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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第221話 意外な宿屋の名前

「ジズさんの言いたいことは理解できたんだけど、けれども何でウチの宿屋は後回しにされるんだ? その話だと一番最初に客が来ないとおかしいはずだよな? なのに……」


 そう冒険者達は今夜泊る宿を真っ先に確保するはずにも関わらず、誰も彼もがそれを後回しにしていたのだ。

 これは矛盾的行動に他ならない。


「そうやなぁ。一番は……やっぱり知名度やろうなぁ~」

「知名度? ウチの宿屋のか?」


 ウチの宿屋【直ちに永眠できる『ジズの宿』】はまだ出来たばかりで新しいため、ギルド直営の宿屋と比べてもその知名度は著しく低いと言えるだろう。


「(ってか、何ら違和感なく今口に出したけど、ウチの宿屋ってこんな名前だったの? 俺、今初めて知ったんですけど……。果たして宿屋の名前がそれでいいのだろうか? そもそも永眠できるって比喩表現だよな? ほんとに永眠できちゃうわけじゃないんだろ?)」


 俺は宿屋の客入り云々よりも、その名前に引っ掛かりを覚えずにはいられなかった。


「あっ、勘違いしないでな兄さん。ウチの宿屋は良心的な価格なんやからな!」

「……あ、ああ、知ってるよ。この価格で風呂付きだもんね」


 宿屋の名前について考えていたため、一瞬ジズさんが何を言ってたのか判断できなかったが、とりあえず話を合わせることにした。


 確かにさっきの男二人組みも言っていたように、風呂付きの宿屋というものは例外中の例外である。

 通常ならば一人に付き5シルバーはくだらないだろう。それが宿代込みこみで2シルバーならば、お得としか言いようがない。


「でもまだ新しく知名度が低いから、こんな安い宿代設定にしたんだよね?」

「そうや。他よりの半額どころか、六割引やさかいに」


 そうシズネさんは知名度獲得のため、敢えて周囲の宿屋よりも安い価格帯にしたのだ。

 ま……っとは言ったものの、その目玉であるはずの温泉は、実はパイプラインを引っ張ってギルドから直接強奪しているのだが、だからこそ安い価格を付けられるというものである。


 ジズさんは、これでもウチの宿屋は知名度が低いというわけなのだろうか?


「兄さん、今は我慢のときなんや。何でもかんでも新しい店が値段を安うにしても、いきなり流行るわけやないんや。もっともそれも、姉さんは最初から織り込み済みやと言ってたけどやなぁ~」

「シズネさんが?」


 どうやらその客の流れもシズネさんにとっては想定内のことらしい。

 確かにレストランと道具屋などがこれだけ流行っていれば、宿屋が少しくらい赤字だったとしても利益は残ることだろう。


「(それに俺達従業員の誰一人だって、未だに働いた分の給金貰ってねぇからな)」


 さすがにそれはウチで働く誰もが、口に出していけないことと思っているはずである。

 でなければ、誰かしらがシズネさんに訊ねているわけだし。


「それにや、今兄さんが思っている宿屋だけが赤字経営ってこともないんでっせ!」

「うん? 違うのか?」

「そうですわ。むしろ毎日が全室満室の黒字なんですわ」

「って満室だったのかよっ!? 何だかさっきと話違くねぇか!?」


 なんだかこれまで話に話した件を、いきなり引っくり返された気持ちになってしまった。

 

「別にワテは赤字なんて一言も言ってまへんで。兄さんが勝手に勘違いしましたんやろ?」

「ぐっ」


 確かに俺と読者はここまでの話を読み解く中で、勝手に「宿屋は赤字なのだ!」とすり込まれていたのかもしれない。

 もしかするとこれが噂で聞くところの『王道外し(いわゆる外し)』と呼ばれる表現技法なのかもと、これまた勝手に勘繰ってしまう。


「どうやら図星のようやな。確かに知名度は低いんやけどな、その分レストランとクランに訪れる客が多いんですわ。つまり認知度が少しずつ高まってるわけですわ。それにやな、敵方のギルドさんとこの宿屋から溢れた客達も当然おるんや。今日は野宿せなアカン思ってた人にやで、安うて空いてる宿屋が目の前にあったら兄さんならどないしまっかぁ~?」

「…………そういうことなのかよ」


 そこでようやく合点がいった。


 つまり本来ならば野宿するはずの冒険者達を顧客ターゲットにして低価格と温泉を武器に客達を取り込みながら、少しずつ人気を高める狙いがあるらしい。

 これならば徐々に人気は高まり、そのついで……と言った感じでレストランや他の店まで利用してくれるようになることだろう。


 様々な店が隣接する相乗効果のおかげであり『資金力』『影響力』『認知度』『商品数』『仕入れルート』などなど……。それらすべてにおいて遥かに上をゆくギルドと対抗するには、とても有効な手立てなのかもしれない。


 当然のことながら、シズネさんは最初からそれらも織り込み済みだったに違いない。

 でなければ、こうもトントン拍子に話が進み、何の苦労もなくギルドと対抗できる力を得られるわけがないのだ。 


 今更言うまでもないことだろうが、ギルドがウチの店で一番恐ろしく警戒すべき存在はシズネさんである。

 もちろんこの他のメンバー(ただし俺を除く)も、それぞれが個性に溢れており、別の店に行ってもこのまま通用するほどだ。


 ウチの店がギルドよりも優れている点。それは……人材の豊富さとその能力なのかもしれない。

 そこが強大な権力を持つギルドに対抗できる唯一の道なのだろう……。



 第222話へつづく

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