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元冒険者と元魔王様が営む三ツ星☆☆☆(トリプルスター)SSSランクのお店『悪魔deレストラン』~レストラン経営で世界を統治せよ!~  作者: 雪乃兎姫
第7章 クランの設立と開業編

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第220話 冒険帰りに真っ先にすることとは?

「あれでもさ、ジズさん。なら何でウチの宿屋には人が居ないんだよ? それこそ変な話で矛盾するよな?」


 確かにクランや道具屋辺りに人が流れてはいる。けれどもならば何故、宿屋には閑古鳥ならぬ閑古竜が鎮座しているのだろうか?


「ま、本来なら()なんやけどなぁ~」

「逆?」


「一体何が逆だと言うんだ?」そうジズさんに聞こうとするのだったが、そこへ来訪者が現れた。


「……こっちは宿屋なんだな。って、うわあ!? な、何でこんなところにドラゴンが居るのだ!?」

「ワテは宿屋を任されとるジズですわ。れっきとした従業員なんやで」

「何、ここの従業員……なのか?」

「うーむ。ドラゴンを従えさえ、従業員するとは……もしやこの店、当たりなのか?」


 道具屋などで買い物をし終えたであろう、男二人の冒険者が宿屋へと訪れたのだ。最初はその容姿にとても驚いていたのだが、ジズさんが店の者と判ると何の疑問も持たずに普通にやり取りをしている。

 俺はジズさんの仕事の邪魔をしてはいけないと、少し離れてその様子を見守ることにした。


「らっしゃせー。お兄さん達、お泊りでっかぁ~? それともお風呂だけなんですかぁ~?」

「あ、ああ。今日は泊っていくから二人分頼む。それで宿代はいくらになるんだ?」

「お二人やけど、一つのお部屋でええんですな? それと宿泊してくれるお客さんは風呂が無料になってますさかいに。なら、お二人さんで合計4シルバーになりますわ」


「意外と……」っと言ったら失礼なんだろうが、ジズさんの接客は年季の入った物腰である。ただの番犬ならぬ番竜なだけだと思っていたが、しっかりとした接客もできることに俺は感心してしまっていた。


「なんとここの宿屋は風呂付きなのか!? しかもそれで一人につき、たったの2シルバーでいいのかよ? 他なら二人で10シルバーは取られるんだぞ!」

「それはなんとも贅沢でいいもんだなぁ~♪ こりゃ疲れが取れるぜ! なぁここにしようぜ♪」

「ああ! 決まりだ!!」


 男達は何食わぬ顔でジズさんと会話をしている。

 どうやらこの二人、ウチの宿屋に泊ってくれる冒険者達のようだ。


「じゃあ4シルバーだったな? ほらよ」


 チャリンチャリン♪

 そしてもう一人の男が二人分の宿代を支払う。


「まいどあり~♪ ほんならお部屋は二階へ上がってすぐの所になりますわ。もし何かあったら、言うてくださいや!」


 ジズさんは器用にも代金を大きな鋭い爪が付いた手で受け取り、丁寧に頭を下げて愛想良くもそう声をかけた。


「すっげぇ~」


 自然とそんな声が漏れ出てしまう。


「どないしはったんでっか、兄さん。何をマジマジと感心するようにワテを見てるんでっか?」

「今思えば、ジズさんが接客してるところって初めて見るからさ。なんだか新鮮に見えちまって」

「なんや、そないなとこ見ても何ら面白みぃ~もありまへんよ」


 若干なのだが、ジズさんは少し照れているようにも見える。

 さすがにこれ以上、突っ込んだ話をするとジズさんを困らせてしまうだけだと思い、先程疑問に思ったことを再度振ることにした。


「それはいいんだけど、さっきジズさんが言った『逆』っつうのは一体……」

「ああ、アレでっかいな? 兄さんも元冒険者なら知ってることやと思いますけど、普通冒険者は初めぇ~に今日泊る宿を決めますわな?」

「……そうだな。金に余裕があれば同じ宿を何日分かって確保できるかもしんないけど、ギルドの依頼ってのは先着順に決まる不安定なものだから、金が入ってから泊る宿を決める場合が多かったなぁ」


 これは俺の経験上のことなのだが、家を持たない冒険者達にとって宿屋とは仮住まいにすぎないのだ。

 それこそ毎日日替わりで、より安い宿屋を求めて街中を彷徨い歩くことだって珍しくない光景であった。


 それに冒険者は宵越しの金は持たない主義の者が多く、貯蓄なんてものはサラサラする気もないものだ。

 だからその日その日を生きていけるだけの分しか働かないし、仮に大目の報酬を受け取っても飲んだり食ったりっと浪費したり、もしくは道具やより強い武器や防具などを購入してしまうので、それこそ万年金欠状態と言える。


 よって前もって代金を多めに支払っておいて数日分の宿を押さえるなんてことも当然しないために、冒険者達がダンジョンから街へと帰ってくるとすぐに宿屋の争奪戦が始まることになる。

 もしその争奪戦に負けてしまえば否応なしに野宿となってしまうため、みんな我先にと今夜泊る宿屋を探すのが一般的であった。


 野宿となれば当然の如く一晩中を通して夜盗や獣に襲われる危険を孕んでおり、安心して眠ることが出来ない。

 みんな命を張って疲れ果ててダンジョンから帰ってくるため、柔らかいベットでぐっすりと眠りたいという願望も当然あることだろう。


 だから冒険者達がダンジョン帰りに真っ先にすることは、今夜の宿の確保なのである。


「あっ……そっか。俺が感じた違和感の正体はそれ(・・)なのか」

「ようやく兄さんも理解したんやな」


 そう先程ジズさんが言っていた逆とは、ウチに来る冒険者達はまず食事をし、クランか道具屋や武具屋へと真っ直ぐ行き、それから宿屋を訪れるという一般とは逆の流れになっていたわけだ。



 第221話へつづく

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