率が雲泥の差なのだった。


「それと定期的に刃を研いで……ん? ああ、なんだいアンタかい。どうしたんだいそんなところに黙って突っ立ってて。声くらいかけてくれればいいものを……」


 見られていると気づいたアリッサが、近くで見ていた俺へと声をかけてくる。

 確かに声もかけずに二人の会話を聞いていたのも悪いので、俺は素直に本当のことを述べる。


「あ……ごめん。なんか会話してたから邪魔したら悪いと思ったんだよ。それで声をかけるタイミングを失っちまってて……」

「なんだい遠慮してたってことなのかい? はん! 男がそんな肝っ玉の小さいことでどうするんだよ!」


 アリッサは「あたいとアンタの仲なんだから、そんな遠慮することなんてないんだよ!」っと言ってくれる。

 なんだかそれが少しだけ嬉しかった。


「うん? なんだ、こないだの兄ちゃんじゃねぇかよ! あのときはありがとよ♪」

「いや、なにお礼を言われてことじゃあ……」

「なぁ~に、しけた顔してんだよ!」

「いたた。痛っ。おい、ダメージ表示されちまってるぞ!?」

「おっとと。わりぃわりぃ」

 

 そこでようやく冒険者の男も俺がこの間クランで喋ったヤツだと気がつき、馴れ馴れしくも勢い良く肩をバンバンっと叩いてきたのだ。

 そして悪いと言いつつも、まったく悪びれた素振りを見せてはいない。きっとダメージ表示されようとも、軽い挨拶程度にしか思っていないのだろう。


「それでどうしたんだい、あたいに何か用でもあったのかい? 確か今日は休日だったんじゃなかったかい?」

「おっなんだよ、アンタ。休日なんてものがあるのかよ? そりゃまた良いご身分なんだなぁ~」


 アリッサは思い出したかのように、そう俺へと訊ねてくる。また休日なんて無縁な冒険者の男も、なんだか羨ましそうにしている。

  

「ああ。実は暇でやることがないからさ、良い機会だと思って店の中を見て回っていたんだよ。ほら、俺達営業している時になんて見て回ったことなんてないだろ?」

「そういやそうだね。確かに準備中や休憩時間、用でもあれば互いに立ち寄るだろうけど、営業時間中ってのは無かったもんさね」


 アリッサは「納得した」っといった表情で頷いていた。


「それで店内をブラついてるってわけなんだね。じゃあ、他の店にも寄ったのかい?」

「ああ……っつても、今の時間帯レストランは混雑してるから後回しにしたんだけど、宿屋と一階の道具屋は既に見て回って来たな」

「そりゃ~ねぇ~。飲食店って言うのは、お昼が一番の書き入れ時だからね。忙しいのは当たり前さね。はははっ」


 当たり前のことを改めて説明した俺が愉快なのか、アリッサは笑っていた。

 けれどもそれは俺のことを馬鹿にしている笑いではなく、微笑ましさといえる柔らかな笑顔だった。 



 第227話へつづく

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